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「攻め」と「守り」の戦略で訪日客にアプローチ―IAS×JCD×クリムタンによる新たなインバウンドソリューション[インタビュー]

 

コロナ禍が明けて、インバウンドが活気を取り戻している。さらに2025年には大阪・関西万博を控えており、訪日観光客向けプロモーションに一層注力していく企業も多いだろう。

そんな中、Integral Ad Science Japan 株式会社(IAS)、株式会社JTBコミュニケーションデザイン(JCD)、クリムタン株式会社の3社が連携し、訪日観光客のプロモーションに特化した新たなソリューションの提供を開始した。

「“攻め”と”守り”を兼ね備えた」と表現される本ソリューションの詳細や、現在のインバウンドプロモーションを取り巻く環境と課題について、各社の担当者による鼎談をお伝えする。

(Sponsored by IAS)

 

写真左から下記の通り
■クリムタン株式会社 Commercial Director, JAPAC ジョシュア・ウィルソン

■株式会社JTBコミュニケーションデザイン DX推進プロジェクト Digital Marketing Evangelist 直井 英樹

■Integral Ad Science Japan 株式会社 営業責任者 知久 俊明

 

 

一筋縄ではいかないインバウンドプロモーション

 ―日本のインバウンド需要は今どのような状況なのでしょうか
直井氏:日本政府観光局の発表では、訪日観光客がコロナ前の9割の水準に戻っているそうで、インバウンドが活気を取り戻してきましたね。特にアメリカからの訪日客に関しては、コロナ前に比べてだいぶ戻りも良いです。

 

知久氏:インバウンド需要が順調に回復しているな、というのは私自身も実感しています。企業にとってはチャンスですが、一方で「インバウンドプロモーション特有の難しさ」は相変わらずの課題ですね。例えば、アジアの主要10カ国に広告配信するとなったときに、その国ごとの特性や最適なメディアを把握するのは容易ではありませんし、興味、関心、宗教、文化などなにからなにまで変わってくるので、効果的な施策の分析も難しくなります。

 

―「インバウンドプロモーション特有の難しさ」とは?
直井氏:インバウンドプロモーション特有の課題として、私たちは大きく3つあると考えています。まず「効果的なクロスメディアマーケティング施策」が難しい点です。メディア単体でのユーザー行動の把握やリターゲティングは可能ですが、他のメディアと複数展開したとき、メディアを横断したユーザー把握が困難なため、効果的なターゲティングが難しくなります。次に「ターゲティング精度」の問題です。興味関心による行動ターゲティングなどは可能ですが、精度がそんなに高くないと感じています。最後に「効果測定」についてです。現状、効果測定が動画の視聴数やバナーの表示回数、クリック数などの定量的な分析に寄ってしまい、その先にある深いインサイトまで焦点を当てられていないことも問題だと考えています。

 

 

ウィルソン氏:加えて、日本企業が海外で広告を出すにあたっては、各国の法律も大きなハードルとなります。例えばヨーロッパではGDPR(*1)、アメリカだとCCPA(*2)といった、データ使用についての非常に厳しい規則があります。広告主様が安心して出稿するにはその国ごとのユーザーデータに関するノウハウが必要となり、そこまで気にして広告をグローバル展開するとなると、どうしてもハードルが高くなってしまいます。

(*1) General Data Protection Regulation:一般データ保護規則

(*2) California Consumer Privacy Act:カリフォルニア州消費者プライバシー法

 

知久氏:また、広告配信の安全性の観点から言うと、意図せずブランド毀損の危険性の高いサイトや不適切なサイトに広告が出てしまうなど、ブランドセーフティや不正対策の面で安全が確保されていない問題もありますね。これから日本では2025年に大阪・関西万博が予定されていますが、ああいった注目度の高い大規模なイベントになると特に不正なインプレッションやクリックが増え、不正業者が企業の広告費を横から盗んでいくケースが多くなります。今後、インバウンド需要のさらなる増加を見据えると、チャンスの裏で起こりうる不正も気にしなくてはいけないポイントです。

 

―その課題解決のために、この3社が連携されたのですね。きっかけは?

直井氏:こういった課題感を共有した時に実は皆さん同じ気持ちで、そして、各社が持つ強み、知見、テクノロジーを持ち寄れば、解決の一手が打てるのではないか?と言う話になり、この取り組みが始動しました。

 

 

ウィルソン氏:JCDさんをインバウンドプロモーションにおけるデジタル戦略設計の中心に位置づけ、クリムタンのアドテクで実際の課題を解決していく。さらにIASさんのアドベリフィケーションでブランド毀損を回避するという座組は、手前味噌ですが本当に各領域のエキスパートが集まったと感じています。3つの攻め+1つの守りをひとつのソリューションとして提供しながら、1つ1つがとても密度の濃い作りになっていると思います。

 

知久氏:今回のソリューション提供が、旅行業界のデジタル広告の発展における非常に大きな一歩になると思っています。

 

 

デジタル戦略×アドテク活用×ブランド毀損の回避で効果的な広告出稿を

 直井氏:本ソリューションでは、まずJCDが持つ知見とクリムタンの技術で、訪日観光客向けプロモーション特有の課題「効果的なクロスマーケティングが難しい」「ターゲティング精度が低い」「インサイト不足」の3点を解決していきます。

 

 

ウィルソン氏:クッキーレスにより同一ユーザーへのリターゲティングが難しくなりましたが、「Total Media Attribution」ではクリムタン社のアクティブIDを使い、ユーザーの行動をデータとして把握し、メディア接触に沿ったデジタルプロモーションができるようになります。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、屋外ビジョンなどデジタル化が進んだメディアのデータを横串で繋ぎ、ユーザーの行動を加味しながら、興味関心を醸成し、最適なタイミング、最適なメディアで広告を一貫して出すことができます。

 

知久氏:ターゲティング精度をAI活用で上げていく「Hyper Personalization」もこれまでのターゲティングとは一線を画す点ですよね。

 

ウィルソン氏:そうですね。例えば「70代・男性・イギリス在住」と言ったとき、デモグラフィック上ではチャールズ国王とオジー・オズボーンは同じなんです。ただ、個々の人物像としては全く違っていて、チャールズ国王はBBCニュースを毎日チェックするけど、オジー・オズボーンはSpotify漬けでニュースは見ないかもしれません。こんな形で、デモグラによる従来のターゲティングではこの2人に対して同じ広告を出してしまいますが、実際は興味も使うメディアも違うということを踏まえた上で、より緻密なデータ分析に基づいて配信するコンテンツは決定されなくてはなりません。これができるのが「Hyper Personalization」の強みです。

 

 

直井氏:これまで課題だった効果測定には、ユーザーの広告接触時間を分析する「Attention Time Survey」がサポートできる領域です。

 

ウィルソン氏:最近では、残念ながら広告を見てもクリックする人は少なくなっていますが、だからといって意味がないわけではないんです。ブラウザに表示されていれば、その人の記憶に残るということが証明されています。これはAttention Time(*3)という形で海外では広まってきている指標で、高いアテンションタイムを獲得したキャンペーンは、そうでないキャペーンよりも25%高いブランド認知を獲得し、ブランド想起率も平均79%高くなるという結果も出ています。このAttention Timeをレポーティングする「Attention Time Survey」で、日本でもクリック一辺倒ではない新しい広告指標を広めていきたいですね。

(*3)ビューアビリティ・広告表示時間・ページ滞在時間・エンゲージメントからなる指標

 

直井氏:「Total Media Attribution」「Hyper Personalization」「Attention Time Survey」の全てが、訪日外国客に焦点を合わせたプロモーションのなかで需要がありながらも、これまで提供が難しかったものです。これらの必要不可欠な要素を1個1個提案するのではなく、今回1つのソリューションとしてまとめて提供できるのは大きな強みだと思います。さらに、これだけで終わらずにIASさんのインバウンドプロモーションに特化したアドベリフィケーション「Inbound Ad Verification」があるからこそ安心して出稿できる体制が整っています。

 

知久氏:広告がボットによる閲覧やクリック詐欺の被害に遭い、広告費が反社に流れていることは、決して珍しいことではありません。インバウンドにおける広告配信では、そういった広告の不正に対してはもちろんのこと、多様性に配慮して広告が届けられているかも確認する必要があります。国や地域によって嫌がられるコンテンツは日本とは違いますので、そういった各国のコンテンツを把握し、必要に応じてそこに出稿されている広告を全て制御して、ブランド毀損のリスクを取り除いていきます。

 

また、キャンペーンの設定を間違えると、意図していない言語のサイトに広告が配信されることもあります。広告を届けたい人の国や言語に合っているのかを検証することも必要ですね。実際、日本の広告主様がある国のサイトを隅々まで見ることは現実的ではありません。そういった部分を全て私たちのシステムを通じて数値化して見ることで、どれくらいページが見られているか、悪質なコンテンツに表示されていないかを確認し、さらにそれを制御していくことができます。

 

 

 

旅マエ、旅ナカ、旅アトで状況に適したアプローチを

 ―これからソリューションを利用される広告主様には、どのような価値・成果を感じてもらいたいですか?

 直井氏:広告主様には実際に訪日客をターゲットにした効果的な広告配信をまず体験してみていただきたいですね。旅マエは「日本に行ってみたい」、旅アトは「日本に行って良かった」「また行きたい」に繋げる部分なので、その点では今までの訴求の仕方と変わらないと思いますが、旅ナカの旅行客への訴求は特にアドテクを介さないとできない部分です。日本に来ているアメリカ人だけセグメントするなど、いろいろなアレンジができます。日本に来ている旅ナカの人たち対してのソリューション提供というのは、今までにはないのではないでしょうか。

 

また本ソリューションのターゲティングは、日本食への興味関心が高い人なのか、日本のファッションが好きなのか、その人の求めているもので広告配信の仕方が変えられるので、より旅ナカでコンバージョンを獲得するために効果的を発揮しやすいと思いますね。

 

知久氏:旅マエと旅アトは施策としては分かりやすいぶん、国によってネットの通信環境もメディアの数も違うという基本的な部分を見落としがちです。日本はシンプルで、いわゆる大手メディアを集中してみなさん見ているじゃないですか。でも海外では大手一強というわけではありません。例えばインドなどはさらに日本よりもプリミティブにウェブサイトで見ることがあります。通信環境が日本ほど整っていないところは、メディアの作り方もライトな作り方になってますね。また、日本だとテレビの視聴はあまりないですが、これも国によって異なってきます。

 

ウィルソン氏:テレビを視聴しない人はアメリカにも多いですね。また、プライバシー違反をしているSNSなどを否定的に見ているユーザーも珍しくないので、特定のSNSを回避している人たちもいます。アメリカだけでもこれだけ多様なので、じゃあイギリス、オーストラリア、中国、台湾、インドネシア…と配信先を増やしていったときには、広告主様をサポートする企業の知見が必要になります。

 

 

インバウンドソリューションのデファクトスタンダードへ 

―3社合同ソリューションの今後の展望を教えてください。

直井氏:とにかくまだ始まったばかりなので、これからソリューション名も決めなくてはいけないし、提供する価値自体もどんどん更新していきながら、業界のデファクトスタンダードを目指したいですね。位置情報を介した来訪コンバージョンのようなものを求めている広告主様も多くいらっしゃるので、そういった部分の可視化にもしっかりと取り組んでいきます。

 

ウィルソン氏:今の直井さんのお話の通り、今後、訪日客が日本のどの県に行ったかというデータまで出せるようになると思います。日本に来て、岐阜県に行って、そのあとはどこへ行って…という分析と並行しながら、こういうジャーニーで運用して、これくらいのアテンションを取って、その結果、これくらい効率が良くなったという事例も今後皆さんにお見せできると思います。IASさんがついているので、おかしなメディアに広告が出る不安がなく、企業様には安心して活用していただけます。

 

知久氏:IASのテクノロジーは海外のメディアも全て記事をカテゴリー化しており、例えば広告がベトナムのある記事に出たときに、それがポジティブな内容なのかネガティブな内容なのかといったデータも持っています。今後はこのソリューションの提供が広がっていくことで、さらにデータが貯まっていき、より精度の高い形でユーザーから忌避されるコンテンツに対してフィルターをかけられるようになります。

 

私たちのソリューションは「攻め」と「守り」で構成されていると考えています。個々の海外メディアに適切にリーチしつつ、ブランドセーフティやアドフラウドのリスクがない状態で配信できるのは本ソリューションならではだと思います。インバウンドが回復してきているのは肌で感じながらも、次の効果的な施策を見つけられていない広告主様にぜひ使っていただきたいです。

 

 

既存の訪日観光客向けソリューションに物足りなさを感じている広告主も少なくないのではないか。そんな中、「攻め」と「守り」の両面から包括的にサポートする本ソリューションの強みは鼎談でご紹介したとおりである。

インバウンド施策がまだ固まっていないケースではもちろんのこと、すでに着手している広告主にとっても、導入によってさらにもう一段上のプロモーションが可能になることは間違いないだろう。

ABOUT 渡辺 龍

渡辺 龍

ExchangeWireJAPAN 編集担当 立教大学社会学部現代文化学科卒業。大学卒業後は物流企業にて海外拠点と連携し、顧客の輸出入サポート業務全般に従事。 その後、2021年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告市場調査などを担当している。