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キュレーションプラットフォームとは何か?:その概要と可能性を探る

プログラマティックのサプライチェーンが複雑になりすぎたため、パブリッシャーと広告主の双方がより洗練された広告の売買方法を求め始めている。そこで今回は、すべての関係者にとってウィンウィンとなりうるプログラマティックソリューション、キュレーションを取り上げる。

 

クッキーの廃止が間近に迫り、ターゲット可能なオーディエンスの減少が避けられないことから、ファーストパーティデータの収益化にも暗い影が差してきている。この苦境に拍車をかけているのが、パブリッシャーがユーザーに優れたメディア体験を提供しようとすると、広告枠の数を絞らざるを得ないという現実だ。同じ理由から、パブリッシャーはトラフィック購入や広告自動更新などのユーザー体験を損なう戦略も避けるようになっている。共通IDの採用も流動的な中、ユーザー満足度の向上と収益獲得の間で適切なバランスをとることは、パブリッシャーにとって現在進行中の難題のひとつだ。

そのため、業界内の多くの人々が、キュレーションに目を向けるようになったのも不思議ではない。なぜならキュレーションには、あらゆる課題の解決策となる可能性が秘められているからだ。キュレーションプラットフォームは、プログラマティックサプライチェーンに透明性をもたらす重要な機能をもっており、また、パブリッシャーがファーストパーティデータを収益化する上で必須の、プライバシーに配慮したアップグレードされたアプローチも提供できる。

では、常に変化し続けるこの業界において、キュレーションはデータや広告在庫の新しい管理の形をもたらすことができるのだろうか?その可能性と隠れた欠点を考察する。

 

デジタルマーケターにとってのチャンスは何か?

サードパーティCookieが廃止され、アドテクノロジーの蜘蛛の巣はますます複雑化しており、買い手と売り手がより緊密な関係を構築する必要性が高まっている。そこにキュレーションが関わる機会は無限にあるだろう。キュレーションプラットフォームは、複雑化したアドテク・エコシステムに追加されるものではない。それは、プレイヤーが自ら利用するセルフサービス・スイートであり、その機能は、革新的で付加価値の高いメディア・ソリューションを生み出す機会を提供する。

広大な在庫プールを利用すれば、キュレーターはオーディエンスのリーチを拡大し、ビジネスルールやキュレーション機能に即した洗練されたオークションパッケージを作成することができる。またその機能には、パフォーマンスKPIやコンテキストに基づくオーディエンスの構築や、ドメイン、場所、デバイスなどに基づいてインベントリーをフィルタリングする機能が含まれる。適切なタイミングで適切なユーザーに届く、正確な広告配信能力が強化されるため、結果的に、キャンペーンのパフォーマンスが向上し、優れた成果を達成することができる。

キュレーションプラットフォームを通じて、パブリッシャー、データプロバイダー、ブランド、小売業者は、自社のファーストパーティデータと調達したインベントリーをPMPの中で組み合わせ、それを広告バイヤーに提供できる。アイデアは単純だが、買い手にはリーチの拡大を、データ所有者には新たな収益源を、そしてパブリッシャーには広告需要の高まりをもたらす。

 

キュレーションされたPMPはプログラマティックの未来

最近までPMPは、パブリッシャーが自社データとインベントリーをパッケージ化してバイヤーに販売する手段のひとつだった。だが、キュレーションの登場によって、パブリッシャー、データプロバイダー、ブランド、小売業者は、それぞれのPMPを活用し、自社のファーストパーティデータと第三者のインベントリーをバンドルし、バイヤーに提供することができるようになる。コンセプトは単純だが、キュレーションは、バイヤーにリーチ拡大の機会を提供し、データ所有者に新たな収入の道をもたらし、パブリッシャーの在庫の需要を喚起する。

キュレーションによって、多様なデータを一つのPMPに集約することが容易になるため、キュレーションを活用して収益向上を図ることは、クッキーに代わる現実的な選択肢のひとつになる。例えば、オーディエンスデータ、コンテクスチュアルデータ、コグニティブデータ(推測オーディエンスデータ)などを搭載したテーラーメイドのPMPが、クッキーレスの未来に対応したソリューションとして台頭してきている。この革新的なアプローチは、メディアバイヤーにもブランドにも、リーチの拡大、パフォーマンスの向上、コスト削減などのさまざまなメリットをもたらす。

PMPの活性化について語るとき、もちろん考慮すべきマイナス面もある。キュレーションは、ターゲットを絞ったプレミアムなインベントリーを提供するが、規模の拡大や複雑な販売プロセス、ポスト・クッキー環境、持続可能性(CO2排出量)への対応などの課題は、引き続き先進的なアプローチを必要とする。スケールや持続可能性といった側面へのデメリットを最小限に抑えながら、キュレーションの取り組みを最適化しようとするなら、人工知能(AI)のような先進技術を活用し、新しい形のコンテキスト広告など、代替となるターゲティングメカニズムを開発する必要があるかもしれない。

 

プログラマティック環境に、人間の要素を取り戻す

日々、消費者を襲う情報やコンテンツの洪水の中で、マーケターは、ノイズを打ち消し、意味のあるインパクトをもたらすという困難な課題に直面している。キュレーションマーケットプレイスは、この問題に対する解決策を提供しつつ、プログラマティックの決済プロセスにおける取引条件や支払いレートを一元化することで、個々のパブリッシャーとの関係も強化する。

キュレーターは、それぞれのマーケットプレイスに独自の工夫を凝らすこともできる。これには、持続可能性やDEIの取り組みから、セールスファネル、特定のインベントリーに至るまで、あらゆる要素を組み込むことができる。キュレーションによって、バイイングプロセスが合理化できるだけでなく、様々なアドエクスチェンジを通じて世界規模で広範なオーディエンスを見つけることもでき、的確なブランド構築が行える。

またキュレーションプラットフォームには透明性も備わっているため、高品質で安全な広告枠を求める広告主には、ブランドセーフティが保証される。またキュレーションは、主にSSP領域で運用されるため、パブリッシャーにも高い可用性、迅速性、有効性を提供する。

 

ポスト・クッキーにおけるデータ・プライバシーの展望

透明性のメリットは、データ・プライバシーに関してもいえることだ。プライバシーが最優先される現在、キュレーションはパブリッシャーに、貴重なファーストパーティデータを有効に活用する機会を提供する。これは、規制を遵守しながらターゲティング精度を高めるもので、広告主の信頼も確保できる。さらにキュレーションは、ブランドポリシーに沿ったオーディエンス拡張にも扉を開き、パブリッシャーは広告配信がない場合でも、データから収入を得ることができる。

もちろん、クッキーと広告IDに関する差し迫った課題があり、キュレーションを検討している企業にとっては、どちらも大きな障害となる可能性がある。サードパーティクッキーに依存できなくなるにつれ、ターゲティングとアトリビューションのための新しい手法の開発が必要となってくる。キュレーションされたアドテク環境においても、革新的なソリューションの必要性は高まっている。

キュレーションの概要、可能性については、キアラン・オケーンのMadTech Sketchも参照されたい。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。