新世代のシゴト観-「まずやってみる」から始まった、マーケティングチーム立ち上げへの挑戦:ジーニー・原本真希氏
by on 2026年10月14日 in ニュース

アドテク業界で働く広報・マーケティング担当者は、専門性の高い業界用語と向き合いながら、自社のプロダクトやサービスを、顧客をはじめとするさまざまなステークホルダーに分かりやすく伝えていくことが求められる。彼らはどのような価値観を持ち、日々の仕事に向き合っているのか。
アドテク業界の広報・マーケティングを担う人々へのインタビューを通じ、そのリアルに迫る。
第10回は株式会社ジーニーでGENIEE SSPをはじめとするパブリッシャー向けサービスのマーケティングを担当する原本真希(はらもとまき)氏にお話を伺った。
(聞き手:ExchangeWire JAPAN 加納 奈穂)
担当領域は「マーケティングに関わる仕事ほぼ全部」
原本氏はジーニーのサプライサイド事業部に所属し、GENIEE SSPを中心に、パブリッシャー向けプロダクトやサービスのマーケティングを担っている。
担当領域はケーススタディの制作、オフラインイベントやウェビナーの企画・運営、広告運用、LP制作、メール施策、プレスリリースの作成など多岐にわたり、「マーケティングに関わる仕事をほぼ全部」を担当しているという。
また、国内だけでなく、インドや東南アジアのチームとも連携している。クリエイティブ制作を海外のデザイナーに依頼したり、施策の進行や数値を管理したりする機会も増え、英語で行われるミーティングも日常の一部だ。
現在の大きなミッションは、新規開拓を担う営業チームと連携し、ジーニーと新たに接点を持つパブリッシャーを増やすこと。すでに多くのメディア企業と取引がある一方、まだ接点を持てていない企業もある。そうした企業に対しプロダクトの情報をどう届け、知ってもらい、商談につなげていくか。それを考えるのが原本氏の役割である。
マーケ未経験。前例もない。でも全力でやり抜く。
原本氏の仕事内容を見ると、もともとマーケティングを専門に学んできたようにも見えるが、キャリアの出発点は営業だ。2023年に新卒でジーニーへ入社し、パブリッシャー向けサービスを担うサプライサイド事業部での新規営業、既存営業を経験。その後、マーケティングチームの立ち上げを任された。
当時、サプライサイド事業部には専任のマーケティング担当が存在していなかったという。原本氏自身もマーケティングは未経験。「誰も正解が分からない状態だった」と振り返る。
だからこそ「まずやってみること」と「いろいろな人に相談すること」を心がけ、社内の別事業でマーケティングを担うメンバーに話を聞いて回った。自分でも試し、うまくいかなければ次の方法を考える。試行錯誤を重ね、少しずつ自分なりの仕事を形にしていった。
そもそも原本氏には、営業時代から感じていた課題があった。
「自社には良いプロダクトやサービスがあります。でも、ずっとマーケティングをしてこなかったので、まだ利用していないパブリッシャー様から見たジーニーのイメージと、実際に自分たちが提供できる価値にはギャップがある。その差を埋めたかったです」
その思いが未経験の業務への異動を前向きに受け止める理由にもなったという。
BtoBマーケの「定石」が、そのままでは通用しない。
サプライサイド領域のマーケティングには独特の難しさがある。市場が成熟しているうえ、ターゲットとなる企業や担当者の母数も決して大きくないのだ。企業によっては広告マネタイズの担当者が1、2人というケースもあり、一般的なBtoBマーケティングで良しとされる施策を当てはめても、期待した結果にならないことがよくある。
原本氏自身、立ち上げ当初は社内のAIやSaaSなど別事業のマーケターからさまざまなノウハウを聞いた。しかし、「同じようにやっても、サプライサイドで成果を出すのは難しい」と感じる場面が何度もあったという。
感覚だけで施策を進めることはできないため、必要な売上から逆算し、商談を何件つくる必要があるのか、そのためにどの施策で何件の接点を生み出すのか、目標を細かく設定した。
原本氏に課せられたマーケティングの主なKPIは商談数だ。認知を目的とした施策など数値化しづらいものに難しさを感じながらも、上司と議論し、数字に落とし込みながら施策を組み立てていったという。
「面白かった」の声が次の取り組みへ。オフラインイベントで得た手応え
これまでのマーケティングとして取り組んできた業務の中で、原本氏には特に印象に残っている2つの施策があるという。
一つは、外部メディアを活用した顧客事例の発信。自社のオウンドメディアだけでは、すでにジーニーを知っている人には届いても、まだ接点のない層までリーチするのが難しい。そこで外部の媒体を通じ、パブリッシャーのマネタイズに課題を持つ人へ情報を届ける取り組みを行ったのだ。
「マーケティングとしての予算を使う取り組みはあまり実施してきませんでした。社内で稟議を申請したり、顧客とメディアの両方と密にコミュニケーションを取ったり、とても良い経験になりました」
もう一つが、他事業者と共同で実施した「サプライパス最適化」をテーマとしたオフラインイベント。パブリッシャー・SSP・DSP、それぞれの視点を交えたトークセッションを企画し、40〜50人ほどが参加したという。
テーマ設定やアジェンダづくりでは、営業時代に身につけたアドテクの知識を生かした。構成案を作り、社内レビューを経て、登壇企業とも調整を進めながら内容を詰めていく。
「参加者の立場や理解度がさまざまな中で、どこまで専門的に踏み込むべきか。ニッチなテーマでやらせてもらいましたが、バランスを取るのが本当に難しかったです」
試行錯誤しながら形にしたイベントでは、業界に精通した参加者から「面白い企画だった」と声をかけられ、その後の取り組みにつながったケースもあるという。
AIに任せる仕事と、人にしかできない仕事
マーケティング未経験から仕事を覚え、業務を作り出してきた原本氏にとって、生成AIは心強い存在だという。たとえば広告キャンペーンを始める際、これまで触ったことのないツールや設定が出てくることもある。そうした場面ではAIに質問し、知識を補いながら実践している。
また、海外チームとの英語ミーティングでも、議事録作成や翻訳の補助に活用している。
「営業をやっていたので自社のプロダクトやアドテクへの理解はありますが、マーケティングの知識はありません。例えば広告出稿するためにコンバージョンタグを埋め込む必要がある。でもGTMを使おうにも触ったことがない。そんな時はAIに聞いて設定について教えてもらったりしています。AIを活用できる時代にマーケティング担当になることができて本当によかったと思います」
一方で、AIに任せることのできない領域もあると原本氏は考えている。それが、「顧客が本当に考えていることや困っていることを、腹を割って話してもらうこと」だ。
表面的な要望だけでなく、その背景にある課題を聞き出し、理解したうえで、適切な形で発信していく。AIに作業の一部を任せることはできても、クライアントニーズを正しく掘り下げていく一連のプロセスは、人が担うべき領域だという。だからこそ、オンラインでの商談が当たり前になった今も、直接顔を合わせて顧客の生の声を聞ける場を大切にしていきたいと考えている。
「顔の見える関係をつくろう」とすること
原本氏に仕事をする上で大切にしていることを聞くと、「なんでもトライしてみる」「好奇心を大切にする」「いろいろな人と話す」という三つの姿勢をあげた。加えて、社内でのコミュニケーションについて重視していることを尋ねると、少し意外な答えが返ってきた。
「顔の見える関係を、部署や国を超えてつくろうと心がけています。」
その意味するところは何か。
「一人では進めることができない仕事がたくさんあります。普段から接点があり、互いを知っている人から頼まれた方が、『一緒にやろう』と思ってもらえますよね。だから会社の懇親会だけでなく、日常的なコミュニケーションも大切にする。海外チームのメンバーとも、仕事の話ばかりではなく、食べ物の話など何気ない会話を交わして、距離を縮めることを意識しています。結果、他部署のマーケ担当者の力を借りられたことでチームの立ち上げに成功しました。海外チームとの連携がスムーズにできたのも、このおかげだと思っています。」
原本氏は営業チームとの週次ミーティングに加え、Slackのチャンネルも自ら確認しているという。自分が渡した商談がその後どうなったのか、現場でいま何が起きているのか。
「情報は吸い上げるというより、自分から取りに行くようにしています」
情報を待つのではなく、自ら取りに行く。その積み重ねが、営業やプロダクト、海外チームとの連携を支えている。
若手でも、やる気があればチャンスが来る
現在の仕事のモチベーションは「若手でも、やる気があればチャンスをもらえる環境」だという。
2023年に新卒でジーニーへ入社し、営業からキャリアをスタートした原本氏。営業を経て、未経験のマーケティングを任され、今では海外チームとのミーティングで施策の進行まで担うようになった。
英語が堪能だったわけではないが、気づけば、海外のメンバーと定期的に会議をし、自ら依頼や指示を出すことが日常になっていたという。
「もともと英語が得意でもないのに、海外メンバーとの連携も任せてもらっています。ジーニー以外の会社なら英語ができなければ担当できないポジションだと思います。そんな貴重な経験をさせてもらってありがたい環境にいるので『全力で頑張ろう』と思っています」
ジーニーには、新卒・中途といった区分にとらわれず、やる気のある人に仕事を任せる文化があるという。
マーケティング未経験からでも、好奇心を持って挑み、周囲に相談しながら前進することで、仕事の幅を広げていける。営業からマーケティングへ、さらに海外チームとの連携へ。任された仕事に向き合うなかで、少しずつ担当領域を広げてきたのだ。
「SSP」の枠を超えた価値を伝えたい
今後、原本氏は「ジーニーが提供できる価値をより正確に伝えていくこと」を目指しているという。
「GENIEE SSPという名称ではありますが、実はパブリッシャーの広告マネタイズを支援する複数のプロダクトやソリューションがあります。にもかかわらずSSPに限定されたイメージが強い。SSPにとどまらず『パブリッシャーの課題を一気通貫で支援できる存在』として知ってもらいたいです」
取材の最後、これからアドテク領域に関わる人へのメッセージを尋ねると、「アドテクについて何も知らないままやってみたら、すごく楽しかった。きっと何かのご縁だと思うので、一緒に頑張って業界を盛り上げていきましょう」と続けた。
専門知識や経験がなくても、知らないことに興味を持ち、一歩踏み出してみる。その先で、自分にも思いがけなかった仕事やキャリアに出会うことがある。
原本氏のストーリーは、広告業界を目指す人だけでなく、これから就職活動をしていく若い世代にも、そんな可能性を感じさせるものだった。
ABOUT 加納 奈穂
ExchangeWireJAPAN 編集担当
武蔵野美術大学卒業後、出版社に入社。WEBサイトや広告の運営に従事。その後コスメ情報サイトのコンテンツマネージャーを経て出版社での通販事業において販売促進業務を担当する。通販会社にてSNS運用に携わったのち、2022年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。現職に至る。




