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2021年予測:モバイル広告とゲーム内広告

2020年の出来事は多くの企業に混乱をもたらし、一部の企業にとっては壊滅的な結果となったが、未曽有の状況の中で躍進した分野もいくつかあった。世界中の人々が在宅を余儀なくされ、友人や家族と直接会うのを控えるよう強いられたことで、ショッピングや社会生活、娯楽はデジタルに向かわざるを得なくなった。したがって、この期間中にモバイル利用とゲームのプレイ時間が急増したのは当然のことだった。この2つのチャネルは好調を維持していることから、アドテク業界はそれぞれでのリーチの可能性を探り続けている。

2021年を予測する連載の最終回では、モバイル広告とゲーム内広告の未来について、5人の業界関係者にそれぞれの予測を語ってもらった。

 

革新的なモバイル広告フォーマットがエンゲージメント構築の鍵を握る

パンデミックの影響はさまざまな分野に及びましたが、少なくともデジタル広告業界には多くの新たな機会をもたらしました。私たちは、自分の時間のほぼすべてをモバイルメディアに費やす消費者にエンゲージする手段として、ソーシャルディスプレイキャンペーンに広告費を充てるブランドが増えると予測しています。

ブランドは、消費者が最もよく利用するプラットフォーム上でエンゲージするために、現時点で最も大きな広告チャネルの1つである、ソーシャルディスプレイのような、より革新的なモバイル広告フォーマットへの投資に着手すべきでしょう。

ピクニック・メディア(Picnic Media) CEO、マシュー・ゴールドヒル(Matthew Goldhill)氏

 

投資の増加がより多くのイノベーションをもたらし、高水準の顧客体験とプライバシー基準が確保されるだろう

この1年、モバイル広告は成長を続けてきました。パンデミックをきっかけに、人々は屋内に閉じ込められ、多くの人がモバイル上での動画ストリーミングやゲーム、オンラインショッピングなどに費やす時間を増やしてきました。2021年、広告主はモバイルとアプリ内に投じる予算の割合をさらに増やすと私たちは予測しています。

広告主はまた、販売や事業開発を促進する新たな拡大市場の開拓にも広告予算の一部を振り向けるでしょう。これはブランドがデータプライバシーと顧客体験(CX)を最優先しながら、成長と売上を牽引する助けになります。また、パブリッシャーが消費者の需要と消費習慣に応えるための新たな方法を開発し続けているため、モバイルエコシステム全体で新たなイノベーションが起こり、より高度な広告ソリューションが登場することになるでしょう。

バーブ・グループ(Verve Group) 最高売上責任者、サミーア・ソンディー(Sameer Sondhi)氏

 

ゲームの成功がライブスポーツイベントの広告を再定義する

私たちビッドスタック(Bidstack)は2020年に入ってすぐ、eスポーツが好調な一年になると予測しました。大手有名ブランドが若いオーディエンスにエンゲージする目的でゲーム市場に参入し、セレブやミュージシャン、スポーツ界のスターらがeスポーツへの投資を大きく増やすと考えたのです。しかし当時は予測がこれほど正確に的中することになるとは思いもしませんでした。

世界的なロックダウンにより、多くのライブスポーツがシーズン半ばで中断されました。これらのイベントに関連した大規模な広告キャンペーンが進行していたため、ブランドはオーディエンスとつながるための新しいプラットフォームを早急に必要としていました。一方、スポーツチームやスター選手もまた、スキルを披露してファンを楽しませるための新たな手段を必要としていました。

その結果、マクラーレンのF1ドライバーであるランド・ノリスがバーチャルのアルバート・パーク・サーキットでレースに参加し、NBAのスター選手ケビン・デュラントがバーチャルゲームに出場し、マーカス・ラッシュフォードやトレント・アレクサンダー・アーノルドといったイングランドのサッカー選手がオンラインゲーム「FIFA 20」のトーナメント戦に出場しました。

ライブスポーツが(まだ制約の多い状況とはいえ)戻ってきた現在でも、eスポーツの価値は忘れられていません。むしろ、バーチャルイベントはファンにリーチするための補完的な手段と捉えられ、2021年はさらにタイアップが増えると私たちは予測しています。

eスポーツのスターとプロサッカー選手が共演した2020年10月の「FIFA 21 Challenge」は、エレクトロニック・アーツ(Electronic Arts)史上最も多くの人に見られたeスポーツイベントとなりましたが、これは素晴らしい実例と言えるでしょう。また、eスポーツのライブイベントもパンデミックによる規制でデジタル世界に追いやられましたが、私たちはこちらの復活も心待ちにしています。

ビッドスタック CTO、フランチェスコ・ペトゥルッツェリ(Francesco Petruzzelli)氏

 

成長の加速によりゲーム内に出稿する広告主も増加する

パンデミックをきっかけに、オンラインゲームとeスポーツが世界的に急成長しました。そこで私たちは、ブランドがこの収益性の高いチャネルのポテンシャルを認識し、ゲーム内広告への支出を増やすと予測しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが始まる前、このオンラインゲーム・eスポーツ産業は最大25億人のユーザーを抱え、2021年までに市場規模が1,800億ドル(約19兆5,900億円)に達すると予測されていました。

その後、世界的なロックダウンが後押しする形で、さらに成長が急加速しています。ゲーム内広告に関しては、ブランドによる広告投資がすでに増加していますが、2021年にはTwitch(ツイッチ)のようなプラットフォームがさらなる成長を遂げるなか、そうしたチャネルを積極的に活用する広告主も増え続けるだろうと私たちは予測しています。

アドバーティー(Adverty) CEO、ニクラス・バコス(Niklas Bakos)氏

 

2021年はイン・プレイ広告元年になる

1990年代後半のドットコムブーム、2000年代半ばの Web 2.0のように、私たちは今、ビデオゲームが世界を席巻するメディアチャネルになりつつあるのを目撃しています。このチャネルでは、ブランドがプライバシーとブランドセーフティを確保しながら、エンゲージメント率の高いオーディエンス(プレイヤー)に対し大規模にターゲティングすることができます。

2021年には、 IDFAへの依存度が低くプレイヤーを第一に考えた新たな広告モデルであるイン・プレイ(In-Play)広告が台頭し、ゲームとブランドのギャップをシームレスにつなぐ存在になるでしょう。2020年、イン・プレイ広告は「POC(概念実証)段階」から売上増加の牽引役へと成長し、今や何百ものゲームから収益源として頼りにされています。2021年には、イン・プレイ広告フォーマットの採用が世界中に広がり、ゲームへの没入を妨げることなくプレイヤーにエンゲージする斬新な方法がブランドにもたらされるでしょう。

アドミックス(Admix) 共同創業者兼CEO、サミュエル・フーバー(Samuel Huber)氏

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。