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CTV、進化途上ながら、その影響力から目が離せない

このインタビューでは、リーン・デジタル(Lean Digital)のディレクターで「The Wires Global 2021」の審査員を務めるトム・オバフェミ氏を迎え、CTV(コネクテッドTV)の現状と将来の可能性について話を聞いた。

 

 

 

 

CTVの状況は、この1年ほどでどのように変化していますか?

この1年ほどのあいだに起こった最も重大な変化が、パンデミックによって形成された行動様式と視聴習慣にあったことは疑いようもありません。スマートTVの普及が拡大するなか、誰もが1年以上にわたってインドアなライフスタイルを強いられた結果、視聴習慣は変化し、コードカッティング(ケーブルテレビの解約)のトレンドはますます進んでいます。その代替として、OTTサービス(インターネット配信サービス)やCTVを選択するのがごく普通のことになり、すでに成長していたこの分野に、さらなる注目が集まることとなっています。

広告主は、視聴者の注意を引き寄せられる場所なら、どこにでも向かうものです。OTTやCTVも例外ではありません。CTVの分野では、この成長を利用しようと画策するサプライサイドのプレイヤーが増加中です。また、この新しい視聴環境にあるオーディエンスに効果的にリーチしたいと考える広告主も増え、関心が高まっています。

 

この分野では、現在どのようなイノベーションが進んでいますか?

デマンドとサプライの両サイドで、既存企業が自社サービスの開発を加速させています。ですから、各社からどのような提案がなされるのかは、大変興味深いところです。

ロク(Roku)とニールセン(Nielsen)の戦略的提携は、自動コンテンツ認識システムの統合が軸となっている点で、注目に値するものでした。この技術を活用しながら、ニールセンの手法が持つ強みを活かし、プラットフォーム全体で主要なターゲットオーディエンスに対し、関連性の高い広告をリアルタイムで配信できれば、理論上は、提案に深い奥行きがもたらされるはずです。今回の提携をきっかけに、この分野でターゲティングと測定の効果を高めるべく、他の企業のあいだでも、同じような提携を目指す動きが出るかもしれません。

 

CTVの測定は改善されていますか?

測定の改善がCTVの発展と幅広い普及にとって重要なテーマであることはわかっています。この問題はまだ解決に至っていませんが、TVスクエアード(TVSquared)やアダライザー(Adalyser)がオーディエンスのアトリビューションを提供するなど、測定を改善する試みが行われています。また、ファインキャスト(Finecast)やライトボックス(LightBox)のように、CTVのインベントリを照合する単一のアクセスポイントを提供する独自ソリューションを提案して、測定の問題に対処している企業もあります。こうした取り組みは、配信のコントロールを強化しながら、より標準化された測定方法を普及させるのに役立つでしょう。

 

リニア(従来型)TVの広告予算がCTVに移行する動きは今後も続くと思われますか?

リーン・デジタルのディレクター、トム・オバフェミ氏

スマートTVを持つ人が増え、視聴傾向が変化していることを考えれば、CTVがリニアTVを侵食し続けることは明らかです。オーディエンス行動の変化に合わせたマーケティング支出のシフトと再配分は、今後も続くでしょう。

CTVはどちらかといえばまだ進化途上の段階にあり、すべての欠点が解決されたわけではないものの、すでにリニアTVに匹敵する高いレベルのエンゲージメントを広告主に提供しています。これに加えて、説明責任と測定の面でも改善が続き、この分野により多くの注目とリソースが投入されれば、時間の経過とともに、CTVの普及や実用性の向上が一層進むはずです。

 

デマンドサイドから見ると、CTVに対する広告主の関心はますます高まるでしょう。なぜなら広告主は、この細分化が進む状況のなかで、ターゲットオーディエンスにより効果的にリーチしたいと考えているからです。CTVはコスト効率と柔軟性が高く(リニアTVのような融通の利かない取引がほとんどない)、多くのブランドや広告主にとっても参入障壁が大きく下がるため、関心はさらに高まるはずです。サプライサイドから見ても、多くのプロバイダーが需要の増加に対応すべく、機能やインフラ、インベントリを強化しています。やはり、CTVの普及は進むでしょう。

こうしたデマンドサイドとサプライサイド双方の要因に加え、消費者の視聴習慣の変化が明らかなことから、このトレンドが継続する条件は整っているといえます。ただし、2020年に英国で最も視聴数が多かった上位20本の番組のうち、18本はリニアTVの番組で、それ以外の番組は2本しかなかった(2本ともNetflix)ことも指摘しておくべきでしょう。つまり、CTVはまだ進化途上の段階なのです。

 

従来型の放送局は、CTVの可能性に気づいていると思われますか?

もちろんです。そうせざるを得ない面もありますが、この変化を認めなければ、彼らのビジネスの将来に深刻な影響を及ぼすでしょう。BVOD(放送動画オンデマンド)が大幅に改善され、今やCTVと比べても購入時の軋轢が最少レベルになっています。それは、従来型の放送局がその可能性を十分認識していることを示しています。ただその一方で、彼らは新規参入者が増える状況を、長年にわたる直接的な関係や合意を通じて構築してきた、顧客基盤を脅かすものとみなすかもしれません。売上を確保するために、この基盤を守りたいと考えるようになる可能性はあります。

 

CTV経由の広告配信に今も残っている課題と、それを克服するために必要な取り組みは何でしょうか?

CTVが対処すべき課題は、主に信頼、細分化、測定に関するものです。中でも、信頼と透明性が最大の課題であることに議論の余地はないでしょう。リニアTVでは、柔軟性やコスト、アクセスの面で多少欠点があるかもしれませんが、不正への懸念がメディアの購入に深刻な影を落とすようなことはありません。ダブルベリファイ(DoubleVerify)やオラクル、ホワイトオプス(White Ops)が最近発表した数千万単位の不正行為の発覚発表は、この問題の規模がかなり大きいことを示しています。さらに説明責任を果たせるかどうか、そして不正を抑制する、より確実で積極的なアプローチを提供できるかどうかが、CTVに対する信頼と信用を高め、広告主により大きな安心感をもたらす重要な鍵となるでしょう。

また、細分化が進み、プレイヤー(ロク、アップル、グーグル、アマゾンなど)の数が増えていることも、状況をさらに複雑にしています。各プロバイダーが独自のトラッキング手法や測定手法を採用するからです。そうなると、プロバイダー同士を結びつける共通の基準がなくなり、測定が著しく困難になります。測定結果が複数の完全に独立したエコシステムで算出されていては、リーチやフリークエンシーなどの測定基準を明確に標準化することができません。

CTVの普及と重要性が高まるにつれ、CTV独自の測定手法がより普遍的に合意されることが重要になります。おそらく、バーブ(BARB)やニールセンがリニアTVで実現しているようなレベルでの標準化(CTV独自の)が、この問題の解決に役立つでしょう。さらにこの話は、リニアTVと同等の説明責任と測定機能なしには、広告主のマーケティング予算を効果的に勝ち取るのは難しいという話にもつながります。CTVの分野では、イノベーションと柔軟性を実現することが、ターゲティング能力の強化に欠かせないものとなるでしょう。業界がプライバシーファーストの世界に向かっているなかでは、特にこのことが求められます。

 

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。