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広告接触者の潜在ニーズを引き出すインタラクティブ広告「Q&A CREATIVE」とは?[インタビュー]

データ規制により十分なターゲティングが難しくなっている昨今、クリエイティブの重要性が増しているという話を耳にすることも多い。そんな折、博報堂DYグループの2社が共同で、インタラクティブ広告「Q&A CREATIVE」の提供を開始した。ディスプレイ広告上の設問を通し、各広告接触者に最適な商材を提示するという本メニュー開発の狙いや機能について、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社(以下DAC)プラットフォームストラテジー本部 第二プラットフォーム推進局 Google推進部 下奥鈴佳氏、滝沢涼介氏、服部和磨氏、株式会社博報堂アイ・スタジオ アカウントプロデュースセンター アカウントプロデュースユニット Bグループ 長浜達也氏、株式会社ゴールデンエイジ 池上勲氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN渡辺龍)

 

 

3種類のフォーマットでユーザーにアプローチ

―Q&A CREATIVEの概要についてお聞かせください

下奥氏(写真左上):今回のQ&A CREATIVEはRich Creative Promotion Service(以下RCPS)の第2弾になります。まずRCPSの概要から説明しますと、RCPSは広告体験を損なわず、データによる最適なクリエイティブ選定を行い、エンゲージメントの最大化を目指すサービスになります。従来の広告バナーよりもインタラクティブ性の高いクリエイティブ制作を行い、さらにこれまで取得できなかったエンゲージ指標を分析し、次のクリエイティブ改善に活かすことが可能となっています。博報堂アイ・スタジオではクリエイティブの制作周りを、DACでは配信設計や広告運用、分析を担当しています。

 

その中で今回のQ&A CREATIVEは、クリエイティブの中に設置した簡単な設問を通して広告接触者が自ら商材を選択できるというインタラクティブ広告になります。これまでもLP(ランディングページ)内に設置された診断ツールなどで双方向コミュニケーションを取れる場はありましたが、広告からLPに誘導し、コンテンツを体験してもらうまでの導線が長く、離脱率が高いという課題がありました。

 

本メニューではそれをLP上ではなく広告上で提供しています。広告上での設問への回答を通して商材の提案をまでを完結しており、個々の回答結果に応じたLPの表示も可能なので、ユーザー自身も気づいていない潜在ニーズを引き出すことができます。回答を進めていくことでユーザーの興味関心が醸成されて、商材が提案されるときにはよりCVの見込みが高い状態でLPに誘導することができます。

 

―Q&A CREATIVEのフォーマットは何種類かあるのでしょうか

滝沢氏(写真中央):代表的なものを3種類ご用意しています。「A or B」フォーマットは、2択の質問を通して広告接触者に適した商材を提示でき、潜在ニーズにアプローチできます。「クイズ」フォーマットは、クイズ形式で商材の機能や魅力を伝えることができるので、広告接触者の興味を引きやすい点が特徴です。「A or B」だと比較検討といったところに対して効果的なフォーマットですが、「クイズ」であればより認知施策に適しています。「チャット」フォーマットは、会話をしている印象を与えられ、よりインタラクティブ性が高く、商材に対して親近感を高められます。

 

―どのような広告主に適しているのでしょうか

滝沢氏:まずは複数商材を扱っている広告主様があげられます。設問を通してユーザーの意識をヒアリングしながら、最終的に個々人に合った商材の提案ができます。また、同一商材でも、ユーザー課題によって様々な使い方ができるものを持っている広告主様にも効果的に活用していただけると思います。

 

池上氏(写真右下):広告主様はもちろんですがユーザーからの受容性も高い広告だと思います。例えば、漠然と旅行に行きたいと思ってはいてもどこを行き先に選べばいいのか、という段階で迷っているような方は多いです。「A or B」フォーマットでは旅行プラン、「チャット」フォーマットではスマホの料金プランなどが代表的な例ですが、店頭接客のような形で自分の気持ちや目的に沿って回答していくだけで適した商材まで辿りつくことができる。これがデジタル広告上で完結できる点が大きな強みです。

 

左から「A or B」フォーマット、「クイズ」フォーマット、「チャット」フォーマット

資料提供:デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム株式会社

 

 

 ―広告効果の分析はどのように行っているのでしょうか

滝沢氏:分岐していく選択肢ごとに、各選択肢の回答数、設問ごとの回答時間、回答途中の離脱数、さらにCTA到達数も計測することができます。これにより、ユーザーの興味関心の傾向から、設問自体がニーズに合致しているかといった評価も可能になります。また、各指標を分析することで、商材と設定したターゲット像がどのように乖離しているかといったことも洗い出すことができ、スムーズに次の施策へのフィードバックを行えることが強みでもあります。

 

一気通貫で課題を解決するサービス

―なぜクリエイティブに焦点を当てたサービスを提供されたのでしょうか

下奥氏:広告効果に起因する要素としてクリエイティブが50%を占めていると言われており、ユーザーに嫌悪感を抱かれない広告を作ることの重要性が近年高まっています。また、各種規制により外部データが十分に使えなくなる環境下で、クリエイティブにより焦点を当てていくという目的が1つありました。

 

―近年はクリエイティブの自動生成も効果を発揮しているようですが

長浜氏(写真左下):おっしゃる通り、クリエイティブの自動生成は費用や工数の面で利点があり効率的です。一方で、最良の顧客体験を提供するには、その時々の市場ニーズを捉えながら、よりユーザーに刺さるように作り上げることが不可欠になります。企画段階からこだわってクリエイティブを作ることで、CVをはじめとした数値の向上に繋がっていきます。

 

―その辺りの背景がRCPS立ち上げの経緯とも関係してくるのでしょうか

長浜氏:RCPSを構想していく中で、クリエイティブ制作から配信運用、分析まで各領域のプロフェッショナルが力を発揮できる体制を構築することも重要になると考えました。そこでクリエイティブ制作やクリエイティブディレクション領域においては、博報堂アイ・スタジオのUIデザイン、顧客体験設計の実績や知見を活かそうという狙いがありました。今までのバナークリエイティブをさらに補完する形で、各企業の商品やサービスに最適なクリエイティブを目指し、弊社が要件のヒアリングから、提案、企画・制作までを進めることでRCPSとしての質を高めることに貢献します。

 

下奥氏:そこからの配信領域に関しては、運用やデータ分析に知見があるDACが担います。制作から配信分析まで一気通貫でスムーズにPDCAを回すことが可能ですので、クリエイティブ制作のみが外注となる点に課題を感じている広告主様にもおすすめなサービスとなっています。

 

―お話を伺っていると、Q&A CREATIVEはこれからの広告主に欠かせないメニューという印象です

滝沢氏:今後は思い通りのユーザーにターゲティングすることが難しくなることも予想されます。そこでQ&A CREATIVEの独自指標を使い、ユーザーの興味関心の分析が可能になれば、そのデータを使ってターゲティングのような形で広告配信に活用できると思っています。そういった点でも、広告主様の期待に応えられるメニューではないかと思います。

 

服部氏(写真右上):全てがQ&A CREATIVEに置きかわるのは理想的ですが、一方でクリエイティブ1枚絵を量産して大量に出稿するというこれまでのフローを変えていくには時間も必要だと思っています。「CV見込みを高めた状態でLPまで誘導できる」というのは本メニューの最大の特徴ではあるものの、使い方はダイレクトレスポンスに限ったものではありません。例えば新商品を出す際に、広告上でマーケティング指標を得るためにテスト的に使うといった用途でもいいと思います。そこの結果でアプローチを改善しつつ、引き続きQ&A CREATIVEを使っていただければありがたいですし、予算に合わせて従来のディスプレイ広告を多く出稿するという形でもいいかもしれないです。広告主様には柔軟に活用していただきながら、その上で徐々にサービスを広げていければいいと思っています。

 

Googleとの連携を強化しながらクリエイティブの価値向上へ

―RCPSは今後どのように展開される予定でしょうか

下奥氏:今後も第3弾、第4弾とサービスのローンチを予定しています。第3弾では天気や花粉といった外部のAPIデータと繋ぎ合わせることで、第4弾ではファーストパーティデータを機械学習にかけることで、ユーザーを取り巻く環境に応じたクリエイティブを出し分けていきます。

 

併せて、広告業界にとって現在Googleは外せない存在になっており、DACとしてもGoogle領域に注力しています。RCPSではGoogle Web DesignerやCampaign Manager360、Display&Video360などのGoogleマーケティングソリューションを活用していますが、今後もGoogleのプロダクト同士を連携させる場としてRCPSを展開させていきます。

 

服部氏:今後Googleの重要性が増していく中で、Google完結でどういった世界が作れるかを意識しながら、GoogleマーケティングプラットフォームやGoogle Cloudの各種ツールを掛け合わせていくことは必須です。今後のメニューでは、引き続きクライアントのニーズに合うものを提供しつつ、クリエイティブでの広告効果を最大化させていく。Googleを最大限活用しながらこの両建てでプロジェクトを進めていく予定です。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。