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クッキーレス時代を見据えたデジタルマーケティング再考―ATS Tokyo 2023イベントレポート(12)

デジタルメディアとマーケティング業界の有識者が一堂に会し、業界の最新動向についての議論を行うイベント「ATS Tokyo 2023」が12月8日、都内にて開催された。

 

「クッキーレス時代を見据えたデジタルマーケティング再考」をテーマとしたセッションには、社会構想大学院大学 コミュニケーション・デザイン研究科 特任教授 高広 伯彦氏、株式会社講談社 第二事業本部 コミュニケーション事業第二部 部次長 松村 吏司氏が登壇した。

 

松村氏は近年のクッキーレス事情について、女性メディアよりもニュースメディアの方が明らかに大きな影響を受けているなど、メディアごとの違いを述べた。その上でクッキーを利用した広告配信が適切なユーザーへとターゲティングできているかという観点とは別に、そもそも関連した広告が関連したコンテンツに適切に表示されているのかと疑問を呈した。

 

 

この発言を受けて、高広氏は「旅行関連のコンテンツを読んでいるときに、過去に検索していた自動車の広告を出されてもユーザーには響かない。最近のデジタルマーケティングの世界では『レリバンシー(関連性)』に対する意識が低い」と指摘した。

 

「今後期待するテクノロジーはなにか」とのモデレーターの問いかけに対し、松村氏は「コンテクスチュアル」をキーワードとして、「海外のソリューションは日本語の読み解きが苦手であり、Googleも苦労してきた。自然言語処理などのAI活用の出現によって著しい進歩を遂げている領域であるため、今後は広告配信の効果向上に寄与し得るのでは」と期待を寄せた。

 

高広氏は、コンテクストに合わせて広告クリエイティブを自動最適化するDCO(Dynamic Creative Optimization)の日本語環境での機能向上に国内のアドテクベンダーは取り組むべきと発言。さらに、関連性のあるサイトに広告を出稿する仕組みとして、「入力フォームに『~のようなペルソナが~ような状況で閲覧しているサイト』と入力すると示されるサイト群をホワイトリスト化して広告配信できるソリューション」を提案。出面を重視するブランド広告主の需要を満たすソリューションになり得ると述べた。

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 副編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。 ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 日本や東南アジアを中心としたデジタル広告市場の調査などを担当している。