楽天とRoktが語る『NRF APAC 2024』 ~小売業界の最新トレンドと日本のリテールメディアの未来~
EコマーステクノロジーのリーディングカンパニーであるRoktが2024年11月21日にTokyo American Clubにて『The Future of Ecommerce Summit』を開催した。 本記事では、2024年6月にシンガポールで開催された小売業界の大規模展示会「NRF APAC 2024」に参加した楽天グループ株式会社の秦 俊輔氏とRoktの大野 皓平氏の視点から、「NRF APAC 2024」で得られた最新トレンドやインサイト、そして日本のリテールメディアの未来についてのセッションをレポートする。 (Sponsored by Rokt) 小売業界で注目のトピック「リテールメディア」の未来 「NRF APAC 2024」で、ホットトピックとして取り上げられたのは「リテールメディア」だった。 楽天の秦氏は、日米におけるリテールメディアの捉え方の違いを「オンライン店舗の取り扱い方」と指摘する。 アメリカでは、ウォルマートなどに代表される実店舗に起因するものだけでなく、Amazonなどのオンラインストア広告もリテールメディアとして扱われている。 一方、日本のリテールメディアは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどのオフライン店舗、もしくはこれらの小売業が展開するアプリが主体となっている。 しかし、コロナ禍を経てEC利用が拡大した現在、日本でも楽天やAmazonなどのオンラインストア広告がリテールメディアとして認識されるようになる可能性が高い。 今後は、オフラインとオンラインを融合した、より多様なリテールメディア戦略が求められるだろう。 楽天グループ株式会社 マーケットプレイス事業 アカウントイノベーションオフィス ヴァイスジェネラルマネージャー 秦 俊輔氏 「NRF APAC 2024」から得られた学び 「NRF APAC 2024」では、様々なリテール事業者の事例や最新のソリューションが紹介された。 その中で秦氏は印象に残ったキーノートセッションとして「ドミノピザのDX事例」を取り上げた。 ドミノピザは、グローバルで2.8兆円の売上高を誇っており、米国においては売上高の80%をデジタルオーダーが占めるなど、DXを積極的に推進している。その背景にあるのは、デジタル化による顧客データの蓄積と活用だ。電話注文では得られなかった顧客データを活用することで、サービス改善や顧客体験向上を実現しているのである。これは、顧客価値向上と顧客起点のサービスを重視するリテールメディアの価値を体現していると言えるだろう。 またドミノピザは、顧客接点を増やし、ユーザーボイスを積極的に取り入れることで、イノベーション(新しい広告)戦略を展開している。例えば、2019年に行われた「自分で描いたピザの写真を送信すればクーポンがもらえる」キャンペーンは、顧客参加型の新しい広告戦略であり、この取り組みによって、顧客データの取得やサービス開発に役立つユーザーボイスを集めることに成功した。 ドミノピザのイノベーション戦略の根底にあるのは「イノベーションは広告になる」という考え方だ。これは、単なる広告出稿とは異なり、イノベーション自体が広告効果を生むという、非常に革新的なアプローチと言える。 この事例は「顧客体験向上とビジネス拡大を両立させるための重要な示唆を与えてくれる」と、秦氏は強調する。 顧客を巻き込んだイノベーション戦略は、取り組みそのものが自然な広告効果を生み出す。ドミノピザの成功例を参考に、企業は顧客起点でのイノベーション(新しい広告)を追求し、顧客体験とビジネス成長の両立を目指すべきだろう。 大野氏も印象に残ったキーノートとして、元コカ・コーラのVPであるサイモン・マイルズ氏のセッションを挙げて、リテールメディアを発展させるために大切な“4つのC”を紹介した。 Clarity(正確な計測):リテールメディアは広告投資であるため、投資効果を正確に測定できることが重要である Capability(知識/組織体制):リテールメディア はまだ新しい概念であるため、経営層を含めた組織全体でリテールメディアに関する知識を習得し、その価値を最大限に活かせる体制を作ることが重要である Collaboration(本業と広告部門の協力体制):秦氏も指摘するように、リテールメディアは単独部署ではなく、会社全体で取り組むという認識をしっかり持つ Consumer focus(顧客視点/顧客起点):顧客視点に立った取り組みが何よりも成功の鍵になる この“4つのC”の中でとりわけ重要なのが、②Capability(知識/組織体制)、③Collaboration(本業と広告部門の協力体制)と筆者は考えている。 この考え方は秦氏とも共通しており、同氏は次のように述べている。 「私が実際に行ったメーカーとの打ち合わせでも、日本では『リテールメディア=営業部門の仕事』という誤解が多いと感じます。リテールメディアの最大の価値は『顧客起点のマーケティング』です。顧客データに基づいた効果的なマーケティングを実現するためには、企業全体でリテールメディアに取り組むことがとても重要です」 リテールメディアを発展させるためには、企業の変革も必要不可欠だ。知識と組織体制の強化、部門間の協力体制の構築こそが、リテールメディアを成功に導く要素であり、これらを疎かにする企業は、リテールメディアの価値を最大限に活かすことはできないだろう。 今後は、経営層が率先してリテールメディアへの理解を深め、組織全体でその可能性を追求する企業こそが、競争優位性を確立し、市場をリードしていくことになるはずだ。 Rokt ビジネス開発 ディレクター 大野 皓平氏 楽天グループにおけるリテールメディアの取り組み 秦氏は『NRF APAC 2024』で得られた学びをビジネスに活かす道筋として、 楽天グループが保有する顧客データを活用し、見込み客だけでなく潜在顧客へのアプローチを強化すること マーケティング、オペレーション、顧客対応の効率化を目指し、AIの活用を積極的に推進すること の2つを挙げ、顧客データとAIを最大限に活用することで、ビジネスのさらなる拡大を目指していくと語った。 次に、リテールメディア事業についても、楽天市場におけるメーカーブランドページ掲載サービス「Brand Gateway/Showroom」の例を出しながら解説し、顧客データに基づく最適なページ表示やCRM強化など、顧客データ活用戦略に力を入れていくと強く訴えた。 最後に秦氏は、楽天が3つの事業で導入しているRoktのソリューションについて言及し、 「Roktとの取り組みにより、決済完了画面への広告掲載で、新たな収益源を確保しました。この収益を次のマーケティングに再投資することで、楽天グループの発展につなげていきます」 と締めくくった。
ナイル大澤氏とUNICORN田井氏が登壇 交流×学び×成長! ExchangeWire Japan媒体説明会レポート
ExchangeWire Japanは5月16日(金)に東京カルチャーカルチャーにて媒体説明会を行った。2年連続で行われた媒体説明会には、25社以上40名近い方が参加した。 媒体説明会では特別講演として ・ひとりマーケターが成果を出す仕事術:特別編(株式会社ナイル 大澤心咲) ・2年連続でATS Tokyoへの参画を決めた理由(UNICORN株式会社 田井花佳) が行われた。本記事では、上記2つの特別講演を中心に媒体説明会の様子をお届けする。 ひとりマーケターが成果を出す仕事術 大澤心咲氏が提言する組織を巻き込む戦略と施策 大澤心咲氏は、新卒でアクセンチュア株式会社に入社。その後、ホリゾンタルDX事業や自動車産業DX事業に強みを持つナイル株式会社に2018年に転職。同社ではSEOコンサルタントとして勤務し、その後、集客を中心としたひとりマーケターとして、マーケティング組織とインサイドセールス組織の立ち上げを行った実績を持つ。ExchangeWire Japan読者の多くが、ひとりマーケターとして日々業務にまい進していることを踏まえ、自身の経験を基に、ひとりマーケターが組織の中で成果を最大化するための5つの戦略と具体的な施策を伝授した。 1. 上司はあなたの代弁者! 大澤氏が何よりも大事と力説したのが、上司との関係性だ。 ひとりマーケターが陥りがちな課題として、社内での認知度不足がある。大澤氏は、この状況を打破するために、まず「ひとりマーケターが参加していない会議で、上司がマーケティングの取り組みについてあなたの代わりに話せる状態にすることが理想」だと語る。そのための法として、週に15分でもよいので、上司にマーケティング活動の状況をインプットする時間を設けてもらうことを提言した。 「マーケティングとしてどのような仕事をしているのかを、上司の口から会議等の場で話してもらえる」状態を作ることで、社内での認知度不足が解消し、物事を進めやすくなると大澤流のノウハウを紹介。そしてさらに「上司の予定をチェックして、関連会議に向けて話してほしいポイントを先に伝えておくのも有効です」と、すぐに使える実践的なテクニックも紹介した。 2. 営業との連携を「議事録作成」で強化! 営業部門との連携不足も、ひとりマーケターが陥りやすい課題だ。大澤氏は課題解決のために「議事録書きます!」と言い、営業の定例会議に参加することを推奨した。 議事録を作成することで、営業組織の人間関係や専門用語、背景を理解することができる。営業メンバーたちの実情を知ることで「相手の事情をイメージできるようになり、仕事のお願いや交渉事もしやすくなった」と、その効果を強調する。さらに、議事録のタスク管理を通じて、営業担当者とコミュニケーションを取ることができ、関係構築に役立ったそうだ。 3. 顧客の「生の声」を直接聞く 営業からの伝聞情報だけでなく、顧客の「生の声」を直接聞くことの重要性も強調する。大澤氏のチームでは、受注・失注した営業の商談録画をそれぞれ確認し、気になった発言のメモ取りを月に1回はやっているという。こうすることで営業担当者からの話にくわえ、具体的な顧客ニーズを拾い上げ、マーケティング戦略に反映できるようになると効果を述べた。 4. 「日報」で業務を可視化し、時間を生み出す 日報を作成し、自身の業務内容と工数を可視化することで「不要な業務がはっきり見えてくる」と大澤氏は語る。その上で上司に、不要な業務を削減した時間で何ができるか(例えば「この業務がなくなったら私は、ウェビナーが月に2回できリードを〇件獲得できます!」など)を具体的に提示したことで、現在は自分のやりたい業務に集中できる環境をつくることができたという。 5. 協力会社との「情報共有」で連携を深める 協力会社との連携においては、単にKPIを共有するだけでなく「同じチームの一員として情報提供することが多い」と大澤氏は語る。NDA(秘密保持契約)を締結した上で、細かい数字や自社状況を共有することで、協力会社からの深い理解と協力を得られ、より効果的な施策の実行につなげたと成果を述べた。 孤独で雑務を含めた業務量の多い、ひとりマーケター特有の悩みに寄り添った 実践的な講演に、多くの参加者は頷きながら拝聴していた 大澤氏の講演は、ひとりマーケターが組織の中で孤立せず、周囲と連携しながら成果を最大化するための具体的な方法論を提示するものだった。上司、営業、顧客、協力会社とのコミュニケーションを密にし、自身の業務を可視化することで、ひとりマーケターは組織の中でより大きな影響力を発揮できるだろう。大澤氏の言葉を参考に、組織を巻き込むマーケティング戦略を実践してみてはいかがだろうか。 講演を行った大澤氏の自著『ひとりマーケター 成果を出す仕事術』 (マイナビ出版) UNICORNがATS Tokyoにプラチナスポンサーとして参画する理由 業界課題への提言と共感の輪を広げる戦略 UNICORN がATS Tokyoに参画する理由を語る田井花佳氏。 広報担当者として、これほどまでに業界のあるべき姿や自社のミッション、 価値を自分の言葉で、しかも臆することなく語れる人材は多くない。 田井氏の熱意と信念が伝わるプレゼンテーションは、 聴衆を惹きつけ「共感」を呼ぶ力があった 媒体説明会では、ATS Tokyo 2023、2024と2年連続でプラチナスポンサーとして参画したUNICORN株式会社(代表者:代表取締役 山田 翔 以下、「UNICORN」)のPR担当 田井花佳氏が『2年連続でATS Tokyoへの参画を決めた理由』という講演を行った。 UNICORNは、インターネット広告事業を手がける株式会社アドウェイズ(代表者:代表取締役 山田 翔)の100%子会社で、DSPとして広告配信プラットフォームを提供している。 田井氏は、UNICORNがATS Tokyoにプラチナスポンサーとして参画する理由を「単なるリード獲得の場としてではなく、業界のあるべき姿を提言し、共感を広げるための戦略的ツールとして活用している」と強調した。 UNICORNのATS Tokyo登壇レポートは 『インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿』(2023年)、 『オンライン広告の効果計測の原点回帰-本当に重要な指標とは』(2024年) から確認できる ATS Tokyoを「共感」を広げる場として活用 インターネット広告市場は成長を続けているものの、ユーザー体験を損なう広告が依然として多く存在する。田井氏は「インターネット広告、本当に好きですか?」と問いかけながら、66%の人が広告の内容をほとんど読まないというアンケート結果を引用し、約1兆円もの広告費が無駄になっている可能性を指摘する。 続けて「UNICORNは、ユーザーにとって価値のある広告配信を行うことで、メディア上でのユーザー体験を向上させ、広告効果を高めることを目指しています」と述べ、この考えに「共感」してくれる広告主、代理店、媒体社等との関係構築のために、ATS Tokyoを活用していると述べた。 「ATS Tokyoは、短期的な売上ではなく、業界のあるべき姿を発信し、広告配信の課題に気づいてもらうきっかけ作りの場にできるかどうかを重視しています」と語る田井氏だが、プラチナスポンサーとしてATS Tokyoに参画し、プレゼンテーションを行ったことで4つの効果があったと報告する。 価値観ベースの関係構築: UNICORNの考え方に共感する企業からの問い合わせが増加。 認知度向上: 広告のあるべき姿を提言する企業としての認知が広がり、好意的なコメントが多数寄せられた。 大手広告代理店との戦略的パートナーシップ: 某大手広告代理店がATS Tokyoでのプレゼンを聞き戦略を転換。これまで以上にUNICORNを活用していただけるようになった。 インナーマーケティング効果: 登壇内容をオウンドメディアで記事化し、営業担当者が顧客にUNICORNの考え方を伝えやすくなった。 これらの効果について、田井氏は費用対効果を定量化することは難しいとしながらも「大きな成果を得ることができました!」と報告した。 「業界課題の共有+啓蒙+少しだけ宣伝」というATS Tokyoの活用法も伝授 多くの企業がイベント協賛を費用対効果で判断する中、UNICORNはATS Tokyoへの協賛において、短期的な売上に対する費用対効果をほとんど考慮していないという。その理由は、同社のソリューションが「広告配信の課題に気づいている人に対して特に強く響く」という特性にあり、また業界課題への提言を通じて共感を広げ、業界が健全化すればUNICORNの中長期的な成長につながると考えているからだ。 最後、田井氏はこう締めくくった。 「UNICORNだけでは業界は変えられません。同じ価値観持っている企業さまがいらっしゃれば一緒に業界を変えていきましょう💪 ぜひお声かけください!」 写真で見る媒体説明会の様子 媒体説明会では、上記の2講演のほか、人気記事ランキング、スポンサードコンテンツ紹介、ATS Tokyo 2025(11月21日 東京ドームホテル開催)の告知が行われた。 媒体説明会後は、軽食を楽しみながらのネットワーキングの時間も設けられ、参加者たちはリラックスした雰囲気の中で意見交換や情報共有を積極的に行っていた。
「イベントも支えあい」-日本アドバタイザーズ協会の林 博史氏が、2年連続でATSTokyo2025の総合司会に決定
支えあい 夜風に染みる 白Tよ ExchangeWireがお届けするグローバルイベント「ATS Tokyo 2025」。日本のプログラマティック・マーケティング及び広告業界のトレンドと、日本と海外における将来的な市場動向を取り上げるAd Trading Summit(ATS)が、昨年に続き東京で開催される。 そしてこの度、昨年に続き2年連続で林博史(はやし ひろし)氏が、11月21日(金)に開催されるATS Tokyo 2025の総合司会を務めることに決定した。 日本アドバタイザーズ協会に所属し、広告主側だけでなく全てのステークホルダーに関与する立場で業界のエコシステムのあるべき姿について、日々問い続けている林氏。同協会主催のイベントにとどまらず、広告業界横断的に様々なメディアイベントの企画運営への協力を行いながら、啓蒙活動を行なっている。 その活動は、日中の公式活動にとどまらず、夜は中目黒を拠点に、日中の業務に影響のない範囲で日々池尻・渋谷・恵比寿を巡り、業界内外の様々な人たちとつながり、幅広い人脈を築き上げてきた。 重ねて言うが、人並外れた夜の活動は、あくまで日中の業務には影響のない範囲でだ。 そんな林氏が、業界について思うことを語り始めた。「自分達の利益だけを考えて動く人たちが増えている気がする。結果として、昨今の広告業界は良くない方向に向かっているのだと思う。そうではなく、もっと広い視点で、世の中に貢献する新しい市場を皆んなで創造していくような動きをすべきだ」。 そして続けて、「ATS Tokyoは昨今の業界の課題やトレンドについて、400人以上がたった一つのセッションに集中して考える場だ。ぜひこのイベントには広告主の方にたくさん来て欲しい。全員の意識が変わらないといけないと思うが、まずは広告費を出す側の意識が変わることが効果的だと思う。また、若い方にもたくさん来て欲しい。業界に対する色んな人の考え方を吸収し、同じ課題感を持つ人たちとネットワーキングをすることで自分の幅を広げられるからだ。そして何より自分の仕事を楽しんで欲しい。若い方にまず大事にして欲しいのは楽しく働くことだと思う。それが継続的な業界の発展につながると考えている。」と強調する。 また、「昨年のイベント登壇者がプレゼンで語っていたが、すべてのステークホルダーにとってあるべきビジネスを作ることが大事である、ということに尽きると思う。ATS Tokyoは、そのための仲間が集い課題を共有し、健全なエコシステムを作っていくための下地を作るのにふさわしい場でもある。」と、司会にかける意気込みを熱く語ってくれた。 ATS Tokyo2025の総合司会として会場全体の進行をリードする責任感からであろうか。今年も昨年と同様に前日の夜から東京ドームホテル入りし、調整の上本番にのぞむという。
「パブリッシャー感謝祭2025」イベントレポート サイバーエージェント アドテクDiv.と取り組む広告メディアの成長戦略
株式会社サイバーエージェント(以下「サイバーエージェント」)のAI事業本部 アドテクDiv.は、2025年4月24日に「パブリッシャー感謝祭 2025」を開催した。 冒頭、挨拶を行った中村 鴻介氏(サイバーエージェント AI事業本部 アドテクDiv. メディアリクルーティング局 責任者)は、お取引のあるパブリッシャーの皆様へ「日頃の感謝を直接お伝えするため」「弊社との取引を通じた付加価値をより実感していただくため」に本イベントを企画・開催したと述べ、有意義な時間を過ごしてもらうべく3つのセッションを用意したと説明。 本記事では、約70社から150名を超える関係者が集い、大盛況のうちに幕を閉じた各セッションの模様をレポートする。 (Sponsored by サイバーエージェント) バンダイナムコネットワークサービスが オープンインターネットに広告配信する理由 第一部は「広告主が考える効果の良いパブリッシャーとは」をテーマに、株式会社バンダイナムコネットワークサービス 第1事業部 オンラインマーケティング部 オンラインマーケティング課 チーフ 宇津木 涼氏と、冒頭の挨拶に引き続き中村氏が登壇した。 宇津木氏は、インハウス組織として2022年からバンダイナムコエンターテインメントが提供する有名IPタイトルの広告出稿業務に従事し、スマホアプリのユーザー獲得施策 を筆頭に、オンラインプロモーションのサポートを行っている。 中村氏とは、4年ほど前から広告プランニングを一緒に行ってきたと説明し、現在まで継続的に「AMoAd(*)」に出稿し、各パブリッシャーへ広告配信しているという。 (*)AMoAd:サイバーエージェントが提供するアドネットワークサービス。閲覧者が深い理解や関心を示す広告を、各メディアの特性に合わせた最適な広告表現で展開することができる。 インストールを目的としたユーザー獲得のプロモーションを行う際、グローバル媒体だけではリーチできないパブリッシャーにも広告配信を行うためにアドネットワークを活用しているという宇津木氏。とりわけ、iOSの場合は、Androidよりも全体をリーチすることが難しいため、AMoAdを活用しながら、優良なウェブサイトやアプリのパブリッシャーに広告を掲載している。 中村氏もAndroidであれば、Google社が提供する広告で、大部分のリーチが可能だが、iOSの場合はリーチのボリュームが少なくなるというのはよく聞く話とし、宇津木氏のアドネットワークを活用する施策に理解を示した。 その上で、「広告主のマーケターは、リーチしきれないという理由があっても、グローバル媒体にしか出稿しないことが多々あります。なぜ宇津木さんは、アドネットワークやオープンインターネットのパブリッシャーにも広告配信を行っているのでしょうか?」と質問。 宇津木氏は、広告を出稿する状況や予算規模などによりグローバル媒体に出稿が集中するケースは多いとしつつ、 「ウェブサイトやアプリにも、良質なユーザーが多くいると考えています。実際に、グローバル媒体よりもインストール率が高いウェブサイトやアプリもあります」と理由を述べつつ、「サイバーエージェントの力はもちろんのこと、本日いらっしゃっているパブリッシャーの皆様のおかげです」と感謝の意を表した。 オープンインターネットに純広告を出稿する可能性 最後に中村氏は、本イベントならではの質問として「広告主がオープンインターネットのパブリッシャーに純広告を出す場合どの部分を見ますか?」と質問。 宇津木氏は、純広告出稿の状況についてボリュームとターゲティング、ブランドリフト調査が行えると優先度が上がると述べた上で、純広告を出す場合のポイントとして フリークエンシーの確認 同じIPで多数のアプリが出ていることもあるので、しっかりと自社アプリと認知してもらうために、接触回数が多くなる媒体を求めている。 視認性 広告主として、広告がどのような形で掲載されているかは注視している。大きく掲載されるのはもちろんのこと、ゲームがどのような内容なのかを、しっかりとユーザーに伝えられるフォーマットがある。 コンテンツメディアの透明性 バンダイナムコエンターテインメントが配信を行っているゲームの多くの場合はIPを版権元様からお借りしているケースが多いため、ブランドを棄損するようなコンテンツメディアではないか、一緒に出る広告も公序良俗に反しないかどうかは特に重要視して確認している。 と語り、現状、オープンインターネットのパブリッシャーに対して純広告を打つ施策はあまり行っていないが、上記の3つを満たした適切なフォーマットを提供しているのであれば、オープンインターネットでも広告出稿の検討テーブルに乗る可能性はあると説明。 これを聞いて中村氏は「弊社のメディアリクルーティング局でも、ターゲティングボリューム、視認性、コンテンツメディアの透明性を担保した広告配信方法については日々パブリッシャーの皆様と協議しています。有効なメニューが完成しましたら、ぜひ提案させてください!」と結んだ。 サイバーエージェントが考える 効果の出るアドフォーマットとは? 第二部は「効果の出るアドフォーマットの考え方」をテーマに、AI事業本部 アドテクDiv. クリエイティブパフォーマンス局 責任者 木俣 聡一朗氏が登壇した。 ProFit-X事業部でクリエイティブディレクターも務める木俣氏は、これまで約2,000メディア以上のアドフォーマットを制作してきた経験を持つ。 木俣氏はアドフォーマットの制作に注力する理由として、CTR(クリック率)を向上させ、収益率を高めるためと話す。 「国産SSPの多くが運用開始から10年以上経過し機能や性能で差別化を出すことが難しい状況の中で、収益性を高めるためには、CPC(クリック単価)とCTRの向上が必要不可欠です。CPCは、デマンドやターゲティングに依存しますが、CTRはアドフォーマットの影響が大きいと考えています。私の部署はメディア経験のあるクリエイターが日々CTRを向上させるために、アドフォーマットの制作に注力しています」 アドフォーマットで効果を出すには? CTRを上げるには、圧倒的な改善・検証スピードと実装量が重要になってくる。木俣氏は、これらの問題を解決するために、「匠(たくみ)機能」という独自のシステムを開発したと報告する。 匠機能は、 モニタリング 最新のデザイントレンドをクローリングし、どのようなデザインが効果的かを日々確認する。 効果予測 LLM(大規模言語モデル)を利用して、アドフォーマットのCTRを事前に予測する。これにより、効果の低いフォーマットを排除し、効率的な制作を可能にする。 効果検証 目標CTRを設定し、ABテストを実施する。1つの広告枠に複数のアドフォーマットを適用し、CTRを測定する。目標を達成した場合は、CTRの低いフォーマットの配信量を自動的に減らし、高いフォーマットのみを配信する。目標未達の場合は、CTRが目標に到達するまでアドフォーマットの改善を継続する。 疲弊改善 アドフォーマットにもクリエイティブと同様に疲弊が見られるため、媒体ごとの疲弊速度を検知し、改善を繰り返す。 という上記4つのサイクルを高速で回転させ、CTRを向上することを目的としている。このシステムを構築したことで「メディアごとに効果的なアドフォーマットを選択することができるようになったほか、今まではCTRが高い“勝ちアドフォーマット”を見つけるために1~2日ほど掛かっていましたが、現在は数時間で見つけることができます」と木俣氏は語る。 また、2024年5月から匠機能を実装した結果、「インタースティシャル広告の価値を向上させることができました」とも報告した。 “勝ちアドフォーマット”を短時間で選べるようになった結果、CTRが向上し、CPM(インプレッション単価)もそれに伴って上昇したことはパブリッシャー、広告主の双方にとって有益な結果と言えるだろう。 そして最後に、2つの最新のアドフォーマットが紹介された。 タテカル 300x250のレクタングル広告枠に縦長の動画フォーマットが並ぶ形式。クリーンな広告案件(主にアプリダウンロード)を配信し、ユーザーに新しい広告体験を提供することができる。 ワイプライン 通常のインライン広告(320x100)の見た目だが、ページ上部にスクロールするとオーバーレイ広告に変化する。エキスパンドボタンで広告の拡大も可能。低単価になりがちなインライン広告の収益性の向上を目的としており、実証実験では初速の単価が向上した。 本セッションは多くの貴重な情報が含まれていたが、参加者限定で公開された内容も多く、この記事では許可された部分のみを取り上げている。 パブリッシャーにとっては、AIを活用した最新技術に関する情報を知ることができる非常に有意義な講演となった。 サイバーエージェントと神戸新聞社が取り組む 広告収益最大化施策 第三部は「神戸新聞社が取り組む広告収益最大化施策」をテーマに、サイバーエージェント AI事業本部 アドテクDiv. ProFit-X 責任者 三宿 仁氏と神戸新聞社 デジタル推進局 WEBマーケティング部 部長 初瀬川 文範氏が登壇。サイバーエージェントと神戸新聞が取り組んだ最新施策・事例について、現場視点も交えながらトークセッションを行った。 デイリースポーツオンラインが抱えていた課題 神戸新聞社は神戸新聞、デイリースポーツといった新聞のほか、サンテレビ、ラジオ関西などのメディアを抱える企業グループである。 ウェブサイトは、神戸新聞NEXT、デイリースポーツオンラインなど4つのサイトを運営しており、今回のトークセッションでは、主にデイリースポーツオンラインで行われた最新施策・事例が紹介された。 まず背景として神戸新聞社の初瀬川氏は、 「デイリースポーツオンラインは、ProFit-Xの広告タグを導入し広告の収益化を図っていました。ただ、運用していく中で ・デジタルに関する知見不足 ・サイトの表示速度の遅さ ・アドフォーマットの疲弊(10年前と変わらないアドフォーマット) ・ソースコードが複雑化しサイトの管理が困難に という課題を感じていたところ、サイバーエージェントより、単なるSSPとしての関係を超えて、課題を解決するための具体的な取り組みを提案していただきました」と報告。 具体的には、初瀬川氏自身も遅いと感じていたサイトの表示速度に対して、サイバーエージェントよりエンジニアリソースが提供され、ソースコード解析の解析含め、サイト表示速度の高速化のための施策を実行できたという。 三宿氏は、表示速度高速化の効果をこう解説する。 「デイリースポーツオンラインの場合、表示速度がアップしたことにより直帰率が改善しました。また、インタースティシャル広告のCTRが向上したことにより、収益換算で3桁万円の純増が見込めるほどのインパクトを得ることができました。さらに、インタースティシャル広告以外の広告枠(アドエクスチェンジ)においても、CTRとビューアビリティが改善する傾向が確認できました」 サイバーエージェントが取り組む 生成AIの活用について トークセッションの最後には、生成AIの活用についても意見が交わされた。 サイバーエージェントは全社的に生成AIの活用を推進しており、そのノウハウを活かした企業支援も行っている。神戸新聞社も、生成AIをメディア運用業務に応用する考えを社内で検討しはじめている。 初瀬川氏は、生成AIの活用を考えた背景として 人員削減 該当部署が人員削減され、業務効率化の必要性が高まっていた。 業務の属人化 過去のデータや業務プロセスが可視化されておらず、担当者の経験や勘に頼る部分が大きかった。 を挙げ、生成AIによる業務改善に期待を寄せている。 三宿氏は、「AIエージェント」による業務効率化や新たな解析・レポートの作成を行える時代が訪れると説明。 「お越しいただいているパブリッシャーの皆様は、日々のメディア運営に時間を費やされていることと思います。『AIエージェント』はメディア運営業務との親和性が高いと考えており、サイバーエージェントとしても、このメリットをチャンスと捉えています」と述べた。 そして、「今後も広告収益の最大化はもちろん、テクノロジーを駆使して各メディアの課題を解決し、メディアの成長を支援してまいります」と締めくくった。
AIトランスフォーメーションの最前線 JAPAN AI独自開発の高精度RAG技術とは?【インタビュー】
日本のAIトランスフォーメーション(AX)を牽引するJAPAN AI株式会社(代表取締役社長:工藤 智昭、以下「JAPAN AI」)が、独自開発したRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術(*1)で業界最高水準の82.7%の精度を達成したことを発表し、大きな注目を集めている。 本記事では、プレスリリースを発表した背景や反響、そして独自開発したRAG技術がJAPAN AIのマーケティングに与えるメリットと、将来展望について同社の執行役員 CMO マーケティング部 部長 飯田海道氏とプロダクトマネジメント部 リーダー 久保田善行氏にお話を伺った。 (*1)RAG技術:大規模言語モデル(LLM)の精度と信頼性を、外部ソースから取得した情報で強化する技術。大規模言語モデル(LLM)が持つ一般的な知識に、企業内の信頼できる最新データを組み込むことで、より正確で信頼性の高い回答を生成する。 RAG技術に関するプレスリリースを行った背景 JAPAN AIは、AIを活用した企業変革を支援するため、コンサルティングやプロダクト提供、AI人材支援まで幅広く展開している。 今回プレスリリースで発表したRAG技術に関しても、同社は創業以来力を入れてきた分野である。 プレスリリースを行った背景として久保田氏は「ユーザー様から『他社と比べて精度が良い』という評価をいただいていたが、定量的な比較はこれまでなかったため」と述べ、自社の技術力を客観的に確認するため、調査・検証を行ったと説明した。 今回の調査・検証では、複数の大規模言語モデル(LLM)を用いて模範解答との意味的な類似性・一致性を考慮した正答率指標により評価を実施。社内外の評価データセットを用い、他社クラウド製品と比較するベンチマークを行ったところ、業界最高水準の82.7%という高精度を達成したことから、プレスリリースを行ったという。 RAG技術というある意味でニッチな分野ではあるが、この発表は大きな反響を呼び、飯田氏も「企業のAI推進者がRAG精度に高い関心を持っていることを実感した」と述べた。 JAPAN AIが提供しているサービス JAPAN AI AGENT: 設定された目標に対し、AIが自律的に思考し、タスクを実行するAIシステム。日常的なタスクを自動化することができる。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/agent/ JAPAN AI CHAT: 最新の言語モデルを活用した法人向けAI活用プラットフォーム。データ連携と独自開発による高精度RAGにより、社内データの検索や回答生成が可能。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/chat/ JAPAN AI SPEECH: 議事録を自動生成するAIサービス。業界用語への対応や話者分離機能を備え、AIによる要約・編集も可能。 サービスサイト:https://japan-ai.co.jp/speech/ 今回のプレスリリースに該当する機能 Agentic RAG:独自開発した高精度RAG。単に情報を検索して表示するだけでなく、回答の正当性を検証し、より適切な表現を確認・生成する。具体的には、複数の情報源を参照しながら、回答内容の整合性チェックや、より良い表現方法の検討を行い、最適な回答を生成する。 「Agentic RAG」は、JAPAN AIが提供している各サービスに実装されており、ユーザーは、従来のライセンスのまま使用することができる。 高精度RAG技術のユーザーメリットとマーケティング戦略 飯田氏はマーケティング視点からも今回の発表に大きな手応えを感じている。 「RAG精度が高いことで、新規のお客様はもちろんのこと、すでにJAPAN AIを利用しているお客様の満足度が上がり、利用率やライセンス数、LTV(顧客生涯価値)向上に直結すると考えています。私も実際に『Agentic RAG』を使用してみましたが、アウトプットされる品質が上がり、生成AIの回答の精度が明らかに向上していると感じています」と語る。 続けて「AIの進歩によって、日常的で雑多なタスクを人間ではなく、AIが行うシーンが今後増えていくでしょう。そんな時、企業におけるタスクの自動化においては、法人独自のデータとシームレスに連携できることは絶対条件であり、かつそこから正しい情報を抽出できることが重用な要素です。その両方を解決できる『Agentic RAG』は、多くの企業から支持されるはずです」と期待を込める。 実際に、今回のプレスリリースで、JAPAN AIのことを知った事業者からの問い合わせも多かったという。 飯田氏は「本リリースを機に、企業のAI活用における『RAG精度が重要な要素』であることを啓蒙し、より多くの企業に選ばれる存在を目指していきます」と強調した。 Agentic RAGの強みと特徴 「Agentic RAG」は、単なるFAQシステムに留まらず、独自のエージェント機能によって、真価を発揮する。従来のRAGでは、ユーザーが言語化できないニーズをシステムが汲み取れず、最適な回答を導き出すことが難しいという課題があった。しかし、エージェント機能を備える「Agentic RAG」は、システムがユーザーの意図を理解し、必要な情報を自ら考え、文章を吟味し、回答を生成することが可能となった。 この技術に関し久保田氏は「Agentic RAG」がゼロからカスタマイズされている点が大きな特徴と語る。 「他社がオープンソースやプリセットを利用するのに対し、JAPAN AIは独自の技術を開発して精度を上げると共に、将来的なカスタマイズに対応できるようにしています」と解説。 さらに、RAG技術において重要なデータアップロード時のチャンク分割(*2)の最適化について「文脈が維持される形でチャンク分割ができるように調整し、検索精度を向上させています。特に、検索後には質問に対する回答の妥当性をランキングする『Rerank』という手法を取り入れ、より正確な情報を生成できるようにしました」と明かし、JAPAN AIの高い技術力をアピールした。 (*2)チャンク分割:テキストやデータを意味のある小さな単位(チャンク)に分割処理すること。大規模なテキストデータを扱う際、一度に全体を処理するのではなく、分割することで、効率的な処理や検索、分析が可能となる。 今後の展望 最後、久保田氏、飯田氏にJAPAN AIの今後の展望について聞いた。 久保田氏は技術的な今後の展望として「データベースに保存する前に、AIエージェントがデータ形式を分析し、RAGの精度を自動で最大化する技術を開発中です。2025年の夏までに実装できるように作業を進めています」と報告。 この技術は、AIエージェントが人の手を借りず、自らデータの形式を最適化し、RAGの精度を向上させるというもの。これは、AI自らが考えて改善し、実行するという革新的な技術ではないだろうか。 飯田氏は「多くの企業がデータの保存方法やデータの活用方法(紙ベースのもの、パワーポイントなどテキストではないデータをどのように生成AIに学習させるのかなど)、AI導入による業務プロセスの変化に悩んでいます」と現状を説明。その上で「今後は、さまざまな業務アプリケーションや、他社が提供するソリューションと自社サービスの連携を進め、さまざまなデータソースからの情報を統合し、業務プロセス全体を自動化するプラットフォームとして業務の自動化を加速させていきます」と抱負を語った。 そして最後に、「JAPAN AIは、国産AI企業として、日本企業特有の業務文化に寄り添い、温かみのある支援を提供していきます」と力強く締めくくった。 JAPAN AI最新情報 JAPAN AIのプレスリリースは下記から確認できる。 https://japan-ai.co.jp/news/ 【PR [...]
楽天とRoktが語る『NRF APAC 2024』 ~小売業界の最新トレンドと日本のリテールメディアの未来~
EコマーステクノロジーのリーディングカンパニーであるRoktが2024年11月21日にTokyo American Clubにて『The Future of Ecommerce Summit』を開催した。 本記事では、2024年6月にシンガポールで開催された小売業界の大規模展示会「NRF APAC 2024」に参加した楽天グループ株式会社の秦 俊輔氏とRoktの大野 皓平氏の視点から、「NRF APAC 2024」で得られた最新トレンドやインサイト、そして日本のリテールメディアの未来についてのセッションをレポートする。 (Sponsored by Rokt) 小売業界で注目のトピック「リテールメディア」の未来 「NRF APAC 2024」で、ホットトピックとして取り上げられたのは「リテールメディア」だった。 楽天の秦氏は、日米におけるリテールメディアの捉え方の違いを「オンライン店舗の取り扱い方」と指摘する。 アメリカでは、ウォルマートなどに代表される実店舗に起因するものだけでなく、Amazonなどのオンラインストア広告もリテールメディアとして扱われている。 一方、日本のリテールメディアは、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどのオフライン店舗、もしくはこれらの小売業が展開するアプリが主体となっている。 しかし、コロナ禍を経てEC利用が拡大した現在、日本でも楽天やAmazonなどのオンラインストア広告がリテールメディアとして認識されるようになる可能性が高い。 今後は、オフラインとオンラインを融合した、より多様なリテールメディア戦略が求められるだろう。 楽天グループ株式会社 マーケットプレイス事業 アカウントイノベーションオフィス ヴァイスジェネラルマネージャー 秦 俊輔氏 「NRF APAC 2024」から得られた学び 「NRF APAC 2024」では、様々なリテール事業者の事例や最新のソリューションが紹介された。 その中で秦氏は印象に残ったキーノートセッションとして「ドミノピザのDX事例」を取り上げた。 ドミノピザは、グローバルで2.8兆円の売上高を誇っており、米国においては売上高の80%をデジタルオーダーが占めるなど、DXを積極的に推進している。その背景にあるのは、デジタル化による顧客データの蓄積と活用だ。電話注文では得られなかった顧客データを活用することで、サービス改善や顧客体験向上を実現しているのである。これは、顧客価値向上と顧客起点のサービスを重視するリテールメディアの価値を体現していると言えるだろう。 またドミノピザは、顧客接点を増やし、ユーザーボイスを積極的に取り入れることで、イノベーション(新しい広告)戦略を展開している。例えば、2019年に行われた「自分で描いたピザの写真を送信すればクーポンがもらえる」キャンペーンは、顧客参加型の新しい広告戦略であり、この取り組みによって、顧客データの取得やサービス開発に役立つユーザーボイスを集めることに成功した。 ドミノピザのイノベーション戦略の根底にあるのは「イノベーションは広告になる」という考え方だ。これは、単なる広告出稿とは異なり、イノベーション自体が広告効果を生むという、非常に革新的なアプローチと言える。 この事例は「顧客体験向上とビジネス拡大を両立させるための重要な示唆を与えてくれる」と、秦氏は強調する。 顧客を巻き込んだイノベーション戦略は、取り組みそのものが自然な広告効果を生み出す。ドミノピザの成功例を参考に、企業は顧客起点でのイノベーション(新しい広告)を追求し、顧客体験とビジネス成長の両立を目指すべきだろう。 大野氏も印象に残ったキーノートとして、元コカ・コーラのVPであるサイモン・マイルズ氏のセッションを挙げて、リテールメディアを発展させるために大切な“4つのC”を紹介した。 Clarity(正確な計測):リテールメディアは広告投資であるため、投資効果を正確に測定できることが重要である Capability(知識/組織体制):リテールメディア はまだ新しい概念であるため、経営層を含めた組織全体でリテールメディアに関する知識を習得し、その価値を最大限に活かせる体制を作ることが重要である Collaboration(本業と広告部門の協力体制):秦氏も指摘するように、リテールメディアは単独部署ではなく、会社全体で取り組むという認識をしっかり持つ Consumer focus(顧客視点/顧客起点):顧客視点に立った取り組みが何よりも成功の鍵になる この“4つのC”の中でとりわけ重要なのが、②Capability(知識/組織体制)、③Collaboration(本業と広告部門の協力体制)と筆者は考えている。 この考え方は秦氏とも共通しており、同氏は次のように述べている。 「私が実際に行ったメーカーとの打ち合わせでも、日本では『リテールメディア=営業部門の仕事』という誤解が多いと感じます。リテールメディアの最大の価値は『顧客起点のマーケティング』です。顧客データに基づいた効果的なマーケティングを実現するためには、企業全体でリテールメディアに取り組むことがとても重要です」 リテールメディアを発展させるためには、企業の変革も必要不可欠だ。知識と組織体制の強化、部門間の協力体制の構築こそが、リテールメディアを成功に導く要素であり、これらを疎かにする企業は、リテールメディアの価値を最大限に活かすことはできないだろう。 今後は、経営層が率先してリテールメディアへの理解を深め、組織全体でその可能性を追求する企業こそが、競争優位性を確立し、市場をリードしていくことになるはずだ。 Rokt ビジネス開発 ディレクター 大野 皓平氏 楽天グループにおけるリテールメディアの取り組み 秦氏は『NRF APAC 2024』で得られた学びをビジネスに活かす道筋として、 楽天グループが保有する顧客データを活用し、見込み客だけでなく潜在顧客へのアプローチを強化すること マーケティング、オペレーション、顧客対応の効率化を目指し、AIの活用を積極的に推進すること の2つを挙げ、顧客データとAIを最大限に活用することで、ビジネスのさらなる拡大を目指していくと語った。 次に、リテールメディア事業についても、楽天市場におけるメーカーブランドページ掲載サービス「Brand Gateway/Showroom」の例を出しながら解説し、顧客データに基づく最適なページ表示やCRM強化など、顧客データ活用戦略に力を入れていくと強く訴えた。 最後に秦氏は、楽天が3つの事業で導入しているRoktのソリューションについて言及し、 「Roktとの取り組みにより、決済完了画面への広告掲載で、新たな収益源を確保しました。この収益を次のマーケティングに再投資することで、楽天グループの発展につなげていきます」 と締めくくった。
ナイル大澤氏とUNICORN田井氏が登壇 交流×学び×成長! ExchangeWire Japan媒体説明会レポート
ExchangeWire Japanは5月16日(金)に東京カルチャーカルチャーにて媒体説明会を行った。2年連続で行われた媒体説明会には、25社以上40名近い方が参加した。 媒体説明会では特別講演として ・ひとりマーケターが成果を出す仕事術:特別編(株式会社ナイル 大澤心咲) ・2年連続でATS Tokyoへの参画を決めた理由(UNICORN株式会社 田井花佳) が行われた。本記事では、上記2つの特別講演を中心に媒体説明会の様子をお届けする。 ひとりマーケターが成果を出す仕事術 大澤心咲氏が提言する組織を巻き込む戦略と施策 大澤心咲氏は、新卒でアクセンチュア株式会社に入社。その後、ホリゾンタルDX事業や自動車産業DX事業に強みを持つナイル株式会社に2018年に転職。同社ではSEOコンサルタントとして勤務し、その後、集客を中心としたひとりマーケターとして、マーケティング組織とインサイドセールス組織の立ち上げを行った実績を持つ。ExchangeWire Japan読者の多くが、ひとりマーケターとして日々業務にまい進していることを踏まえ、自身の経験を基に、ひとりマーケターが組織の中で成果を最大化するための5つの戦略と具体的な施策を伝授した。 1. 上司はあなたの代弁者! 大澤氏が何よりも大事と力説したのが、上司との関係性だ。 ひとりマーケターが陥りがちな課題として、社内での認知度不足がある。大澤氏は、この状況を打破するために、まず「ひとりマーケターが参加していない会議で、上司がマーケティングの取り組みについてあなたの代わりに話せる状態にすることが理想」だと語る。そのための法として、週に15分でもよいので、上司にマーケティング活動の状況をインプットする時間を設けてもらうことを提言した。 「マーケティングとしてどのような仕事をしているのかを、上司の口から会議等の場で話してもらえる」状態を作ることで、社内での認知度不足が解消し、物事を進めやすくなると大澤流のノウハウを紹介。そしてさらに「上司の予定をチェックして、関連会議に向けて話してほしいポイントを先に伝えておくのも有効です」と、すぐに使える実践的なテクニックも紹介した。 2. 営業との連携を「議事録作成」で強化! 営業部門との連携不足も、ひとりマーケターが陥りやすい課題だ。大澤氏は課題解決のために「議事録書きます!」と言い、営業の定例会議に参加することを推奨した。 議事録を作成することで、営業組織の人間関係や専門用語、背景を理解することができる。営業メンバーたちの実情を知ることで「相手の事情をイメージできるようになり、仕事のお願いや交渉事もしやすくなった」と、その効果を強調する。さらに、議事録のタスク管理を通じて、営業担当者とコミュニケーションを取ることができ、関係構築に役立ったそうだ。 3. 顧客の「生の声」を直接聞く 営業からの伝聞情報だけでなく、顧客の「生の声」を直接聞くことの重要性も強調する。大澤氏のチームでは、受注・失注した営業の商談録画をそれぞれ確認し、気になった発言のメモ取りを月に1回はやっているという。こうすることで営業担当者からの話にくわえ、具体的な顧客ニーズを拾い上げ、マーケティング戦略に反映できるようになると効果を述べた。 4. 「日報」で業務を可視化し、時間を生み出す 日報を作成し、自身の業務内容と工数を可視化することで「不要な業務がはっきり見えてくる」と大澤氏は語る。その上で上司に、不要な業務を削減した時間で何ができるか(例えば「この業務がなくなったら私は、ウェビナーが月に2回できリードを〇件獲得できます!」など)を具体的に提示したことで、現在は自分のやりたい業務に集中できる環境をつくることができたという。 5. 協力会社との「情報共有」で連携を深める 協力会社との連携においては、単にKPIを共有するだけでなく「同じチームの一員として情報提供することが多い」と大澤氏は語る。NDA(秘密保持契約)を締結した上で、細かい数字や自社状況を共有することで、協力会社からの深い理解と協力を得られ、より効果的な施策の実行につなげたと成果を述べた。 孤独で雑務を含めた業務量の多い、ひとりマーケター特有の悩みに寄り添った 実践的な講演に、多くの参加者は頷きながら拝聴していた 大澤氏の講演は、ひとりマーケターが組織の中で孤立せず、周囲と連携しながら成果を最大化するための具体的な方法論を提示するものだった。上司、営業、顧客、協力会社とのコミュニケーションを密にし、自身の業務を可視化することで、ひとりマーケターは組織の中でより大きな影響力を発揮できるだろう。大澤氏の言葉を参考に、組織を巻き込むマーケティング戦略を実践してみてはいかがだろうか。 講演を行った大澤氏の自著『ひとりマーケター 成果を出す仕事術』 (マイナビ出版) UNICORNがATS Tokyoにプラチナスポンサーとして参画する理由 業界課題への提言と共感の輪を広げる戦略 UNICORN がATS Tokyoに参画する理由を語る田井花佳氏。 広報担当者として、これほどまでに業界のあるべき姿や自社のミッション、 価値を自分の言葉で、しかも臆することなく語れる人材は多くない。 田井氏の熱意と信念が伝わるプレゼンテーションは、 聴衆を惹きつけ「共感」を呼ぶ力があった 媒体説明会では、ATS Tokyo 2023、2024と2年連続でプラチナスポンサーとして参画したUNICORN株式会社(代表者:代表取締役 山田 翔 以下、「UNICORN」)のPR担当 田井花佳氏が『2年連続でATS Tokyoへの参画を決めた理由』という講演を行った。 UNICORNは、インターネット広告事業を手がける株式会社アドウェイズ(代表者:代表取締役 山田 翔)の100%子会社で、DSPとして広告配信プラットフォームを提供している。 田井氏は、UNICORNがATS Tokyoにプラチナスポンサーとして参画する理由を「単なるリード獲得の場としてではなく、業界のあるべき姿を提言し、共感を広げるための戦略的ツールとして活用している」と強調した。 UNICORNのATS Tokyo登壇レポートは 『インターネット広告の計測と評価の闇、そしてあるべき姿』(2023年)、 『オンライン広告の効果計測の原点回帰-本当に重要な指標とは』(2024年) から確認できる ATS Tokyoを「共感」を広げる場として活用 インターネット広告市場は成長を続けているものの、ユーザー体験を損なう広告が依然として多く存在する。田井氏は「インターネット広告、本当に好きですか?」と問いかけながら、66%の人が広告の内容をほとんど読まないというアンケート結果を引用し、約1兆円もの広告費が無駄になっている可能性を指摘する。 続けて「UNICORNは、ユーザーにとって価値のある広告配信を行うことで、メディア上でのユーザー体験を向上させ、広告効果を高めることを目指しています」と述べ、この考えに「共感」してくれる広告主、代理店、媒体社等との関係構築のために、ATS Tokyoを活用していると述べた。 「ATS Tokyoは、短期的な売上ではなく、業界のあるべき姿を発信し、広告配信の課題に気づいてもらうきっかけ作りの場にできるかどうかを重視しています」と語る田井氏だが、プラチナスポンサーとしてATS Tokyoに参画し、プレゼンテーションを行ったことで4つの効果があったと報告する。 価値観ベースの関係構築: UNICORNの考え方に共感する企業からの問い合わせが増加。 認知度向上: 広告のあるべき姿を提言する企業としての認知が広がり、好意的なコメントが多数寄せられた。 大手広告代理店との戦略的パートナーシップ: 某大手広告代理店がATS Tokyoでのプレゼンを聞き戦略を転換。これまで以上にUNICORNを活用していただけるようになった。 インナーマーケティング効果: 登壇内容をオウンドメディアで記事化し、営業担当者が顧客にUNICORNの考え方を伝えやすくなった。 これらの効果について、田井氏は費用対効果を定量化することは難しいとしながらも「大きな成果を得ることができました!」と報告した。 「業界課題の共有+啓蒙+少しだけ宣伝」というATS Tokyoの活用法も伝授 多くの企業がイベント協賛を費用対効果で判断する中、UNICORNはATS Tokyoへの協賛において、短期的な売上に対する費用対効果をほとんど考慮していないという。その理由は、同社のソリューションが「広告配信の課題に気づいている人に対して特に強く響く」という特性にあり、また業界課題への提言を通じて共感を広げ、業界が健全化すればUNICORNの中長期的な成長につながると考えているからだ。 最後、田井氏はこう締めくくった。 「UNICORNだけでは業界は変えられません。同じ価値観持っている企業さまがいらっしゃれば一緒に業界を変えていきましょう💪 ぜひお声かけください!」 写真で見る媒体説明会の様子 媒体説明会では、上記の2講演のほか、人気記事ランキング、スポンサードコンテンツ紹介、ATS Tokyo 2025(11月21日 東京ドームホテル開催)の告知が行われた。 媒体説明会後は、軽食を楽しみながらのネットワーキングの時間も設けられ、参加者たちはリラックスした雰囲気の中で意見交換や情報共有を積極的に行っていた。
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