大阪メトロアドエラとPerion Japan、OOH広告の「アテンション」を測定する実証実験で「デジタルサイネージアワード2026」優秀賞を受賞
by on 2026年6月22日 in ニュース

大阪メトロアドエラとPerion Japanは、エステーの協力のもと、OOH環境ごとの広告アテンションと記憶定着率を比較する実証実験を実施し、「デジタルサイネージアワード2026」優秀賞を受賞した。
背景:「量」から「質」への評価指標の転換
2026年6月10日、一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム(DSC)が主催する「デジタルサイネージアワード2026」の表彰式が開催され、「OOH環境ごとの広告アテンション・記憶定着率を比較する実証実験」が優秀賞を受賞した。本プロジェクトは、大阪メトロアドエラとPerion Japanが、エステー株式会社(以下、エステー)の協力を得て実施したものである。
従来の広告評価は「インプレッション(表示回数)」という「量」の指標を基軸としてきたが、本研究はこれを、生活者が実際にどれだけ広告を注視し、ブランドが記憶に刻まれたかという「アテンション(質)」の指標へと再定義する挑戦である。受賞においては、世界的な広告潮流である「質の評価への移行」を、日本独自のメディア環境下で定量化した点が高く評価された。広告主の投資対効果(ROI)に直結する実益的な知見を提示したことが、市場を活性化させるための重要な一石であると認められた。
実証実験の設計:VRとAIによる「視覚体験」の解明
本実験は、現実世界のノイズや生活者の動線を再現するため、VR空間での環境シミュレーションと、最先端のAI解析(Vision Transformerベース)を融合させている。
検証環境は4つのケースを設定した。歩行中の流動的な視覚接触が生じる「駅構内」、滞留時間が長く認知的余裕がある「車内」、歩行と滞留が混在するパブリック空間である「屋外大型ビジョン」、そして家庭内のプライベートな視聴環境である「リビングTV」である。
解析対象には、人間が制作した動画および生成AIが制作した動画の計30本を用い、総計31,500フレームに及ぶAI画像解析を実施した。
主なデータ分析結果
分析の結果、インプレッションという「量」だけでは捉えきれないメディア効果の実態が明らかとなった。
まず、1,000インプレッションあたりの合計アテンション秒数を示す「APM」と記憶定着率の間には、r=0.45〜0.88という極めて高い正の相関が確認された。これにより、APMの最大化がブランド想起を促すためのKPIであることが実証された。
次に、視聴環境によって最適な素材が異なることも判明した。特定の環境で高いパフォーマンスを示すクリエイティブが、他の環境でも同様の結果をもたらすとは限らず、例えばTV環境で高い注視を得た素材が、OOH環境では機能しないケースが見受けられた。制作手法の面では、TV環境では人間制作の動画が優位性を示す一方、屋外ビジョン等ではAIによる「風景の中での目立ちやすさ」が注視を誘発する傾向が確認された。
さらに、初動(冒頭1秒)の戦略性も示された。屋外や車内では冒頭1秒の引き込みが全編の視聴を左右する一方、駅構内では負の相関(r=-0.27)を示した。これは、歩行中の環境では「じっくり見せる」フックよりも、1〜2秒でブランドを認識させる「ワンショット・ブランディング」が必須であることを意味する。
エステー宣伝担当者の受賞コメント
広告主であるエステーの宣伝担当者は、受賞に際して次のようにコメントしている。
「この度は、私たちが参加した実証実験が名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。今回の受賞は、私たちが課題視してきた『アテンション』と『記憶』という質の評価指標の正当性が認められたものと考えております。『ムシューダ』や『消臭力』といったブランドが、TVというプライベート空間と、駅・車内というパブリック空間でいかに異なる視線を集めるのか。また、生成AI制作素材と従来型の人による素材を比較するというアプローチを通じて、媒体とクリエイティブの関係性に基づく差異を可視化できたことは、宣伝担当者として非常に大きな収穫です。この研究で用いられた評価手法・指標が業界標準として整備されることで、単なる露出の積み上げではなく、生活者に寄り添った広告コミュニケーションが進化することを期待しています。」
今後の展望
本実験の成果は、DSCが公開した「OOHアテンション計測ガイドライン(ドラフト)」の実証データとして、業界全体の標準化を強力にバックアップしていくとしている。なお、同ガイドライン(ドラフト)は、DSCサイトにてパブリックコメントを募集(6月30日まで)している。
■プレスリリース:https://osakametro-adera.jp/news/20260615
ABOUT 町田貢輝
ExchangeWireJAPAN 編集担当 日本大学法学部法律学科卒業。編集プロダクション、出版社でエンタメ、健康、IT関連の雑誌と書籍の編集・進行管理に従事。2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。DX領域のメディア運営全般ならびに、調査研究を担当する。








