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グリーの新卒社長が語る増収増益の理由とQUANTの展望 [インタビュー]

2014年新卒でグリーに入社し、Glossom社でデジタル広告事業のキャリアを積んだ新卒社員がGlossomからスピンアウトし、今年1月にグリー傘下でインフルエンサーマーケティング事業をおこなう子会社の代表に就任した。

インフルエンサーマーケティングを手掛けるQUANT(クアント) 代表取締役社長に就任した山﨑陽平氏から社長に抜擢されるまでの経緯や背景、今度の展望などを伺った。

(聞き手 ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

 

逆境を選んだからこそ得られた貴重な体験

-自己紹介をお願いします。

山﨑陽平と申します。

2014年3月に慶應義塾大学総合政策学部を卒業し、新卒でグリー株式会社に入社しました。入社後は設立から日の浅いGlossomに出向し、社長就任までGlossomに所属しておりました。

入社から現在までアドテク領域で営業を行っております。

私が最初に業務に携わったAdLantis(アドランティス)が2015年1月バリューコマースに事業譲渡されたのを機に、バリューコマースへ出向をしますが、その後、Glossomに戻り、GREE Ads Reward(グリーアズリワード)、AdColony(アドコロニー)の営業を担当、この間営業マネージャーとして組織のマネジメントも学びました。同年4月に動画アドネットワークの新規事業AdCorsa(アドコルサ)の事業責任者を2018年まで務めました。

2020年からはDX支援チームを立ち上げ、2021年まで事業責任者を務めました。また、同時並行で2021年4月より新規でインフルエンサー事業を立ち上げ、この度事業部を法人化させる形で、Glossomからスピンアウトし、2023年1月よりグリーの子会社として、その代表取締役社長に就任しました。

 

-なぜ新卒時にグリーを選ばれたのですか?

私は元々IT業界は志望していなく、アパレルや商社を考えておりました。

当時グリーやDeNAなどの大手ゲーム会社には、私の出身大学から大量の新卒が入社しており、先輩たちから念のためIT業界を勧められ、グリーを受けたところ、スムーズに内定まで頂戴することができました。

グリーを選んだ1点目の理由はその環境です。

自分のキャリアを考えた際「若くして権限が得られるかどうか」が重要だと気づき、「10年でようやく一人前」「経営層になるは40代後半~50代・60代」といった商社の環境に違和感を感じ「年齢に関係なく実力さえあれば責任と権限が与えられる」グリーの環境に惹かれました。

2点目の理由はグリーが当時逆境にあったことです。

「コンプガチャ」が社会的に問題視されていたこともあり、業界的に逆境にある中「その方が自分の学びにつながるのではないか」「逆境の中で成長していく」「V字回復に力をかけられるのではないか」と考えました。

 

 

直感で「売れる」と感じたインフルエンサーマーケティング事業が法人化に至るまで

-Glossomの広告事業全般と、山崎さまが代表を務めておられる会社QUANTの概要についてお聞かせ下さい。

Glossomの事業は大きく3つの領域があります。

1つ目は広告代理事業。デジタルマーケティングのデジタルプロモーションの代理業を行っています。

2つ目はプロダクト事業。アドテクの中でSSP・DSPのようなものを自社で作って販売していくという事業になります。

3つ目はDX支援事業。DXの中で特にデジタルマーケティングを推進していく事業になります。様々な会社とタッグを組みデジタルプロモーションの実施やDNPの作成、開発を含めサービス自体をゼロからフルスクラッチで作るといったことを行っています。

 

-山崎さまが代表を務められることになった経緯についてお聞かせください。

直近の売上規模が大きくなってきたこと、「新卒が経営キャリアにチャレンジする」という背景も含めて子会社化し代表を務めることになりました。「事業をもっと伸ばしていきたい」と考えていた中で、会社から社長を務めるというきっかけを頂き、就任することになりました。

 

-なぜインフルエンサーマーケティングに目をつけられたのでしょうか。

2018~2020年、DX事業の責任者として様々な会社のデジタルマーケティング全般に携わりコンサルティングする立場にあったのですが、2019年頃に「インフルエンサーがきっかけとなり商品が売れる」という事象を目の当たりにしました。

本来インフルエンサーマーケティングとは「商品を撮影してその投稿を行う」ことが多かったのですが、2019年頃にInstagramの仕様が変わり、投稿にURLをつけられるようになったことから広告的な使われ方に大きく変化しました。投稿からクライアントが訴求したいページへ直接リンクできるようになったので、一気に購買率が高まったのです。

そして、アフィリエイトとリンクできる機能が掛け合わされ、インフルエンサーの投稿から購入が発生した際、彼らへ直接お金が入る仕組みが出始めました。

直感的に「売れる」「伸ばせる」と感じたのですが、当時は違う事業を行っていたこともあり頭の片隅にあったくらいでした。

そんな中、クライアントから既存のFacebookやGoogleへの出稿で結果が出ない商品があるとの課題を伺い、インフルエンサーマーケティングを提案したところ「チャレンジしてみましょう」とお答えを頂き、「クライアントがいる」「興味や可能性がある」と感じたことで2020年7月に私一人で始めました。そこから売上が伸び、2021年4月に事業として立ち上げるにあたりメンバーを集めました。

 

-プロダクトの強みはどのようなところにありますか?

インフルエンサーマーケティング事業は、参入障壁が低いビジネスなので、多数の競合が存在しますが、QUANTの一番の強みは成果に至るプロセスをデータで捉える「定量化」にフォーカスしているところです。元々DX事業に携わっており、データ分析を主軸として様々な会社と連携していた背景を生かしたインフルエンサーマーケティングがオリジナリティーだと思っています。

 

-需要拡大が続くインフルエンサーマーケティングにおいて、これを活用する広告主、そしてインフルエンサーそれぞれのニーズは、どのようなところにありますか?

例えばインフルエンサーA・B・Cさんが商品PRをして、それぞれ100件ずつ商品が購入された場合、通常のアフィリエイトだと「100件売れてよかったですね」で終わってしまいますが、QUANTではさらに購入してくれた方を深堀します。

翌月も買ってくれるか、年間で買ってくれるか、違う商品まで買ってくれるか(併売)などすべてデータで分析し、Aさんは「9割の人がリピーターとして継続購入してくれます」、Bさんは「半分だけリピーターになってくれました」、Cさんは「1割しかリピーターいません」となった場合、「100件売れた」という時点では皆同じですが、当然Aさんの顧客の質が良いとなりますよね。

その際、広告主に対してはAさんへより予算をかけ広告をクリックしてもらえるよう提案し、Cさんはリピーター獲得率がよくないのでお断りするといったダイナミックな運用が可能となります。

現状の国内市場においてここまで細かく分析している会社はないので「運用でデータを活用していく」ということがQUANTの強みとなっています。

インフルエンサーに対しても「100件売れて終わり」ではなく、より深いお取組みが可能になります。

例えばQUANTに登録いただいているインフルエンサーの場合、商品が売れたことで成果報酬が入ってきますが、それとは別に成果が評価されクライアントのLPに掲載頂き、年間契約を獲得、プラスαの広告費を受け取られる方も多数いらっしゃいます。

従来の「売れたら成果報酬」で終了していたモデルから、より深く分析できるからこそ「インフルエンサー自身の価値が高まる」、プラスαで報酬が発生する流れができるようになっています。

広告主とインスフエンサーをつなぐ役割はニーズが高いと思いますし、QUANTはプラットフォームとしてその部分を担っていきたいと思います。

 

 

「やってみれば?」若手にチャンスを提供するグリーが求める人物像

-グリーグループには、今後どのようなポテンシャルがあると思われますか?会社の成長、働く個人の成長、それぞれの観点で、お聞かせください。

QUANTとしては、インフルエンサーの成果をベースにした市場がまだまだ小さいことにポテンシャルを感じています。

一般的なインフルエンサーマーケティングの中でも成果ベースの市場はまだ少ない状態で、成果報酬型にチャレンジしていないクライアントやインフルエンサーがたくさんいらっしゃいます。そこを拡大するほど市場は大きくなっていくと思いますのでポテンシャルはすごく高いと見込んでいます。世界水準にクリエイターエコノミーが浸透していくと、中国のライブコマースのように「ライブありきで販売していく」世界になっていくと想定しており、そこにむけての布石としても、従来の「TVショッピングの延長・新時代バージョン」を確立・市場を拡大し、それを担える会社にしていきたいというのが成長についての考えです。

また、会社の平均年齢が20代半ばと、伸びしろのある若手メンバーが中心となり事業展開しているので、次代のグリーを担う人材を輩出すべく、個人の成長も重要な観点として考えていきたいと思っています。

グリーグループとしては、様々な事業会社が設立され、それぞれが業務に集中し、採用を強化している状態です。いい意味での「失敗」の経験があるからこそ盤石な基盤を築き、中長期に事業を成長させる仕組みができつつあります。

その中で私のような若手中堅社員が社長に抜擢されたからには「どれくらいインパクトを残せるか」ということが重要だと考えています。

グリーグループは若手にチャンスを与えることを厭いません。躊躇せずに「やってみれば?」ということを投げかけてくれます。

社長就任にあたり、グリーの代表取締役会長兼社長の田中、Glossom代表取締役社長の足立からは「とにかくチャレンジしてバットを振り切ってくれ」と言われております。「失敗するな」ではなく「失敗してもいいくらいの気持ちでチャレンジしてくれ」と言われているのがすごく大きいなと。

もちろん失敗前提で考えてませんが、大胆にチャレンジできるのはバックに大きく構えてくれる会社があるからこそで、自分で起業したりベンチャーで働くことでは得られない安定感があり、その環境が今後グリーにおける人材の成長につながっていくと信じています。

 

-グリーグループで社長になるには、どのようなことが求められると思いますか?

求められるポイントは3点あると思います。

グリーは良い意味で「まじめな会社」です。コツコツと日々努力を積み重ね、一足飛びというよりも、着実に積み上げまじめに実績を出すということが評価されるので、そこが求められている1点目だと思います。

2点目は「チャンスを逃さない」ということ。チャンスに飛び込み、主体的に動き、拡大できる機会があればつかみとり、きちんとやりきる。拡大に向け自分なりに考え抜き伸ばしていく、ということが必要だと思います。

3点目はどれだけ「周りに支えてもらえるか」。支えてもらうということは、逆に経営サイドからも「やりがい」を提供しながら一緒に動く必要があります。仲間がいないと事業を伸ばせないので、メンバーとよいチーム感を醸成し、一丸となっていけるかが求められると思います。

 

-今後グリーグループの門戸をたたかれる方に対してメッセージをお願いします。

私が考えるグリーの印象は、「素直」「まじめ」「努力し続けられる」タイプの方が合う会社だと思っています。

ITベンチャーは「イケイケ」なイメージが強いと思いますが、社内を見渡すと、めちゃくちゃまじめで努力家、素直な人間ばかりです。

グリーは「経験を積み、考え抜いて事業を展開していく」ことを継続しているので、そういうタイプの方はとても働きやすい環境ではないでしょうか。

「受動的」「能動的」という視点で考えると、絶対に能動的な方が向いている会社で、手を挙げていけばいくほどチャレンジの機会を与えてくれます。

もちろん受動的に働くこともできますが、能動的な人が多い中、埋もれてしまいかねません。「能動的に動ける素直でまじめな努力家」が重宝されるので、そういった仲間がもっと増えるような環境を作っていきたいと思います。

ABOUT 加納 奈穂

加納 奈穂

ExchangeWireJAPAN 編集担当 武蔵野美術大学卒業後、出版社に入社。WEBサイトや広告の運営に従事。その後コスメ情報サイトのコンテンツマネージャーを経て出版社での通販事業において販売促進業務を担当する。通販会社にてSNS運用に携わったのち、2022年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。現職に至る。