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プログラマティックDOOH取引の「ヘルシー化」がもたらす変革。アドエラとLIVE BOARDが実現する、信頼されるプラットフォームの条件【インタビュー前編】

OOHのデジタルシフトが進み、広告主にとっては多様な表現を通じた効果的な広告配信が可能となってきた一方で、メディアオーナー(媒体社)にとっては販売チャネルや広告収益の拡大が、引き続きの課題となっている。デジタルOOH広告配信プラットフォームを運営する株式会社LIVE BOARDと、Osaka Metro Groupの広告事業を担う株式会社 大阪メトロ アドエラの担当者に、OOHにおけるプログラマティック取引の現在について話を聞いた。

(Sponsored by LIVE BOARD)

※インタビュー出席者の名前・所属等は次のとおり。
(写真右)宮本佳直氏:株式会社 大阪メトロ アドエラ デジタルソリューション部 部長補佐 兼 マーケティング室
(写真中)福永奈津子氏:株式会社 LIVE BOARD メディア部 リーダー
(写真左)アルバダウィアハメド氏:株式会社 LIVE BOARD クライアントサービス部 リーダー

 

DSP経由でのプログラマティック取引と自社主導のインプレッション販売の両軸で広告主ニーズに応える

―まずは、これまでの2社のお取組みについて簡単にお聞かせください。

宮本氏:2022年9月より、新たな収益チャネルの創出を目的に、当社が所有する駅構内のデジタルサイネージをLIVE BOARDマーケットプレイスに接続し、DSP経由でのプログラマティック取引(SSP商流)を開始しました。当初は梅田駅、なんば駅などのOsaka Metro主要駅に設置されている「Osaka Metroネットワークビジョン」(合計261面)から接続を開始し、現在では「心斎橋コンコースビジョン」「本町ステーションサイネージ」へも接続を拡大しています。

 

さらに2024年12月からは、LIVE BOARD様のアドサーバを活用した自社主導のインプレッション販売(アドサーバ商流)もスタートし「SSP商流」と「アドサーバ商流」という 2つの販売経路を確立しました。

 

これら取り組みにより、従来の純広告に加えて、SSP商流とアドサーバ商流の両軸で媒体価値を提供できる体制が整い、より多様な広告主ニーズに応えられるようになっています。


 

 

―具体的にはどのように使い分けをされているのでしょうか。

宮本氏:SSP商流は、LIVE BOARD様の営業力を生かした全国展開が可能なため、ナショナルクライアントを中心とした大型案件をいただいていると認識しています。また、アドサーバ商流は、アドサーバの活用により指標が統一されたほか、価格や商品設定も柔軟に対応可能な設計になっているため、大阪エリアに特化した案件にも対応できています。

 

―取り組みのきっかけや狙い、抱えていた課題感などについて教えてください。

宮本氏:LIVE BOARD様との取り組み以前、2020年のコロナ禍による外出規制の影響もあり、多くの広告主がOOH広告への出稿を控えていたのと同時に、ウェブ広告との対比から、OOH広告が以前より指摘されていた「効果計測指標の不在」に対する課題意識が一層高まるなど、業界全体として大きな転換期を迎えていました。

 

当社も新たな商流を開拓するために、自社開発プラットフォームによるインプレッション販売に取り組み始めましたが、自社商品を対象にエリアも大阪のみ、という限定された商品・エリアでスタートし、プログラマティックDOOH(pDOOH)の事例も多くなかったため、当初は需要の広がりも一定の範囲に留まりました。ただ、弊社のpDOOHの取り組みに対して、ポジティブな意見もたくさんいただくことが出来ました。

 

こうした背景を踏まえ、日本全国に配信面を持つLIVE BOARD様との連携を進めた結果、これまで純広告では接点の少なかった企業様からのご出稿も増え、新たな需要の獲得につながっているので、LIVE BOARD様にはとても感謝しています。

 

―「LIVE BOARDマーケットプレイス」における、メディアオーナー(媒体社)プラットフォームの現在のお取組み状況も併せてお願いします。

福永氏:LIVE BOARDは2019年2月1日に設立され、日本で初めてインプレッションベースのOOH広告取引を実現しました。取り扱っている広告媒体には全てインプレッション(視認者数)を付与しており、その定義は、国際団体であるWorld Out of Home Organization(WOO)の基準に基づき、視認機会と視認率を加味したVAC(※)を採用しています。

※ LIVE BOARDは、OOHグローバルメジャメントガイドラインにて推奨されている、視認調査に基づく視認率を加味したインプレッション(VAC=Visibility Adjusted Contact / のべ広告視認者数)を採用しています。媒体の視認エリアの中にいる人数(OTS=Opportunity to See)のうち、OOH広告に接触する可能性のあるのべ人数(OTC=Opportunity to Contact / 視認エリア内での移動方向や障害物の有無を考慮)を定義。この数に媒体に応じた視認率を加味することで、実際に広告を視るであろうのべ人数(VAC)を推計しています。

 

LIVE BOARDが運営するデジタルOOH(DOOH)広告配信プラットフォーム「LIVE BOARDマーケットプレイス」では、SSPとDSPの両方のプラットフォームを提供しており、買付から配信までワンストップで実施が可能です。媒体社様のメディアをSSPへ接続いただくと、広告を実際に視認したと推定できる人数に基づくインプレッション(VAC)を用いた取引が可能となります。

 

現在では、屋外、駅構内・車両内、タクシー、商業施設など様々なメディアをLIVE BOARDマーケットプレイスに接続いただいており、全国に60,200面以上(※2026年2月時点)の配信面を一元的に提供しています。

インプレッション単価は媒体社が設定

―LIVE BOARDマーケットプレイスでのpDOOH広告配信について、インプレッション単価の考え方や、インベントリ(広告在庫)の拠出状況などについて教えてください。

福永氏:前提として、インプレッション単価の設定については、媒体社様の専権事項となっていますので、弊社から単価をご指定することはございません。

 

そのうえで、媒体社様から弊社へ単価設定に関するご相談をいただくケースもあります。特に初めて連携される際は1番悩まれるポイントかと思いますが、単価設定などについてはこれまでの実績や知見もあくまで参考情報としてご共有が可能となっておりますので、そういった点も踏まえて、媒体社様にて単価を決定されます。

 

宮本氏:福永様のお話の通り、単価の決定権に関してはアドエラに一任いただいております。導入当時はすでに、自社開発プラットフォームによるインプレッション販売を行っていたため、純広告の金額をベースに設定していた単価を基準としていましたが、そこと大きな乖離は出ないようにしながらも、LIVE BOARD様から提供された知見や相場を参考にしつつ、設定をし直しました。

 

アハメド氏:LIVE BOARDでは、質の高い広告在庫の供給に取り組んでいます。バイヤーの皆様には、デジタル広告に近い配信単位で分かりやすく、安定して買い付けていただき、通期での拠出も増加しています。

 

媒体社様から長期的・安定的にインベントリを拠出いただくことで、バイヤーが安心してキャンペーンを設計できる環境が整いつつあります。結果として、pDOOHの利用機会が増加し、媒体社・広告主双方にとってメリットのある好循環が生まれています。

 

―他のマーケットプレイス(SSP/DSP)との違いや、媒体社・広告主にとってのメリットはどのような点にありますか?

福永氏:LIVE BOARDには、広告主様・広告代理店様・DSP事業者様等のバイヤー側と向き合い、広告在庫の販売を行っているクライアントサービス部や、広告効果検証・データ分析や新しいロジック開発を行っているインサイト部など、広告在庫の販売促進を担当している部署があります。

 

例えば、OOHの効果検証ではアスキング調査(アンケート・インタビューによる調査)が行われることが一般的ですが、インサイト部では効果検証の高度化を目指し、ログベースでの検証を積極的に推進しています。こちらは、個人を特定しない形で広告接触者をID単位で把握し、実際の来店率や購買率、サイト来訪率、アプリダウンロードや起動につながったか等を検証することができます。

 

「ヘルシー化」で信頼されるプラットフォームに

―アドエラとは「ヘルシー化」にも取り組まれていますが、この言葉が意味するところとそのメリットについて教えてください。

福永氏:LIVE BOARDでは、プログラマティック取引を活性化させるための重要な基盤づくりとして、長期的な視点で「ヘルシー化」という施策に取り組んでいます。

 

一般的なデジタル広告の世界では、1回の表示ごとにリクエストが発生する「1アドリクエスト=1表示」の仕組みが標準的です。一方で、OOHには構造的・運用上の背景から、1回のアドリクエストに対して複数回の放映が紐づく仕組みや、アドリクエストの頻度が1時間に1回程度に設定されている媒体が多く存在します。

 

「ヘルシー化」とは、こうしたDOOHの取引環境を整え、デジタル広告の標準的な仕様に準拠した「1アドリクエスト=1放映」という形態を確立することを指します。

 

マーケットに対して広告在庫を安定的に供給しながら、アドリクエストをより細分化(高頻度化)させていく。これにより、バイヤーがウェブ広告と同様の柔軟さで、必要なタイミングに安心してDOOHをプランニングに組み込める環境を目指しています。

 

この取り組みにより、媒体社様にとっては「安定した収益の確保」と「新たな収益機会の創出」が可能になります。さらに、このヘルシー化が進むことで、国内外の広告主様からも“使いやすく、信頼できるプラットフォーム”として評価され、グローバル案件や大規模キャンペーンの受注にも好影響をもたらすことが期待されています。

 

アハメド氏:OOHにはさまざまな運用仕様があり、アドリクエストの頻度が1時間に1回に固定化されている媒体も存在しますが、pDOOHが進んでいる海外の代理店を中心として「これではpDOOHではなく純広告に近いね」と言われることもありました。

 

アドリクエストの高頻度化でウェブ広告と近い感覚で購入が可能となり、そのための枠の提供・連携もアドエラ様にはご協力いただいているので、営業としては非常に提案がしやすい媒体だと感じており、大変心強いですね。

 

宮本氏:LIVE BOARD様との取り組みで販路は大きく広がりましたが、それと合わせて、バイヤーが買おうと思った時に買える媒体である必要があります。ヘルシー化は媒体社としても恩恵は非常に大きいです。

 

1媒体社ごとで見ると、それぞれが持っている在庫量というのは決して多くないため、在庫を有効活用できるかは各社にとって、pDOOHにおける最大のポイントになります。そこをヘルシー化していただいたことで、以前よりも柔軟な配信が可能となりました。

 

―LIVE BOARDマーケットプレイスとの連携を進められている一方で、アドエラが保有・運営されている媒体の中には、純広告のみで販売されている媒体もあるかと思います。媒体ごとに、プログラマティック取引へ商流を広げている理由、また純広告のみに限定している理由があれば教えていただけますか。

宮本氏:プログラマティック取引への商流拡大を行うか否かは、各媒体のエリア特性や販売仕様の適性を鑑みて判断しています。よって当初は、特定の駅でジャック展開が可能な媒体ではなく、「複数駅を束ねてネットワーク展開できる媒体」からプログラマティック取引を開始しました。その理由は大きく2つあります。

 

1つ目は、ネットワーク媒体ならではのエリア網羅性です。
プログラマティック配信は、時間・場所・予算などを柔軟に設計できる点が最大の魅力です。そのため、広告主の多様なニーズを取り込むには、できるだけ多くの配信面を用意し、さまざまなターゲットや導線に対応できるネットワーク構造が重要だと考えました。

 

2つ目は、在庫の安定供給が可能であることです。
単駅サイネージは“一社買切(ジャック販売)”での活用価値が高く、非常に分かりやすいこともあり人気な商品ですが、ロール開放は一社買切が入らなかった後になるため、枠の供給性としては不安定で広告出稿のリードタイムも短いです。一方、ネットワーク媒体はロール販売を基本としていることから、運用上の調整余地が確保しやすく、プログラマティック向けの連携枠を比較的安定して確保できる点が適していました。

「Osaka Metro ネットワークビジョン」はOsaka Metroの主要駅にて展開

アハメド氏:私たちは、純広告とプログラマティック広告にはそれぞれ異なる良さがあると考えています。

 

純広告はジャック販売などによって空間を独占し、強いインパクトで訴求できる点が大きな魅力です。また、海外クライアントには駅広告をジャックしている写真をSNSにあげることで、国内外向けの更なるPRを図るクライアントも多いです。一方でプログラマティック広告は、期間・時間・配信スクリーンなどを柔軟に調整しながら実施できる点が強みで、目的に合わせて効率的な配信が可能になります。

 

それぞれに良さはありますが、今後は純広告とプログラマティック広告を融合させたプランニングにも可能性を感じています。

 

例えば、純広告と同じ商品をLIVE BOARD経由で配信できるようになれば、プログラマティック配信と同様にインプレッションや接触者レポートも提出できるようになると思います。そうした仕組みが実現すれば、純広告+プログラマティック広告を組み合わせた広告設計や、レポートの一元化も可能になり、広告主様にとってよりDOOHを活用しやすくなると考えています。

ABOUT 柏 海

柏 海

ExchangeWireJAPAN 副編集長

日本大学芸術学部文芸学科卒業。 在学中からジャーナリズムを学び、大学卒業後は新聞社、法律・情報セキュリティ関係の出版社を経験し、2018年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。デジタル広告調査などを担当する。