「ゼロクリック検索」をいかに解析するかー独自データ保有のSimilarwebに聞く[インタビュー]
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主に自社サイト解析に用いられるGoogle Analyticsなどとは対照的に、これまで競合サイトの分析ツールとして利用されてきたSimilarweb。生成AIの勃興に伴い増加しつつあるゼロクリック検索の増加を始めとする環境変化に同社はどのように向き合っているのか。来日したJAPAC市場責任者と日本のカントリーマネージャーに話を聞いた。
イスラエル発のデータ企業
―自己紹介をお願いします。
デラペーニャ氏:アジア太平洋及び日本市場のゼネラルマネージャーを務めるアムリタ・デラペーニャと申します。世界的なメディア・コングロマリットであるニューズ・コーポレーションのインド、香港、英国、欧州支社で勤務した後、シンガポールのデジタルマーケティング企業に転職しました。その後、Twitter(現X)に移り、当時急速に拡大していた日本市場を含むアジア太平洋地域を管掌していました。Sprout Social、Outbrainを経て、約8カ月前より現職に就いています。
小山氏:日本及び韓国市場のカントリーマネージャーを務める小山拓哉です。楽天で広告関連の営業や商品開発を担当した後、Appier Japanで営業責任者を務め、次にオフラインの購買データを活用するカタリナマーケティングジャパンでデジタルソリューションの責任者を担当しました。その後はOutbrain Japan及び同社と合併したTeadsで営業責任者を務めるなど、一貫してデータを用いたマーケティング支援業務に従事してきました。
―改めて貴社の事業紹介をお願いします。
デラペーニャ氏:Similarwebはイスラエル発の企業であり、2007年の創業から収集してきたデータをもとに複数のSaaSプラットフォームを運営しています。競合サイトの分析機能に加えて、様々な切り口でリアルタイムの市場情報、競合分析、消費者トレンドなどに関するデータやインテリジェンスを提供しています。
ユースケースは実に多様です。顧客の中には、不正アクセスの検知目的で利用している海外の政府機関が含まれます。新規モデルの開発を企画するに当たり、競合社の類似モデルの在庫量の推計にご利用いただいている事例もあります。また直近では最先端のAI技術を取り込んだ新規プロダクトを次々と発表しています。
独自パネルデータに強み
―貴社はどのようなデータを保有しているのですか。
デラペーニャ氏:主にダイレクト計測に基づくパネルデータを最大の強みとしています。許諾したオンラインユーザーからブラウザ拡張等を通じて取得したオンライン行動データに基づく統計モデリングが主な基盤です。また他のデータ企業とも提携しており、併せて1億以上のウェブサイトをカバーし、100億を超えるコンテンツデータを解析しています。これらのビッグデータから収集したデータをもとに各種のデータを提供しています。
小山氏:保有するサンプル数は中国とインドを除いた全世界のオンラインユーザーの約1%に相当します。この割合は日本市場ではさらにやや高いです。多くのクライアント企業様より、事実上の自社データとなるGoogle Analyticsの数値と、他社データを含めて表示するSimilarwebのダッシュボード上に表示される数値がかなり相似しているとして、データの正確性についてのご評価をいただいています。
―日本市場における貴社の事業規模をお聞かせください。
小山氏:当社が日本市場に進出したのは2014年7月で、2018年3月に日本事務所を開設しました。現在は国内の数百単位に及ぶ企業様とお取引があります。広告代理店様やコンサルティング企業様または自動車企業様や小売企業様などが競合分析または市場分析などを行うことを目的としてご利用いただいています。中小企業様のご利用も多く、実データに基づく競合分析や業界分析は事業規模や業種・業態に関わらず、根強い需要があると認識しています。
日本事務所の社員数は現在約20名であり、直近では韓国市場へのアプローチを併せて強化しています。
ゼロクリック検索対策とは
―「最先端のAI技術を取り込んだ新規プロダクト」とはどのようなものですか。
デラペーニャ氏:一例として、「MCP(Model Context Protocol)」や「AI Studio」といったソリューションが挙げられます。いずれもChat GPT、Gemini、Claudeといった対話型生成AIサービスの形式で、プロンプトを入力すると、求めるデータやインサイトが表示されます。
従来であれば、参照するデータや表示させたいグラフの種類ごとに各種のボタンを探すか位置を覚えた上でクリックする必要がありましたが、より直感的かつ効率的にデータを抽出することが可能になりました。
資料提供:Similarweb
資料提供:Similarweb
小山氏:MCPは、Chat GPTやGeminiと接続することで本機能を提供しています。一方で企業様によっては情報セキュリティやプライバシー遵守などを理由にこうしたプラットフォームの利用を禁じている場合もあるので、その際にはAI Studioが当社プラットフォームとの環境内で同様の機能を提供します。
API連携を通じてその他様々なデータと連携させることができるので、例えば国内大手自動車企業様は、マーケティングデータ、顧客データ、広告データなどを統合して統計モデリングを構築し、競合分析や顧客分析などにご活用いただいています。
―生成AIの活用が進む一方で、AI検索の普及によるサイトへの検索流入の減少が問題視されています。
デラペーニャ氏:当社はウェブやアプリ上だけでなく、生成AI上の行動データも扱っています。いわゆるSEOに特化した分析ツールではなく、デジタル行動を広く捉えるプラットフォームであるがゆえに、AI検索にも対応している点が大きな特徴の一つとなっています。
小山氏:AI検索で完結してしまい、各サイトに遷移しないゼロクリック検索が取り沙汰されていますが、実はAIが推薦した商品やサービスはコンバージョン率が高い傾向にあります。よってECサイトなどでは、流入が減ってもコンバージョン率が上昇するという現象が起きています。
当社のプラットフォームを使えば、例えばChatGPT上でどのような検索が増減しており、またどのような回答が提示されているかを把握することができます。そしてその回答を提示する上でどの引用元サイトを参照し、それぞれのサイトにおいて「品質は良いが価格が高い」「配送が遅い」といったようにどのように自社商品・サービスが評価されているかを分析することが可能です。その上で、AIにどのように引用または推奨させるかという対策を立てることができます。
―具体的にはどのような対策を取り得るのでしょうか。
小山氏:従来のアフィリエイト的なマーケティングを見直す必要があると思います。リスティング広告ではサイトへ誘導するために一定の費用を支払っていましたが、AIのレコメンド自体には広告料は発生しません。代わって必要なのが、自社の業界内でのポジショニングを把握した上で、なぜAIにレコメンドされるかまたはされないかを理解し、対策を講じることです。
今後は自社サイトの最適化やSEO対策だけでなく、自社に対して好意的な外部ソースを見つけ出し、その情報源に基づきAIに好意的にレコメンドしてもらう状態を構築することが重要になります。
―日本市場の課題及び展望をお聞かせください。
デラペーニャ氏:Twitter在職時から日本市場は非常にユニークだと感じていました。独自の商慣習があるためなのか、いわゆるプラグアンドプレイ型と呼ばれるグローバル展開するSaaSがうまく機能しないことが多いと理解しています。一方でTwitterやSalesforceのように日本市場に対して徹底的にローカライズした企業は成功しています。
当社は、AIを切り口として日本市場へのローカライズを徹底的に進めていきます。日本市場はAIに投資する企業が多く、労働人口が減少しており、データサイエンティストに不足しがちだが、テック分野は強く、デジタル化が急速に進んでいます。この独特の市場環境ならではの需要にきめ細かく対応していきたいと思います。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 共同編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。








