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良質なメディアを束ねた「クオリティメディアコンソーシアム」で提供される広告価値[インタビュー]

 

株式会社デジタルガレージの子会社である株式会社BI.Garageが、メディア30社と共同運営する「クオリティメディアコンソーシアム」が注目を集めている。そこでは新聞社・雑誌社・テレビ局など 30社150のメディアブランドと共に、デジタル広告が抱える課題を解決するPrivate Market Place(PMP)を展開している。

 

本コンソーシアム設立の背景やオープンインターネットの未来について、株式会社BI.Garage 特命顧問であり、コンテンツメディアコンソーシアム 事務局長でもある長澤 秀行氏にお話を伺った。

(聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

 

 

30社の共同運営で保たれるクオリティメディア

―クオリティメディアコンソーシアム設立の背景について教えてください

5年前から「コンテンツメディア価値研究会」という名称で、コンテンツメディアのパワーを高めていくための調査研究を進めていました。その過程で、プラットフォームに広告が偏ることで、コンテンツメディア単独では広告マネタイズが厳しいという現状が明らかになってきました。

 

そこで、この研究会の中で手を挙げていただいた各社と事業化してPrivate Market Place(PMP)を作ろうということになり、当時28社に参加いただいて成立したのが背景となります。

 

―他のアドネットワークとはどこが異なるのでしょうか

単にアドネットワークに入るということではなく、共同事業としてBI.Garageに御出資をいただいています。つまり、各社の経営トップが経営判断した上で参加いただいているという部分が他のアドネットワークとは異なって共同運動体になっています。

 

―現在30社が参加しているとのことですが、参加基準はどういったものなのでしょうか

事務局に決定権はなく、参加している全社による合議制となっています。ただ一応の基準としては、取材をして裏取りをして編集で吟味して情報発信するというプロセスを踏んでおり、また、様々な広告掲載基準を持ってそれを実行しているメディアというものがあります。入会時にビデオリサーチ社による広告運用体制に関する第三者の検証を行い、さらにJICDAQに我々自身が加盟しているので、二重の安全性を保っています。

 

―自らで「クオリティメディア」と位置づけていることも特徴的な点です

昨今、ネット広告の全体環境は荒れており、アドフラウド、ブランドセーフティ、ステルスマーケティングなど詐欺的な手段が横行しMAFなど生成AI技術を活用した広告詐欺サイトもグローバルで急増しています。また、コンテンツを見る人を追い掛けまわす広告、視聴を邪魔する広告などにより、ユーザーからの受容性が極端に低い広告がネット広告の先行きを不安にさせています。

 

実際に、日本インタラクティブ広告協会の発表からも、ユーザーのインターネット広告不信が進んでいることが伺えます。このような環境下では、他のメディアと差別化する必要もあることも踏まえ、自分たちを「クオリティメディア」と宣言するに至りました。

 

 

 

クオリティメディア・アドネットワーク「MediaString」が提供する広告価値

―日本におけるPMP環境はどのようなものなのでしょうか

日本の広告環境では、PMPビジネスに対してのニーズはまだ活発ではありません。やはりプラットフォームによる運用型市場の中で、メディアを指定せずビッティングやバイイングを行っていくものが8割ほどになると思います。あらかじめ掲載するメディアが指定されており、さらに掲載後も要請があればどこに掲載されたか開示できるネットワークというのは非常に少なく、我々とTVerくらいではないでしょうか。

 

一方、米国では運用型広告のうち半分がPMPと言われています。米国ではよりブランドセーフティやクオリティやトレザビリティに対して広告主の目が厳しいということです。

 

―日本でPMPの普及が遅れている原因は何でしょうか

日本ではデジタル広告の成長過程の中で、初めからプロモーション媒体としてデジタルメディアが位置づけられており、コマース企業やゲームアプリ企業など獲得系のクライアントが主流でした。獲得系ではクリック数が確保されてさえいれば、掲載されるメディアの質は問われないことになります。

 

しかし、近年日本でも変化の兆しが見られます。これまではブランディングはテレビ、プロモーションはデジタルという棲み分けがされてきましたが、マスメディアの力が落ちてきているのはご承知の通りです。

 

今後はデジタルにおいてもブランディングが求められる中で、果たしてどこのメディアに掲載されてもいいものか、クリック数だけ追い求めればいいのかという議論が日本でもようやくここ1、2年で起こってきたところです。

 

―実際に貴団体のPMPでは高い効果が出るのでしょうか

今回の発表に伴って、他媒体との比較調査を実施しました。私たちが提供するクオリティメディア・アドネットワーク「MediaString」は30社を束ねたサービスになっています。本調査では時計メーカーにご協力いただき、Meta、LINE、YDA、MOBKOI、Unicorn、SmartNewsと、幅広いメディアとMediaStringの効果比較を行いました。

 

例えば、LPに遷移した後のユーザーの動きについては、広告の質やユーザーの質が高ければ、LP遷移後も長く滞在してスクロールもされます。結果としてMediaStringは他メディアと比べても上位に位置しており、特に平均滞在時間に関しては、他のDSPなどが数秒であるのに対して、MediaStringは29.8秒と約5~6倍の数値が出ています。

 

ネットワークしている媒体の質が高いので、そこにいるユーザーの質、送客の質も高いということです。他にも直帰率の低さやスクロール率の高さも検証しており、LP遷移後に90%のスクロール割合、つまりほぼ最後までスクロールするユーザー割合が、他媒体に対して非常に高いというデータも出ています。企業のメッセージが掲載されているようなLP遷移後の読了率も、メッセージが複雑であり、記事のテキストが多いほど他の媒体と比べて高い結果が出ています。調査前に期待した通りではありましたが、MediaStringを経由することで送客の質の高さを証明することができました。

 

 

メディアの質がオープンインターネット活性化のカギ

―近年オープンインターネットの広告費が落ちています。活性化にはどのような対策が必要なのでしょうか

プラットフォームと比べての優位性をアピールしていくしかないと思います。プラットフォーム安全神話というものがありますが、それは果たして本当なのかと多くの広告主が気づいており、センシティブにもなっています。そういった領域で、まさに我々の出した宣言のように真っ当なメディアの価値を広告主に伝えていくしかないのではないのでしょうか。

 

また、プラットフォームによる行動ターゲティング型の広告などが要因となり、ユーザーのネット広告離れが表面化しており、Z世代は特に広告に対して嫌悪感を示しています。本来広告はユーザーから好かれなくてはならないし、コンテンツが持っている魅力をオブラートに包んで見てもらうことが広告の本来のあり方です。広告が全面に出てきたらユーザーが忌避するのは当然のことです。

 

―アドテクがさらに進化することでも今後の流れは変わってくるのでしょうか

正直に言ってアドテクの進化はすでにある程度の域にまで達してしまっています。そこで最近では「オリジネーター・プロファイル」という技術が注目を集めています。ネット上の記事や広告に識別子を付与することで、コンテンツのオリジナル性を認証できるというもので、現在では読売新聞社さんを中心に新聞社、テレビ局、電通さんなどが技術研究組合に加入し研究を始めています。

 

今後は生成AI活用による模倣コンテンツ制作が容易になり何が本物で何が偽物のコンテンツなのかを見分けられないと、広告を出すことに躊躇するといった傾向は強くなるはずです。従って、「アドテク」よりも社会的なコンテンツの信頼性等を証明していく「コンテンツテク」といった概念が、AI時代に向けては重要なのではないでしょうか。

 

―クッキーレスの問題も依然として話題に上がります

クッキーが無くなれば、ファーストパーティーデータで勝負するタイプと、我々のようにコンテクスチュアルなコンテンツの接触データで勝負するタイプの2つに分かれるはずです。ただし、各メディアが持っている個別のファーストパーティーデータよりも、プラットフォームが保有するファーストパーティーデータの方が大きいのが現状です。

 

サードパーティークッキーをGoogleが廃止したところで、Google等が保有するファーストパーティーデータは膨大なので、引き続きターゲティングは可能です。巨大デジタルプラットホームがクッキーを禁止し、自らのファーストパーティーデータでユーザーデータの囲い込みに出てくる中で、コンテクスチャアルターゲテイングに加えて、コンテンツメデイア統合ID的なIDプラットホーム発想が出てくるのか、それとも別の視点での差別化が必要なのかは難しい部分です。本コンソーシアムの中でも活発に議論していますが、人によって意見が異なり答えが出ない部分でもあります。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。