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200以上の導入事例から見るコンテクスチュアルターゲティングの強み―マイクロアドのポストクッキーソリューションとは[インタビュー]

株式会社マイクロアドは提携プロバイダから提供されている豊富なデータに基づき、各業界のマーケティングニーズに合わせたデータ分析と広告配信を可能とするDSP「UNIVERSE Ads」を提供している。2022年2月には同サービス内で、クッキーに依存しないターゲティング手法として、コンテクスチュアルターゲティングの提供も開始し、ユーザーの興味関心が高まる“モーメント”を捉えた広告配信の展開も進めている。同社のコンテクスチュアルターゲティングの取り組み内容や今後の展望について、ビジネス開発部の八木聡太氏に話を聞いた。

(聞き手:ExchangeWire JAPAN 柏 海)

 

モーメントを捉えて新規ユーザーを効率良く獲得

―自己紹介をお願いします。

 

ビジネス開発部の八木と申します。

 

新卒でマイクロアドに入社して 2 年目となりますが、クライアントからいただいた案件を元にUNIVERSE Adsを通じた広告運用を担当しています。それに加えて、現在は部内でのコンテクスチュアルターゲティングによる広告商品の開発にも携わっている状況となります。

 

―2022年2月にはUNIVERSE Adsにて、コンテクスチュアルターゲティングの提供を開始されました。現在のお取組状況についてご共有ください。

 

UNIVERSE Adsでは2024年のクッキーレス時代に備えるために、RampIDやIM-UIDなど各社が提供をする共通IDとの連携を含め、クッキーに依存しない広告配信手法の開発を進めてきましたが、コンテクスチュアルターゲティングはそのメニューの一つとなります。

 

コンテクスチュアルターゲティングは、訴求したい広告・内容と関連性の高いメディアに対して広告配信をすることにより、ユーザーのモーメント(興味関心の高まる瞬間)を着実に捉えた配信が可能となるものです。

 

なお、実際の広告配信においては、訴求をしたい商材とその目的・背景を事前にヒアリングさせていただいたうえで、コンテクスチュアルターゲティングで広告配信をするべきか、従来のオーディエンスターゲティングによる広告配信をするべきかなどをプランニングしております。

 

提供開始からこれまで、200以上の商材にて導入事例がございます。訴求内容に対して的確にモーメントを捉えることでリーチ単価を効率よく抑えられた事例や、サイト(LP)内のセッション率(※)を200%ほど改善した事例などがございます。
(※)広告を経由したサイト(LP)へのユーザー来訪率

 

なお、これらは特定の業界が多いわけではなく、飲料・食品、自動車、アウトドアメーカーなど幅広いクライアント様とお取引させていただいています。

 

―コンテクスチュアルターゲティングとオーディエンスターゲティングの使い分けについては、どのような形で進められることが多いのでしょうか。

 

まず、オーディエンスターゲティングは人を捉える配信になるので、例えば「BtoBの商品を企業の幹部クラスの方に向けて広告配信をしたい」など、訴求をしたい商品とユーザーの属性・デモグラが明確だと判断出来た場合には、オーディエンスターゲティングを紹介させていただくことが多いですね。

 

一方で、コンテクスチュアルターゲティングの場合は、モーメントが高まる瞬間を捉えた配信も可能ですが、「多くの人に届けたい、効率よくリーチを獲得したい」という場合に提案することが多くなっております。なかには単純に「クッキーに依存しない広告配信をしたい」「オーディエンスターゲティングとは違う層に配信したい」というご要望をクライアントからいただくケースもあります。

 

また、オーディエンスターゲティングは過去の行動=潜在層、コンテクスチュアルターゲティングは現在の行動=顕在層、を捉えることにそれぞれ優れているので、そのような使い分けやかけ合わせによるご提案もしております。

 

コンテクスチュアルターゲティングで、他社比較で4倍のリーチを広げることができた事例

―コンテクスチュアルターゲティングによる配信事例についてお聞かせください。

 

日本の大手飲料メーカーの「レモンサワーの缶チューハイ」訴求事例では、他社比較として、4倍ほど効率よくリーチを広げることができました。また、ブランドリフトへの貢献として、広告認知を5.4%高めることにも成功いたしました。

 

 

プロモーションの目的は、家飲みをする際の本格的なレモンサワーというブランドイメージを持ってもらう、というものになります。「レモンサワーが飲みたい」というモーメントを捉えるため、ご自宅での喫食シーンを連想させる“飲料”“食品”“アルコール”などのトピックを選択し、ユーザーが料理系のメディアを閲覧するタイミングを捉えて広告配信を行いました。

 

「家飲み」という訴求コンセプトに合わせて、料理をするタイミング(モーメントを捉える)で広告配信をしつつ、多くのユーザーに効率的にアプローチができたことで、他社比較として、4倍ほど効率よくリーチを広げることができた事例となります。

 

UNIVERSE Adsのコンテクスチュアルターゲティングの特徴として、複数のSSPに接続していることで配信面が広く、多くのメディア、ユーザーにアプローチができるという点があります。その結果、本事例でもCPMやリーチ単価を他社比較でも安価に抑え、効率的にリーチを広げることができました。

 

オーディエンスターゲティングと比較し、倍以上の成果が生まれた事例も

―そのほかには、どのような配信事例がございますか。

 

中小企業向けの法人カード訴求事例では、オーディエンスターゲティングの広告配信と比較して、コンテクスチュアルターゲティングの広告配信ではセッション率が 200%改善した結果となりました。
※法人カード:法人や個人事業主に対して発行されるクレジットカード。

 

プロモーションの目的としては、法人カード自体の認知も広げつつ、サイト(LP)に訪問をしたり、訪問後にサイトを回遊したりするエンゲージメントの高いユーザーを誘致したい、というものになります。よって、KPIとしては、GA(Google Analytics)のセッション単価やボタンクリックのCPAを設定されていました。

 

UNIVERSE Adsで配信を開始した当初は「ターゲットはビジネスマンである」という視点で、名刺やIP アドレスの情報に基づき、オーディエンスターゲティングによる配信をしていたのですが、エンゲージメント指標を高めるための改善策の 1 つとして、途中からはコンテクスチュアルターゲティングによる広告配信を提案させていただき、実施をいたしました。

 

配信の中身としては、ビジネスマンというターゲットの大枠は外さないよう、キャッシュレス決済やSDGsなど、ビジネスと関心・親和性が高いメディア・トピックに対して広告配信をすることで、ビジネスマンとその周辺に近いターゲットを捉えた形となります。

 

その結果、セッション率はオーディエンスターゲティングの配信と比較し、200%以上改善され、コンテクスチュアルターゲティングをすることにより、広告経由でサイト訪問してくれるユーザー、いわゆるエンゲージメントの高いユーザーを効率的に誘導することが出来ました。

 

約70万サイトの配信面で、平均CPM/CPCも抑える

―マイクロアドの提供するコンテクスチュアルターゲティングは、他社が提供するコンテクスチュアルターゲティングと比較し、どのような特徴があるとお考えですか。

 

マイクロアドではいわゆるブランド案件を中心としてクライアントと向き合って来ましたが「①狙った層に対していかに深くブランドメッセージを伝えていくか」というニーズと「②自社の1st Party Dataでは捉え切れない、新規層に対して効率的にリーチを広げていきたい」という2つのニーズが大きくありました。

 

①を主な理由として、リッチでインパクトのあるクリエイティブを用意し、配信先・掲載面も大手メディアに特定されたうえで、コンテクスチュアルターゲティングを通じたブランディングを深く実行していきたいとなれば、そこは他社のサービスに強みがあるかもしれません。

 

一方で、新商品やブランドイメージの訴求など、②を主な理由として新規ユーザーに効率良くリーチを広げていきたいとなれば、圧倒的に配信先・掲載面が多く、平均CPM/CPCも抑えることが出来る、UNIVERSE Adsのコンテクスチュアルターゲティングを利用することに、大きなメリットがあると考えています。

 

UNIVERSE Adsは複数の SSP に接続されており、媒体の大小を問わず、多くのユーザーに届けることが可能となりますので、その結果、モーメントのタイミングをより捉えやすくなっております。

 

また他社との違いとして、UNIVERSE Adsは、RTB取引によって配信を行うことで効率よく入札が可能です。その点からも、結果としてリーチ単価やCPMを安価にすることができています。

 

効果的な配信方法の啓蒙が市場発展のカギ

―クッキーレスに対応した広告配信手法(ポストクッキーソリューション)としては、1st partyデータ・共通IDソリューション・プライバシーサンドボックスなどもございますが、コンテクスチュアルターゲティングはどのような点で優れているとお考えでしょうか。

 

コンテクスチュアルターゲティングはIDなどによって広告配信対象となるユーザーを絞ってないため、広く新規ユーザーに向けたアプローチがしやすいのは大きなメリットかと思います。先ほどお伝えをした「商品のブランドイメージを出来るだけ幅広い層に効率よく伝えていきたい」というのは分かりやすい例かと思います。

 

また、モーメント=瞬間的な欲求を捉えた配信というところで、商材や市場によってはより大きな効果も期待できると想定しておりますので、先ほどのオーディエンスターゲティングの例と同様、選択肢を増やしたうえで臨機応変なプランニングをしていければ理想的かと思います。

 

―「コンテクスチュアルターゲティング(に関する広告市場)」について、現在の課題として想定されているものはございますか。

 

「どのようなメディアやトピックに対して配信していくか」という点で工夫が必要な配信手法となっているので、ここは今後、我々からも啓蒙をしていかなければならないと考えています。

 

例えば、化粧品・コスメの訴求をする際に、リスティング広告ではブランド名・競合ブランド名などのキーワードを指定されるかと思いますが、コンテクスチュアルターゲティングの場合はそれらのキーワードに加えて、デートスポットに関連するメディア、お出かけに関連するメディアなど、化粧品・コスメが使われるシーンが想起されるメディア・トピックも一緒に選択することで、よりモーメントが捉えやすくなります。

 

「コンテクスチュアルターゲティングはリスティング広告のキーワード指定と同じような感覚で配信できますか?」とご相談をいただくことも多いのですが、コンテクスチュアルターゲティングの場合は更に広い視野を持ったプランニングが求められるので、これらの考え方やノウハウを広めていくことが今後、市場の発展には必要になるのではないかと思います。

 

 ―今後の貴社のコンテクスチュアルターゲティングを含む広告ソリューション、および事業展望についてお聞かせください。

 

コンテクスチュアルターゲティングを含めた、ポストクッキーソリューションの検証や推進は会社の内外で今後も加速させていく必要はあるかと考えています。また、商材や目的・KPIなどに合わせた広告配信手法の選択やプランニングについては、社内でのノウハウや事例も蓄積され、傾向が見えて来たところです。

 

ただ、弊社の提供イメージとしては、特定のポストクッキーソリューションに注力するというものではなく、各手法に網羅的に対応することで、クライアントに納得・期待して使っていただけるよう、ボリュームや精度の両面を補完できる仕組みを提供していきたいと考えております。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。