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動画を活用したマーケティングが変える、ユーザーとのコミュニケーションの形(第3回) ~マイクロアド~ |WireColumn

動画広告の解説とその活用、そして動画広告を通したマーケティングの発展について、動画広告に精通するマイクロアドグループ社員がリレーコラム形式で解説するシリーズ。

第三回目は、マイクロアドのグループ会社である株式会社マイクロアドプラスの増田氏による、動画広告の成功事例に基づいた広告と接触ユーザーの関係構築について解説する。

広告主における動画広告の目的とは

本コラムの第1回目で触れさせて頂いている様に、サイバーエージェントとデジタルインファクトによる共同調査によると、2015年の国内の動画広告市場は、前年比1.6倍の506億円の市場規模まで拡大しております。特に、スマートフォン向け動画広告の需要はさらなる拡大が予想されており、2017年には2015年比で2倍以上に伸長する見込みとなっています。
私自身もお客さまとの対話の中で動画広告の話題になることが多く、ニーズが高まっていることを実感しています。ただ、現地点での国内の動画広告では課金形態や動画素材の入稿の規定が異なっており、WEB広告では一般的なCPA、CPCといった広告施策を評価する際の指標をどこに置くのかを明確に設定出来ていません。「何をもって動画広告のゴールと設定すべきか」が不明瞭な広告主も多く、明確なゴール設定をするには、現在の広告市場の状況を見据えた上で仮説を検証していくことが重要になるでしょう。
また、実際に動画広告を実施している広告主が挙げる出稿の目的にも着目することが重要です。
グラフ1の結果を見ると、圧倒的に認知を挙げる広告主が多いものの平行して「WEBサイトへの誘導」「WEBサイトでのサービス利用促進」といったダイレクトレスポンスを意識した目的設定をされている企業と「想起の獲得」「詳細理解の促進」の様にブランディングを意識して目的設定を行っている企業が約半数ずつ存在しており、動画広告に対する目的は多様であることがわかります。

gragh1

【グラフ1】  

出典:動画広告の出稿目的(オンラインビデオ総研/デジタルインファクト調べ)

当面はこの状況に大きな変化は無いものと思われますが、アプリ向け広告を中心として動画広告でもダイレクトレスポンス広告として有効な配信ロジック・メニューの開発が進んでおり、結果として、ダイレクトレスポンスを目的とするクライアントの比率が高まることが想定されます。

事例からみる動画広告出稿における目的と成果とは

■動画広告を利用したWEBサイトへの誘導事例(新日本プロレスリング様事例)

デモ動画

【プロモーション概要】

実施メニュー

インストリーム広告、アウトストリーム広告

実施期間

2015年12月18日〜2016年1月4日

動画素材

新日本プロレスリング様にてご用意頂いた15秒素材を使用

※アウトストリーム広告は、マイクロアド社 BLADE VIDEOを実施

【本施策のポイント】

インストリーム広告だけでなくアウトストリーム広告の実施

配信先媒体とコンテンツの親和性

上記について、詳しくお伝えいたします。

表1のように、インストリームとアウトストリーム広告の各項目別の単価見る際には、複数の指標によって効果測定をしていきます。
視聴完了単価とは、動画広告をユーザーに1回視聴完了させるためにかかっている広告費を指し、広告費の総額÷視聴完了件数で算出しています。この単価が安いということは、限られた広告費の中で、より多くのユーザーに広告動画によるメッセージを伝えられるということになり、CMの様な刷り込みでの認知効果が期待できるということを表します。
クリック単価とは、動画広告を視聴しているユーザーに対し、設定しているWEBサイトへのリンク領域のクリックが1回発生するために掛かっている広告費を指し、広告費の総額÷クリック数で算出します。クリックさせることでWEBサイトに誘導し、サイト内でサービスの訴求をすることが目的の場合、この単価が安いほど効果が良いと言えます。

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【表1】

※マイクロアドプラス作成

本施策では、新日本プロレスの公式動画サービス『新日本プロレスワールド』への誘導を目的としており、ダイレクトマーケティングを意識した目標設定となっておりました。
当初、インストリーム広告を実施されたいとの要望がございましたが、サイトへの誘導を目的とした場合において、より効率的なプロモーションを行うべくアウトストリーム広告の提案に至りました。

インストリーム広告において、動画の視聴完了単価を安く抑えることは可能ですが、ユーザーは広告再生後の動画を視聴することを目的に来訪しており、且つ15秒以下の素材に関しては動画をスキップすることが出来ないという特徴もあります。今回の施策では、インストリーム広告ではサイトの誘導までは至りにくく、ユーザーにストレスを与えることにも繋がるのではと予測を立てました。
一方アウトストリーム広告は、ユーザーが目的としているサイト内の記事を閲覧しながら広告に接触するため、インストリーム広告と比べた際にユーザーに与えるストレスが軽減されるとともに、目的であった広告再生終了後のユーザーの動画視聴に繋がると考えました。
したがって、本プロモーションにおいてはアウトストリーム広告を利用し、プロレスに対して親和性の高い媒体をピックアップし配信する手法をとりました。
特に、プロレスというコンテンツをプロモーションするにあたり、そのコンテンツが急に広告として表示されても違和感無く受け取れるユーザーへの配信を行う必要があるため、アウトストリーム広告に参画する媒体からスポーツ系媒体を抽出し、その記事ページに対して配信を行いました。配信先媒体としてピックアップしたスポーツ系メディア中でも、NUMBERは定期的にプロレスの特集記事が組まれており、このプロモーション期間内にも記事がアップされる予定であったため、記事アップ前後での数値を下記のように比較いたしました。

記事アップ前後比のグラフ

【記事アップ前後比のグラフ】

※マイクロアドプラス作成

記事アップ前後の平均視聴完了率を比較すると、記事アップ後の平均視聴完了率は50%を超え、記事アップ前に比べると倍近くの数字となりました。さらに、目的としていたウェブサイトへの誘導数が倍以上に伸びており、媒体側のコンテンツに合わせて出稿をすることで動画広告のパフォーマンスを高められることがわかりました。
要因は、「ユーザーが求めている情報を広告として適切なユーザーに届けることができた点」、「広告の配信方法がユーザーのサイトの利用を極力妨げない形で設定されている配信枠」にあると言えます。

hikaku_Gragh_By_MicroAdPlus

【インストリーム広告・アウトストリーム広告数値比較】

※マイクロアドプラス作成

上記の結果は、広告と配信先メディアのコンテンツの親和性を高めることにより得ることが出来たと言えるでしょう。

本事例は、アーティストの楽曲のリリースプロモーションであれば、音楽情報サイトで特集が組まれている記事ページや、リリースされた楽曲のレビューが掲載されている面に対しての配信、ファッションブランドのプロモーションであれば、読者モデルが開設をしているブログメディアへの配信など、幅広いジャンルに対して転用が可能であると考えます。

動画広告とターゲティングが可能にする新しいユーザーコミュニケーションの設計

クライアントのブランドイメージを損なわずに効果的なプロモーションを行うということは広告業界における永遠のテーマではないかと感じております。
その際に鍵となるのは、”いかにユーザーコミュニケーションを設計していくか”という点ではないでしょうか。
本章では、今回のプロモーションの結果を踏まえて動画広告の今後について推察をしてまいります。

前述の新日本プロレスリング様でのプロモーション事例は、ユーザーにとって従来疎ましい存在とされることの多かった動画広告を、動画素材と媒体の親和性を高めることによって価値のある情報に変えることが出来るということを体現したプロモーションになったのではと感じています。
また、現在の動画広告において、媒体側が動画の制作込みでサービスを提供するパッケージが組まれるなど、主に媒体発信で広告の配信先となる媒体に合わせたコミュニケーション施策が重要であるという認識が浸透しつつあります。
今後の動画広告は、DMPを用いた多様なデータを掛け合わせたターゲティングを行うことで、『メディア×動画素材×ターゲティング』といった、より細やかなユーザーとのコミュニケーション設計が可能となるでしょう。
例えば、特定のスポーツ選手に関する記事を閲覧している際に、その選手をスポンサードしている企業の動画広告が再生され、広告をクリックすればECサイトで購入までさせるユーザーの導線を生み出すことが出来るのです。
実現に向けては、高精度なターゲティングに耐えうるだけの広告在庫の確保が必須となりますが、ユーザビリティの観点から広告枠の設置に懐疑的な媒体の運営者も多く、思う様に広告在庫の開発が進んでいないといった課題もあります。
こういった課題の解決には、動画広告に携わる全ての企業がよりユーザーに好意的に接触を行って貰える広告とは何かと考え、メニュー開発を進める事が必要だといえます。

ユーザーとのコミュニケーションの形を考え続けることが、広告の価値を創造し技術の進歩を促進させる原動力となります。単なる情報発信ではなく、その時々に適した広告主とユーザーの関係を築く手段を編み出していくことが、今後のマーケティングにおける意義であり、動画広告が先導するシーンではないでしょうか。

ABOUT 増田 貴元

増田 貴元

株式会社 マイクロアドプラス

1986年 10月 24日生まれ、千葉県出身。

大学卒業後、ベンチャー企業にて純広告媒体のバイイング、WEBサービスの企画、営業に携わったのち、2014年株式会社マイクロアドに入社。

DSPをはじめとしたアドテクノロジーの提供、マーケティングの支援を行う株式会社マイクロアドプラスへ配属。以降、企業のWEBマーケティングのプランニングを担当する。