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「FINAL FANTASY」の世界観を福島への旅のきっかけに――旅行ライト層を動かし、ふくしまDC認知者の検討度85%超を記録したjeki × GumGumの広告設計[インタビュー]

人気ゲーム「FINAL FANTASY」の世界観の中に、福島の桜並木が幻想的に溶け込んでいく。2026年4月から6月にかけて実施された、JRグループ6社と地域の自治体、観光事業者などが一体となり、その地域の魅力を全国に発信する観光キャンペーン「ふくしまデスティネーションキャンペーン」(以下、ふくしまDC)では、ジェイアール東日本企画(以下、jeki)が、スクウェア・エニックス監修のもと「FINAL FANTASY」と福島県の観光地を組み合わせたクリエイティブ「FUKUSHIMA FANTASY」を制作。キャンペーンのスタートを盛り上げるため、2026年3月に駅のポスターやDOOH、デジタル広告を通じて、福島の魅力を幅広く発信した。

 

しかし、ふくしまDCの目的は、コラボレーションを話題にすることだけではない。福島を知ってもらい、「行ってみたい」という興味を生み、最終的には実際の旅行先として検討してもらう必要がある。しかも対象となるのは、もともと旅行への関心が高い人だけではなく、普段は年に1、2回、あるいは数年に1回程度しか旅行をしない人も含めた幅広い生活者だ。すでに旅行先を探している人だけでなく、まだ旅行を具体的に考えていない人の気持ちまで動かすには、どのような接点をつくればよいのか。jekiとGumGumの両社でキャンペーンを担当した4名に、施策設計の背景と、そこから見えてきた新たな可能性について話を聞いた。

(Sponsored by GumGum Japan)

左から、GumGum Account Managerの伊藤ゆかり氏、ジェイアール東日本企画(jeki)コミュニケーションプランナーの小川慶也氏、同社アカウントプロデューサーの早川礼菜氏、GumGum Senior Account Executiveの苅籠毅氏

 

認知を獲得するだけでなく、実際の旅行検討につなげる

 

―まず、「ふくしまDC」の概要を教えてください

 

早川礼菜氏(jeki):デスティネーションキャンペーン (DC) は、JRグループ6社と地域の自治体、観光事業者などが一体となり、その地域の魅力を全国に発信する観光キャンペーンです。

 

2026年4月から6月にかけて実施したふくしまDCでは、福島県の観光地を人気ゲーム「FINAL FANTASY」の世界観と組み合わせた「FUKUSHIMA FANTASY」を企画し、クリエイティブを制作しました。駅のポスターやDOOH、ウェブ広告などを通じて、多くの方に福島の魅力を知っていただくための情報発信を行いました。

 

―今回のキャンペーンでは、どのような課題がありましたか。

 

早川氏: DCは、特定の年代や属性に限定した施策ではなく、幅広い生活者を対象としています。そのため、まずはできるだけ多くの方にキャンペーンを知ってもらう必要がありました。一方で、最終的な目的は、福島の名産品や観光地を知ってもらうことだけではありません。実際に福島を訪れ、現地で過ごしてもらうことです。

 

 

福島の情報に触れてもらった後に、「行ってみたい」「次の旅行先として考えてみたい」と感じてもらえるようなコミュニケーションが必要でした。また、限られた時間の中で施策を組み立てなければならなかったことも、プランニング上の難しさでした。

 

旅行に関心のある人だけを探しても、接点は広がらない

 

―幅広い生活者に向けたデジタル広告は、どのように設計したのでしょうか。

 

小川慶也氏(jeki):広いターゲットへ効率的に広告を届けるという意味では、SNSを含む大手広告プラットフォームが重要な役割を果たします。ただし、今回はそれだけでは十分ではないと考えていました。

 

旅行へ行くかどうかを決めるきっかけは、必ずしも旅行情報を検索しているときだけに生まれるわけではありません。広告に接触するタイミングや、そのときに見ているコンテンツによっても、メッセージの受け取られ方は変わります。過去に旅行サイトを訪れたことがある人や、すでに福島への旅行を検討している人だけを対象にするのではなく、日常の中で旅行や新しい体験への気持ちが動く接点まで可能性を広げたいと考えました。

 

 

また今回は、「FINAL FANTASY」の世界観を演出したクリエイティブだったので、DOOHでの展開が話題となり、ニュースや記事として取り上げられることも想定していました。そうした記事や関連コンテンツに触れている人とも接点を持つために、GumGumを活用しました。

 

―旅行情報を見ている人だけでなく、日常のさまざまな接点まで視野に入れる必要があったのですね。GumGumでは、そうした「旅行への気持ちが動くきっかけ」を、どのように配信設計へ落とし込んだのでしょうか。

 

苅籠毅氏(GumGum):福島や旅行に直接関係するコンテンツだけではなく、生活者が旅行を考え始める背景やきっかけまで視野を広げました。例えば、記念日に合わせて旅行を考える人もいれば、グルメや健康、アウトドア、ドライブに関する情報に触れる中で、「どこかへ出かけたい」と感じる人もいます。

 

 

GumGumでは、こうした旅行への気持ちが動き得る瞬間を、コンテンツの内容だけでなく、デバイスや配信環境など、そのときに得られるさまざまなシグナルから捉えています。その判断を支えているのが、独自のAIデータエンジン「Mindset Graph™」です。

 

今回も、旅行や福島といった直接的なテーマに限定せず、キャンペーンの目的やクリエイティブとの相性を見ながら、接点となり得るコンテンツテーマを探っていきました。重要だったのは、「旅行に関心がある人」という固定された枠の中だけで対象を探すのではなく、旅行や新しい体験を受け入れやすい瞬間を捉えることでした。

 

ゲームの話題で終わらせず、福島への興味につなげる

 

―今回のクリエイティブを届ける上では、どのような点を重視しましたか。

 

苅籠氏:今回のクリエイティブには、「FINAL FANTASY」の世界観と福島の観光地が融合した、非常に印象的な映像が使われています。

 

その世界観を小さな広告枠の中に収めるのではなく、映像の魅力を十分に感じてもらえる形で届けたいと考え、縦型フルスクリーンの広告フォーマット「Hangtime」を提案しました。単に情報を提示するのではなく、スマートフォンの画面全体を使い、クリエイティブの世界に触れる一つの体験として届けることを目指しました。

 

伊藤ゆかり氏(GumGum):動画の冒頭では、まずふくしまDCのロゴが表示され、そこから「FUKUSHIMA FANTASY」が広がっていきます。さらに、喜多方市のしだれ桜並木をはじめとした福島県の観光地へと映像が展開していく構成になっていました。

 

 

実際の計測結果を見ると、ふくしまDCのロゴが表示され、そこから世界観が立ち上がっていく導入部分に、特に注目が集まっていました。ゲームとのコラボレーションを印象に残すだけではなく、最初に福島のキャンペーンであることを明確に伝えた上で、観光地の魅力へと導くクリエイティブの構成が、狙いどおりに機能したと考えています。

 

CTRは事前想定の3倍。より大きく動いた旅行ライト層

 

―キャンペーンの結果をどのように評価していますか。

 

早川氏: CTRは、事前にシミュレーションしていた数値の約3倍となりました。今回のクリエイティブ自体が非常に目を引くものだったため、ほかの媒体も含めて全体的に好調でしたが、その中でもGumGumの結果は際立っていました。非常に満足しています。

 

 

伊藤氏:Hangtimeは、クリックだけを目的とするのではなく、フルスクリーンでクリエイティブをしっかり見てもらうことを重視したフォーマットです。そのため、CTRが事前想定の3倍になったことは、非常に良い結果だったと捉えています。また、広告が見られた時間も一定の基準となる2.4秒を上回りました。

 

ブランドリフト調査では、認知度、興味度、魅力度、検討度などの項目が、平均で約5%上昇しています。

 

―特に特徴的だった結果はありますか。

 

伊藤氏:旅行頻度が年に1、2回、あるいは数年に1回程度の旅行ライト層において、興味度、魅力度、検討度が約10%伸びたことです。もともと頻繁に旅行をしている人だけではなく、普段は旅行が最優先の選択肢ではない人にも、福島を次の旅行先として意識してもらえた可能性があります。

 

 

今回の調査では、ふくしまDCを認知した人の広告接触後の検討度は85%を超えました。まずキャンペーンを知ってもらうことが、その後の興味や旅行先としての検討につながる可能性を示す結果だったと考えています。

 

旅行への気持ちは、旅行情報の外側でも動いている

 

―配信したコンテンツテーマによって、結果に違いはありましたか。

 

苅籠氏:旅行に直接関連するテーマだけではなく、健康やグルメに関連するコンテンツでも良い結果が見られました。旅行先を積極的に探している人だけでなく、日々の生活の中で食や健康、新しい体験に関心を持っている人にとっても、福島の魅力が受け入れられる可能性があることが分かりました。

 

旅行への気持ちが動く入口は、必ずしも旅行情報の中だけにあるわけではありません。

 

小川氏:GumGumを活用することで、SNSの中で情報収集を完結させる人とは異なる、ウェブ上の記事やコンテンツを閲覧している人にも接点を広げることができました。また、旅行やゲームといった直接的なテーマだけでなく、ウェルネス関心など、旅行につながる可能性のあるテーマを具体化できたことも、今後の施策に生かせる発見でした。

 

一方で、こうして見えてきた新たな潜在層に対し、どのようなメッセージを届ければ、実際の鉄道旅行や福島への訪問につなげられるのか。そこは今後、さらに考えていきたい課題です。

 

広告の成果だけでなく、次のコミュニケーションにつながる発見を

 

―今回の取り組みから、広告代理店としてどのような学びを得ましたか。

 

小川氏:広告の成果を評価する上では、閲覧数やクリック率などの指標が長く使われてきました。一方で、それだけでは、クリエイティブのどの部分に注目が集まり、どのように受け取られたのかまでは分かりません。今回のように、映像のどの場面が見られたのかを確認できれば、重要なメッセージをどのタイミングで提示すべきかなど、次のクリエイティブ制作に活かせる学びが得られます。また、当初は想定していなかったコンテンツテーマで潜在層が見えたことも、大きな収穫でした。

 

 

こうした発見は、次回のデジタル広告を改善するためだけのものではないと考えています。どのようなメッセージや表現が人の関心を引いたのか、新たにどのような層や関心との接点が見えたのかという学びを、デジタルの枠を超えて、今後のメディア選定やクリエイティブ制作、顧客接点の設計にも活かしていきたいです。

 

GumGumを一つの配信先として捉えるのではなく、そこで得られた生活者への理解を、コミュニケーション全体の戦略へ還元していく。誰に、どのような接点で、どのようなメッセージを届けるのかを考える上で、今回の取り組みは今後にもつながる示唆を得られたと感じています。

 


 

ふくしまDCでは、すでに旅行先を探している人だけを対象にしたのではない。日常の中で食や健康、アウトドア、ドライブなどに関心を寄せる人が、「どこかへ出かけたい」と感じる可能性のある接点まで視野を広げた。そして、「FINAL FANTASY」と福島の風景が融合したクリエイティブを、その世界観を生かせる形で届けることで、ゲームへの関心を福島への興味へとつなげていった。結果として、旅行頻度の高い人だけではなく、普段はあまり旅行をしない人の興味や検討まで大きく伸びた。

 

旅行のきっかけは、旅行情報に触れているときだけに生まれるとは限らない。生活者の関心が動く瞬間を捉え、そのときのマインドセットに合う体験を届けること。それが、まだ具体的な旅行を考えていなかった人にとって、福島を新たな選択肢に変えるきっかけとなった。

 

 

クリエイティブ監修:株式会社スクウェア・エニックス

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 共同編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。