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広告キャンペーンにおけるCO2排出量の測定が業界の優先課題に

PwCのシニアアソシエイトでウィメン・イン・プログラマティック・ネットワークの共同創設者でもあるエミリー・ロバーツ氏は、10月に、ある興味深い問題を提起した。これに対する業界の反応とともに、広告業界の炭素排出量測定がなぜ優先されるべきかを、彼女が詳しく説明する。

 

デジタル広告によって排出される炭素排出量のトラッキングが業界の優先課題に挙げられていることは実に興味深いことだ。アンケートでも、対象者の半数近くが、広告業界が注目すべきことの第1位に、炭素排出量を挙げている。

 

最近まで、デジタル広告のカーボンフットプリントはほとんど見過ごされてきた。しかし、この1年、デジタルエコシステムが環境に与える影響が業界全体で認識されるようになり、その注目度も勢いを増しつつある。

 

プログラマティック広告は、細分化された複雑なエコシステムであり、その取引の増加はますます多くのエネルギーを必要とすることを意味する。そして、必然的に、地球に与える被害もさらに大きくなる。

 

典型的なオンライン広告キャンペーンでは、5.4トンの炭素が排出される(出典:グッドループ)。これは英国の消費者1人が1年間に排出するCO2量の半分近くに相当する(出典:グッドループ)。また、動画広告の100万インプレッションは、米国ボストンと英国ロンドン間を飛行機で往復する人のカーボンフットプリントに等しい(出典:スコープ3)。

 

問題を解決しようとする前に、何が問題なのかを知る必要がある。そのため、業界が炭素排出量の測定を優先事項と捉えているのは、本当に心強いことだ。例えば、筆者が所属するPwCのチームは「アド・ネット・ゼロ」運動に積極的に参加しており、広告業界と協力して、業界の炭素排出量の定義や測定、削減などに取り組んでいる。

 

この分野では、まだまだやるべきことがたくさんある。英国のマーケターを対象にした最新の調査では、10人に7人(71%)がデジタルマーケティングキャンペーンの炭素コストを追跡していることがわかった。しかし、排出量の調査に用いられている技術は、まだ発展途上で、83%が推定値や計算に頼っているのが現状だ。さらには、標準化も進んでいないため、独自のソリューションや内製開発のソリューションが広く使われている。

 

多くのソリューションがすでに存在している。しかしスコープ3は大量のデータを収集するのに苦労しており、グッドループは、マイキュー(MiQ)などの企業とともに、そのデータを活用したソリューション(グリーン・メディア・プロダクツ)を開発中だ。

 

そのため調査の中で、ブランドとエージェンシーのマーケターの84%が、業界は炭素排出量削減のためにもっと努力すべきだという見解を支持したことも意外ではない。

 

しかし次の段階に進むには、もっと問題を深く理解する必要がある。英国では、ブランドマーケターの3分の2近く(63%)とエージェンシーの10人に7人(70%)が、デジタルマーケティングが環境に与える影響を効率的に理解し、炭素排出量を削減するためのスキルと自信をマーケターに与えるためには、サステナビリティ教育やトレーニングプログラムの機会がまだ十分ではないと考えていた。

 

それでも、まず問題を正しく認識することは最初の大きな一歩となるだろう。それによって、今後数カ月か数年のうちに、広告業界がこの領域で大きな飛躍を遂げることを筆者は期待している。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。