×

OOHの成功はどのように測定すべきか -現状と未来-

OOH(屋外広告)は、技術や社会の進歩に伴い独自の進化を遂げてきた。OOHは最も歴史の古い広告形態の一つだが、その成長は止まることなく、今後も多くの市場で飛躍的な発展を遂げると予想されている。

 

OOHは従来から、ブランド認知の向上に特化したチャネルと考えられてきた。一週間で英国人口の90%にリーチするとの調査結果もある。だが技術の進歩によって、OOHは従来の目的を超えた用途でも利用され始めている。プログラマティック・デジタルOOH(pDOOH)では、データに基づくターゲティングやクリエイティブの動的配信も実施可能になった。OOHを広範なマーケティング戦略の中に組み込むという点では、確かにpDOOHの開発は有望だが、OOHの効果をどのように測定するかという重要な課題はまだ残されたままだ。

 

OOHにとっては、ロケーションこそが生命線だ。オーディエンスの人口統計データやアイトラッキングを用いたアテンション測定の研究は、潜在的なインプレッションの算定には役立つが、広告の成果については、経験値に基づいて推測しているにすぎない。例えば、ロンドンのストラトフォード駅に設置されたビルボードは、年間1400万人の駅利用者に見られる可能性があるが、何人の通勤客が実際に広告を心に留め、エンゲージしたかを測定することは、ほぼ不可能だ。幸いなことに、OOHの画質と配信能力が向上したのと同様、技術の進化によりOOHの成果を測定する方法も進化している。pDOOHは、迅速な広告展開を可能にするだけでなく、OOHの測定を革新する強力なツールであることも証明されている。プログラマティックへの移行は、広告主がデータと機械学習を活用し、広告キャンペーンを強化するのを支援するだけでなく、OOHをマーケターのオムニチャネル戦略のひとつに位置づけ、このチャネルの成果を測定する方法を再構築することにもつながっている。

 

OOHのプログラマティック革命が本格化するなか、現時点における屋外メディアキャンペーンの測定方法や、このチャネルがもつ今後の可能性について、業界の専門家に語ってもらった。

 

DOOHの役割は、ブランディングのためのファネル上部メディアに限定されるわけではない

DOOHの測定手法は、オムニチャネルキャンペーンのメディア戦略において、DOOHをいつ、どのように投入するかというマーケターの認識を変えつつあります。コンバージョンリフトやフットフォールなどの測定機能は、DOOHがブランディングのためのファネル上部メディアの役割だけではなく、ファネル下部のパフォーマンスマーケティングの役割も期待されていることを示しています。特に、DOOHに接触したオーディエンスが、他のメディアで再びエンゲージされた場合に、期待される成果を示すでしょう。

 

ヤフー グローバルDOOH責任者、ステファニー・グトニク(Stephanie Gutnik)氏

 

データがOOHの未来をけん引する

技術の進展により、OOHやDOOHのキャンペーンはより詳細で正確なレポートを得られるようになりました。例えば、デジタルビルボードでは、表示されたインプレッション数や、エンゲージしているオーディエンスの属性を広告主がリアルタイムで追跡できるようになっています。そして、このようなデータを用いることで、ロケーションによって異なるオーディエンスに、どのようなメッセージやビジュアルを表示するのが最適か把握できるようになり、次回以降のキャンペーンの最適化も図れるようになります。

 

OOHの未来は、よりデータドリブンでターゲットを絞ったキャンペーンになる可能性が高いでしょう。キャンペーンをリアルタイムで測定し、追跡できるようになったことで、広告主はメッセージやビジュアルを最適化して、ターゲットとなるオーディエンスにより効果的にリーチできるようになります。さらに、AIと機械学習の活用により、広告キャンペーンは、「オーディエンス全般」を対象にするのではなく、よりパーソナライズされ、個人に合わせたものになるでしょう。これによって、広告予算をより効率的に使用し、ROI(投資対効果)を改善できるようになるはずです。

 

75media オペレーション責任者、アレックス・シンプソン(Alex Simpson)氏

 

価値を高めるロケーション、設定、データ要素を把握する

DOOHの測定における最も大きな変化は、パネルデータにユーザーの位置と時間を記録できるようになったことです。これにより、オンラインにおけるブランドリフトやリーチの測定と同様に、OOHのターゲティングキャンペーンも、接触・非接触を分けて測定できるようになりました。この新しい手法により、マーケターはより大きな効果やリーチをもたらすキャンペーンの要素(クリエイティブ、データトリガー、オーディエンスデータなど)を把握し、より詳細に分析できるようになります。さらに、プレイアウトデータ(ロケーションと時間)をパネルデータと突合する手法は、小売店の購買データや来店データなどのデータセットにも拡張されています。つまり、価値を生むロケーション、配信設定、データ要素などを、すべて把握できるということです。これはすべてパネルベースですが、実測されたプレイアウトデータとパネルデータを組み合わせることで、マーケターはファネル全体を通して、広告価値を正確に測定することができるのです。

 

Sage+Archer(Vistar Media傘下) CEO、ディーデリック・ウーベルズ(Diederick Ubels)氏

 

取引上の通貨(カレンシー)とされていた指標が、今や効果測定に不可欠なものに

DOOHにプログラマティック技術が導入されたことで、マーケターはDOOHを単独のチャネルとしてではなく、オムニチャネル戦略の一環として計画、購入、測定、最適化することが可能になりました。そして、以前はカレンシーとして使われていたインプレッションなどの指標が、今ではパフォーマンスの測定にも使われるようになったのです。さらに、DOOHの効果は、複数のタッチポイントで測定できるようになり、バイヤーは目標を達成するためにリアルタイムでメディアを調整できるようになりました。伝統的なOOHやDOOHのキャンペーンを活用してブランド認知を促進しつつ、プログラマティックを併用して、ファネル下部のコンバージョンも獲得することが、あらゆる業種の広告主にとって主流の戦略となっているのです。

 

ジェーシードゥコー UK データおよびインサイト責任者、クリス・フェルトン(Chris Felton)氏

ABOUT ExchangeWire.com / Supported by CARTA HOLDINGS

ExchangeWire.com / Supported by CCI

本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。