×

カプコンがUnity LevelPlayで「Snoopy Drops」を成長させている方法[インタビュー]

モバイルアプリ及びゲーム市場にとって、過去5年間は歴史的に大きな変化を遂げた。ロックダウン、プライバシー規制や厳しい経済環境などにより、デベロッパーは今まで以上にビジネスの収益性を確実に維持するための対応策について敏感になっている。そこで、大手ゲーム企業のカプコン社と、同社にメディエーションプラットフォームを提供するUnity社に、こうした厳しい市場環境の中で安定的に成長するアプリビジネスを運営するための具体的な戦略について尋ねた。

(Sponsored by Unity)

 

広告収益の低下をいかに乗り越えるか

 

自己紹介をお願いします。

 

平田氏:株式会社カプコンが運営するゲームアプリ「スヌーピー ドロップス」のディレクターを務める平田 幹と申します。2名体制のディレクターの一人として、もう一名の女性ディレクターと連携し、広告マネタイズを含めた開発運営の取りまとめを行っています。

 

村松氏:同じくスヌーピー ドロップスの開発運営を担当する村松 照也です。本ゲームアプリのプロモーションや対外営業に加えて、シナリオやPV制作にも携わっています。

 

峯氏:Unityの日本法人となるユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社のシニア·グロース·マネージャーを務める峯 秀一郎と申します。ユーザー獲得やマネタイズなどアプリの事業成長を支援する部署に属しており、当社のメディエーションプラットフォームであるUnity LevelPlayの導入及び運用支援なども行っています。

 

―ご担当されているゲームアプリの詳細をお聞かせください。

 

平田氏:スヌーピー ドロップスは、世界的な人気キャラクターであるスヌーピーと一緒に楽しむことができるパズルゲームです。2024年9月に10周年を控え、国内配信で既に500万ダウンロードを達成しました。若年男性が主な対象となることが多いゲームアプリには珍しく、40代以上の女性がユーザーの大半を占めています。

 

 

またゲームアプリの課金パターンとして定番化しているガチャがないことも特徴的です。課金のみではARPPU(有料ユーザー1人あたりの平均収益)が限定的となるため、動画広告収益と組み合わせたハイブリッド型のマネタイズを行っています。

 

―広告マネタイズにおいてはどんな点を重視していますか。

 

平田氏:何よりもユーザー体験を損なわないことが大前提です。そこで報酬を得るためにユーザー様が自ら選んで視聴する動画リワード広告形式を採用し、視聴ポイントも常に精査しています。また女性ユーザーが受け入れやすい動画広告クリエイティブを選別するなどの配慮も必要です。

 

―広告マネタイズに関してどのような課題がありますか。

 

峯氏:市場全体としては、アプリの利用時間や頻度が急激に増えたコロナ禍の収束やプライバシー規制の強化さらにマクロ経済の影響などを受けて、ここ数年間は世界的に広告単価が下がっています。多くのパブリッシャーは、ユーザー数は増えているにも関わらず、従来得られていたスケールが維持しづらくなっており、よりゲームの収益性を向上できる新たな方法やツールを模索しています。

 

平田氏:当社もここ数年は広告単価の低迷に悩んでいました。以前利用していた別のメディエーションプラットフォーム上では、ウォーターフォールの設定変更や新規のアドネットワークの追加など様々な取り組みを行いましたが、広告単価が相対的に低くなってきたことに限界を感じ始めました。

 

そこで、メディエーションプラットフォームをUnity LevelPlayへと移行したのです。Unityが提供するアドネットワークのUnity Adsは高い収益実績が出ていたので、同社が運営するメディエーションプラットフォームに移行すれば収益が上がると考えました。

 

メディエーションプラットフォームはどれも同じ?

 

―ただどのメディエーションプラットフォームも接続先のアドネットワークは似通っています。メディエーションプラットフォームを変更することで収益は改善するのでしょうか。

 

平田氏:仰る通り、サードパーティのアドネットワークについてはどのメディエーションプラットフォームも連携先はほぼ一緒です。だからこそ、プラットフォーム自体が運営するアドネットワークの収益性を重視し、プラットフォームだからこそ収集できる情報が機械学習に使われることによって、収益性がより高まるだろうと考えました。

 

またメディエーションプラットフォーム自体の機能についても、Unity LevelPlay ではA/Bテストの条件分けがより細かく設定でき、ウォーターフォール設計の制約が少ないです。移行後に仮に収益が一旦低下したとしても、改善手段が多くあるので挽回することは可能であり、新たに得る知見も多いと判断しました。

 

峯氏:当社のメディエーションプラットフォームであるUnity LevelPlayは世界有数のモバイルゲームパブリッシャーに支持されており、業界最多である25ネットワークのビッダーをサポートし、GoogleとUnity Adsのビディングが同時に利用できる唯一のメディエーションプラットフォームです。また、配信される広告コンテンツの監視および管理ができるAd Qualityや、マネタイズ戦略におけるあらゆる要素の比較検証を数クリックで実現するA/Bテストツールなど、収益性の向上を実現する機能やツールを充実させることで差別化を図っています。

 

もちろん、Unityが提供するマネタイズソリューションであるメリットとしてゲーム開発からリリース後のマネタイズまでシームレスに利用できるだけでなく、Unity AdsとironSource、両ネットワークが提供するビッダーのポテンシャルを最大限発揮することが可能です。

 

また多くのゲームアプリは広告マネタイズと同時にユーザー獲得つまり広告の出稿も行っています。当社は双方のデータを連携することで、それぞれの自動最適化を行う独自の仕組みをご提供するなどしています。

 

メディエーションプラットフォームの移行に伴う開発コストやデータ損失はどのように考慮しましたか。

 

平田氏:移行後の学習期間における一時的な収益低下も移行コストと捉えた上で、運用中の学習済み広告ユニット·プレースメントはなるべくそのまま使うことで低下を抑えました。またアプリ開発にUnityエンジンを採用していたため、Unity Level Playの実装コストは小さかったです。データについては、自社の分析基盤にAPIを通じて蓄積していたので、損失は発生しませんでした。

 

実際にメディエーションプラットフォームを移行したことで状況を改善できたのでしょうか。

 

平田氏:Unity Level Play導入の前後30日で比較した結果としては、収益額は約108%、ARPDAU(デイリーアクティブユーザー1人あたりの平均収益額)は約112%向上しました。動画広告の収益が例年低くなる時期であったにも関わらず、好結果が出たことに非常に満足しています。

 

村松氏:広告マネタイズ施策でROASが高かったユーザーを拾い出したデータをユーザー獲得施策においても活用できるようになった点も非常に大きいです。以前利用していたメディエーションプラットフォームではこのような機能はありませんでした。

 

 

平田氏:広告の品質管理機能も重宝しました。従来は不適切な広告が表示された際に、ユーザーから報告された情報だけを頼りに該当する広告を特定するのがそもそも難しく、さらにアドネットワークに配信停止を依頼するまでに一定の時間を割いていました。ところが今ではユーザーサポートIDに基づき、報告のあった動画を容易に特定できブロックできます。また多くのユーザーの離脱につながった広告の特定など統計的な把握ができるようになりました。

 

峯氏:他社が提供するメディエーションプラットフォームをご利用されている場合、ユーザー体験の最適化まで支援の手が回っていないことが多いとの印象を受けます。当社のメディエーションプラットフォームでは広告単価の最大化だけでなく、ユーザー体験を向上することで広告収益ひいては課金転換を最大化するための様々なデータやツールを提供しています。

 

 

これらの仕組みを有効に活用いただく上では、どの機能を用いてどんな目的を達成するかについて当社とお客様との間で緊密なコミュニケーションを図ることが重要です。他社では問い合わせフォームを通じてしか連絡が取れない場合もあると聞きますが、当社では人的なサポート体制の整備にも注力しています。様々な事業者と連携するプラットフォーム事業の特性を生かし、市場で何か変化の兆しが見られれば、当社が保有する膨大なデータを活用して分析し、それぞれのパブリッシャー様にとって最適なインサイトの提供だけでなく、実践的な適応および対応のサポートを提供するように心がけています。

 

人的サポートが大きな差別化要因に

 

人的サービスがメディエーションプラットフォームの差別化要因になるとは意外でした。

 

平田氏:Unity担当者様と週1回の頻度で打ち合わせを実施し、動画広告の視聴ポイント追加やA/Bテスト実施方法の提案などをいただき、非常に参考になりました。このような人的サポートを他のメディエーションプラットフォーム事業者から受けたことはなかったので驚きました。

 

また当社単独では市場全体の状況は把握しきれません。例えば広告収益が悪化した際に、当社だけの問題なのか、市場全体の傾向なのか。これまでは自社内で予測や仮説を提示するだけで終わっていたところを、Unity社と答え合わせができるようになったことで広告事業に関する理解がかなり深まりました。

 

今後ゲームアプリはどのような課題に直面する可能性があると見込んでいますか。

 

峯氏:当社がまとめた2023 Unity Gaming Reportでは、モバイルゲームのプレーヤー数の成長は続くものの、アプリ内課金(IAP)は軟調であると発表しました。こうした市況においては、今まで以上にマネタイズとユーザー獲得へと積極的に投資し、効率化を図る必要があります。Unityとしては、このようなニーズに対して、テクノロジーだけでなく、インサイトやベンチマークなどを積極的に提供していきたいと考えています。

 

アプリ内ビディングの普及により、あまり運用リソースをかけずともCPMを最大化できる環境が整いつつあります。広告マネタイズ担当者様が今後目を向けるべきは、ユーザー体験や広告体験の向上を通じての広告表示回数の最大化です。当然ながら、やみくもに広告表示を増やしてもユーザーは離れてしまいます。全体的なユーザー体験の一部として広告体験を設計する重要性が今後ますます高まっていくはずです。

 

平田氏:長期タイトルとなったスヌーピー ドロップスは、新規ユーザーの獲得競争が激化するなか、これまで以上に広告の品質管理を適切に行いながら、できるだけ多くのユーザー様にできるだけ長くアプリで楽しんでもらうことで収益を確保するという実直な取り組みを続けていきたいと思います。

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。