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Apple、その広告ビジネスの現状と将来展望――いずれ300億ドル規模に?

今回のMadTech Sketchでは、キアラン・オケーンがAppleの広告ビジネスの核心に切り込み、同社の広告部門にとってベストな成長戦略とはいかなるものかを考察する。

 

アップルはアドテク業界の嫌われ者だ。過去3年間にわたってiOSでサードパーティ広告を激しく攻撃しておきながら、今度は平然とAppleユーザーのデータを利用して、自社の広告事業を立ち上げようとしている。

アップルの見え透いた自称「プライバシーキャンペーン」は、極めて狡猾な一手だった。まずは「ユーザー保護」を口実に、アドテクと広告依存型プラットフォームの広告パフォーマンスを弱体化する。次に両者を排除してできた空白を、よりユーザーフレンドリーで、プライバシーに配慮した選択肢で埋める。完璧な作戦だ。

アップルの広告ビジネスの売り上げは年間50億ドル(約6600億円)にのぼり、5年以内に300億ドル規模(約3兆9800億円)にまで膨れ上がると見るアナリストもいる。

アップルほどの巨大企業にとっても、この数字のインパクトは相当大きい。しかし、300億ドルものカネが一体どこから来るというのだろう?

今回のMadTech Sketchでは、アップルの広告ビジネスの概要を(現状のステータスと将来の展望をあわせて)手短にまとめている。

 

アップルのアドテク戦略の根幹

推定50億ドルにのぼる売上のうち、かなりの部分は検索広告に由来する。App Store内で表示される広告だ。

新たな広告商品がリリースされれば、検索広告はドル箱となり、ユーザーがApp Storeで広告を目にする頻度も増加するだろう。

また、アップルはiOSのサードパーティアプリ上にも広告を展開するアドネットワークを構築するはずだと、筆者は考えている。フェイスブックアドネットワーク(FAN)が50億ドル近い広告売上を獲得していることを考えれば、アップルが(膨大なユーザーデータと完璧なアトリビューションを武器に)やすやすとFANを追い抜き、ダイレクトレスポンス広告費の大部分を獲得するであろうことは想像に難くない。

もう一つ有望なのはApple Newsだ。現在Apple Newsの広告販売のほとんどは外部委託されているが、今後はおそらく内製化され、アップルのアドネットワークチームがエージェンシーに向けて販売をするようになるだろう。

最後の、そして間違いなく最大の収入源として期待されるのがTV広告だ。アップルはつい最近、北米プロサッカーリーグのMLSと複数年契約を結び、広告による収益化を目論んでいる。さらにApple TVに広告付きプランが導入されるとのうわさもあり、もし実現すれば、突如としてデータ駆動型テレビ広告の大規模なインベントリが誕生することになる。アップルのTVアドネットワークが市場に進出するのは時間の問題で、そうなれば従来型テレビ広告からもシェアを奪い取るだろう。

 

アップルにパートナーは必要か?

アップルの広告ビジネスが抱える最大の問題は、アドテクインフラ、というよりもアドテクインフラの欠如だ。アップルは我々アドテクを嫌っているが、デジタル広告経済の屋台骨を支えているのは我々だ。キャンペーンの実施、セグメンテーション、測定は我々の領分だ。

アップルがこうしたインフラを自前で構築できるとは思えない。よって買収に打って出るのは確実と思われる。買い物リストの筆頭は、アドサーバーとプログラマティックアドオンを備えたセルサイドソリューションだろう。あるいは、動画広告とCTV広告をすべて接続できるDSPかもしれない。

ここでネックになるのが、アップルは広告ビジネスのスケール化をうまくコントロールできないという点だ。同社は以前にもこの問題に直面し、派手に失敗した経験がある。

戦略設計にもたついたり、必要なアドテクの構築(あるいは買収)に失敗したりすれば、時価総額2兆ドル(約265兆円)にも肥大化したアップルは、足をもつれさせて転倒するはめに陥るかもしれない。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。