iOS上のターゲティングと未来型コマースで差別化-InMobi独自の戦略とは[インタビュー]
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幾多の事業者がひしめくオープンインターネット上の広告配信には、他社とは一線を画す尖った技術を持つことが求められる。AdAttributionKitという正規の手法をフル活用することでiOSユーザーへのターゲティング可能なDSPに加えて未来型コマースという、まさに尖った、しかも二つの全く異なるプラットフォームを有するのがInMobi社だ。来日した同社の最高ビジネス責任者に話を聞いた。
(Sponsored by InMobi)
上写真:JustCo GranTokyo South Towerにて撮影
SKANに基づく独自のターゲティング技術
―自己紹介及び貴社の事業紹介をお願いします。
InMobiの広告事業部門とAIによるショッピング体験を提供する当社独自のエージェンティック型ショッピングプラットフォーム「Glance AI」の責任者を兼任するクナル・ナグパと申します。
当社はInMobi DSPやInMobi Exchangeを含む複数の広告プラットフォームを提供しています。InMobi ExchangeについてはThe Trade Desk、DV360、Amazon DSPなど主要なプラットフォームと接続することで既に世界中で利用されており、2026年以降は日本市場のバイサイド関係者との直接的な連携を強化していく予定です。
またB to Bとなる広告事業とは別に、B to C事業に該当するAIを活用したエージェンティック型ショッピングプラットフォームとなる「Glance AI」の運営も行っています。
東京オフィスには現在20名ほど在籍しており、モバイルアプリ向けのユーザー獲得やリターゲティング支援及び当社に出資するソフトバンク株式会社を始めとするパートナー企業様との連携促進などに注力しています。
―DSP市場には既に多数のプレーヤーが存在します。貴社の強みは何でしょうか。
DSP市場自体は確かにコモディティ化していますが、iOSでの広告配信について深い専門性を持つ企業はAppleを除くとほぼいません。そして、このiOSこそがまさに当社の得意領域であり、LTVの高いiOSユーザーを対象としたターゲティング機能を提供しています。
AppleがSKAdNetworkをリリースした際に、業界は「フィンガープリントなどの回避策を見つける」と「SKAdNetwork(現AdAttributionKit)の枠組みの中で最大限の成果を出す」という二つの対照的な選択肢のいずれかを選ぶことを迫られました。そして当社は、ユーザーのプライバシーを保護するという大前提に立ち、あえて一般的には広告配信規模が限定されてしまう後者の道を選んだのです。そしてこうした制限下においても十分な広告配信規模を確保できるまでに技術を磨き上げました。
―iOSを得意領域とするということは、広告在庫はアプリ配信面が主となるのでしょうか。
創業から18年の歴史を持つ当社は、そのうち17年間はアプリ広告配信をほぼ専業としてきました。アプリこそが消費者が最も時間を使う場所であると確信していたからです。社内外から配信面を多様化すべきという意見を耳にしても、私はアプリだけに集中すべきだと考えていました。
しかしながら、現代の広告主はデジタル配信において200社近くのパートナーと連携する必要があります。InMobiがアプリだけでなくウェブやCTVにも配信面を広げることで、広告主の負担の軽減に繋がると考えを改め、多様な配信面の統合に踏み出しました。また近年ではCTVの重要性も飛躍的に増しました。よって今ではウェブやCTVにも対応しています。
JustCo GranTokyo South Towerにて撮影
―Glance AIと呼ばれる新規プラットフォームの概要を教えてください。
Glance AIは、消費者に高度に関連性のあるコンテンツやショッピングのインスピレーションを提供する、AIを活用した当社のエージェンティック型ショッピングプラットフォームです。
その中核にあるのは、ユーザーの意図を理解し、最適なコンテンツ体験をリアルタイムで提供するLLM(大規模言語モデル)ベースのシステムです。主な機能は2つあります。
まず一つが「未利用資産」の活用。現状では全くの「未利用資産」と化しているスマートフォンのホーム画面に関連性が高くパーソナライズされたコンテンツを提示します。日本ではシャープ社が製造するスマートフォンのロック画面にネイティブ統合しました。またアプリとしても提供しており、AndroidとiOSの双方で利用可能です。
さらに主要なTV事業者との提携を通じて同じく「未利用資産」と化しているCTVのスクリーンセーバーにも最適で、購買意欲を掻き立てるようなコンテンツを表示しています。
ー未利用かつ最も目を引く資産ということですね。
数十単位のアイコンの中から利用するアプリを選び出すという仕組みはそろそろ限界を迎えてきたと思います。当社としてはいずれGoogleやApple等もホーム画面を活用した同様のソリューションを大々的に展開してくるのではないかと想定しています。
もう一つの大きな特徴は、Eコマースプラットフォームとしての機能も持ち合わせているということです。例えば、今年大きな注目を集めたロサンゼルス・ドジャースの山本由伸選手のハイライト映像を見て、「ドジャースの公式ユニフォームを着てみたい」と思ったとしましょう。Glance AIは、ユーザーがそのユニフォームを着た姿を表示し、しかもワンタップで購入することができます。
従来であれば、MLB公式ストア訪問→ロサンゼルス・ドジャースのページを探す→商品を探す→サイズを選ぶ→カートに入れる→決済情報を入力するという手続きを必要としていたプロセスが、わずか数秒で完結します。
我々は過去20年にわたり「Googleの検索結果として数百万単位のリンクが表示される」という世界を生きてきましたが、今やChatGPTが登場したことで、リンクではなく、答えそのものが返ってくるようになりました。つまり自分の疑問を適切に伝えることさえできれば、その答えを得るのにスクロールやクリックはもはや不要です。Glance AIを通じて、Eコマースでも同様の世界を構築したいと考えています。
―2つの主要な機能はどのように関係しているのですか。
Eコマース機能においても大規模言語モデルに基づき極めて関連性の高いコンテンツを表示することができます。例えば、「今日は火曜日」「東京は雨」「都心のオフィスを訪問予定」といった状況を踏まえて、「今日のあなたはこういう服装が最適です」という提案をしてくれると同時に他の候補もいくつか提示してくれます。そして気に入った提案をクリックすると、その服を着た自分の姿を合成した画像が表示され、サイズを自動判定してそのまま購入することが可能です。
Glance AIの表示画面例
つまり、サイズを調べる必要も、試着する必要もない。時間を1秒も無駄にしないこの買い物体験を一度でも経験したら、従来の購入プロセスには戻ることができなくなるでしょう。逆にマーケターにとっては、①購入率の大幅な上昇、②新たなオーディエンスの発掘、③とりわけZ世代の感覚にフィットするエンターテイメントの提供といった利点を得ることができます。
CTVをブランディングとダイレクトレスポンスの両方の目的において活用できることを私たちが実証したいと思います。
―今後の事業展開をお聞かせください。
まずはGlance AIのユーザー数を世界で5億人規模にまで拡大したいと思います。
また2026年は、日本市場において当社の事業体制とプロダクトがすべて揃う年となると考えています。今回の日本出張においても、公共交通機関で移動するなどして、できる限り日本の消費者の行動をつぶさに観察することに努めました。
これまで日本市場では、主にDSP事業を軸に展開してきましたが、アドエクスチェンジ事業そしてGlance AIが揃ったことで、統合的かつ極めてユニークなマーケティングソリューションを今後は提供していく予定です。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 共同編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。






