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アドテク業界の次世代エースに聞く:もうそろそろ私たちに任せなさい![サプライ編]

 

ExchangeWireJAPANでは、これまで業界のエース古豪、さらにはムードメーカーなど、様々な人にフォーカスをしてお話を伺ってきた。

業界も、これをリードするヒトも大人化しつつあるなか、次世代を担う若手にフォーカスをし、若い目から見た業界がどのようにみえているのかについて、掘り下げてみることにする。

 

 ExchangeWireJAPANが、次世代を担うデジタル広告・アドテク事業者の若手にフォーカスをし、どのようにこの業界や自身の仕事と向き合っているのかなどについて、インタビューをするシリーズ。

第一弾の今回は、サプライサイドで媒体社の収益化支援を行っている事業者の皆様を対象にお話を伺った。

 

お集まりいただいたのは、以下の方々である。皆、入社歴も浅く各事業者で次世代を担うエースとして選ばれた方々である。

 

・株式会社ジーニー サプライサイド事業本部 プロダクトマネジメント部 リーダー 松田 昌也氏(写真右端)

 ・株式会社fluct メディアグロース本部 リーダー 武村 湧太氏(写真右から二番目)

 ・株式会社FLUX メディアソリューション本部 事業管理部 業務推進グループ グループリーダー 石澤 駿一氏(写真左から二番目)

 ・AnyMind Japan株式会社(株式会社フォーエム) Publisher Growth事業部 App Growth,  Senior Manager  佐藤 立氏(写真左端)

 

 (聞き手:ExchangeWireJAPAN 野下 智之)

 

 

―まず、自己紹介をお願いします

松田氏:ジーニーの松田と申します。2020年に新卒で入社して、エンジニアとしてチャットボットの開発業務、データサイエンス業務を経て、1年程前から現在のサプライ事業部のプロダクトマネージャーとしての業務を担当しております。本日はよろしくお願い致します。

 

武村氏:fluctの武村と申します。私は、パブリッシャー様向き合いのコンサルティングを行う部署に所属しており、チームリーダーをしています。

私は昨年の年初に入社しました。前職は建築業のメーカーで、3年ほどの勤務経験があります。

 

石澤氏:FLUXの石澤と申します、よろしくお願いします。私は昨年5月に入社し、その後1年間はパブリッシャー様向き合いのチームで働いていました。今年5月から業務推進グループ(当時はイネーブルメントチーム)のマネージャー職として、Header BiddingのBidder(SSP、DSP)向き合いの業務や、新規施策の立案、プロダクト周りの業務などを手掛けています。

  

佐藤氏:AnyMind Japan及びフォーエムの佐藤と申します。フォーエムのアプリ領域での事業責任者をしております。私も2020年卒の代で、新卒で人材紹介会社に入社し1年ほど勤務した後にAnyMindに入社し、業界歴は現在3年目です。よろしくお願いいたします。

  

―皆さん、なぜアドテク業界を選んだのでしょうか、どうして今の会社に入られたのでしょうか?

松田氏:学生時代からデータを扱うことに興味を持っていたので、大量のデータがあり機械学習も取り入れられているアドテク業界に興味がありました。最終的に弊社を選んだ理由としては、マーケティングファネルの全ての段階でプロダクトを提供して、顧客のマーケティング活動を一気通貫で支援するというビジョンに惹かれたからです。

 

武村氏:自己紹介でも申し上げましたが、前職では全く別の業界での仕事に従事しておりました。業界の特性もありましたが自己の成長や業界としての変化を考えたときに、前職では変化を感じられないと感じたため、転職する際はweb関係やIT関係にいこうと漠然と考えていました。fluctに転職するまで海外留学とwebの勉強をしていたこともあり、知識を生かせるウェブ関係の会社を探しており、転職のエージェントさんからfluctを紹介いただき面接を受けたのがきっかけです。

 

石澤氏:元々インターネットのコンテンツが好きだったので、それを支えられるような業界に就きたかったからです。小さいときからインターネットに触れており、それが高じて学生のときはウェブメディアの運営に携わっていました。そのとき、アドセンス(Google AdSense)をただ貼っているだけだとイマイチ期待通りの収益性が伸びず、これではいいコンテンツを発信できるほどの資金にはならない、デジタルコンテンツが発達していかないと、と考えました。その為、収益性の改善ができる業界はどこだろうか、と考えてアドテクの業界に入りました。

その中でもFLUXを選んだのは、会社として挑戦をしていく姿勢を感じた為です。スタートアップに入ってみて自分のスキルを伸ばしてみたい、という思いもありました。

 

佐藤氏:私の場合は、AnyMindに入社しフォーエムへ出向、という形でしたので、自分でアドテク業界を選んだ訳ではありません。AnyMindの成長性や勢いに惹かれて、一緒に会社を大きくするところをやってみたいと思い入社しました。実際に入社時はグローバルで700人ほどだった社員数も、いまは1400人超になっているので、会社が大きく成長する過程を体感できるのは本当に楽しいです。少し話が逸れてしまいましたが、そういった経緯で、結果的にアドテク業界に来ることになりましたが、変化が多く、かつ、顧客のニーズを拾いながら事業開発ができるので、非常に楽しい業界だと感じています。前職の仕事も楽しかったのですが、伸びている今のフェーズでアドテク業界に参入できたことは非常に良かったなと思っています。「お客様から聞いた悩みを社内に持ち帰り、サービスに落として、再度提案しに行く」という事業開発の一連の経験を積むことができて、非常に楽しいです。今も、お客様や現場の実際の声を聞いた上で、新しい価値を提供できるサービスを作ることを大切にしています。

 

 

―今回皆さんは、会社の若手を代表してこの場にいらっしゃっています。なぜ自分が選ばれたと思われますか?

松田氏:自分はプロダクトマネージャーとしてプロダクトに対して責任を負う立場ですが、事業部全体の数値にもコミットしている姿勢が一定の評価を得ているのかなと思います。直近ではプロダクトマネジメント部のリーダーを務めることにもなりましたので、今まで以上に当事者意識を持って顧客の求めるプロダクト開発をリードしていければと考えています。

 

武村氏:恐れ多いですが、私の仕事に対する評価と今後に対する期待の為だと考えています。まだこの業界に入ってからそんなに長く働いている訳では無いですが、前職での経験やスキル、fluctに入ってからの仕事内容も認めて頂き、リーダーというポジションも任せて貰っています。会社からの期待に添えるように今以上に貢献して会社の成長の一役を買っていきたいと思っております。

 

石澤氏:まず、FLUXはパブリッシャー経験者が多い組織であることが特徴の一つです。私自身、新卒からメディアのマネタイズ業務に従事し、その経験を活かしてFLUXにジョインしました。グループリーダーポジションのメンバーの中で比較的若手でありながら、パブリッシャー側の経験という土台があり、顧客目線に立った提案を日々行えている点を評価いただいているのでは、と感じています。更に今のポジションは、弊社パブリッシャー様向けソリューションを提供する部門の責任者で取締役の平田が「自分だったらこのポジションをやりたい」と言っているところでして、そのポジションにいる自分に、今後の期待も込めて行ってこいと言ってくれたのかな、という気がします。

 

佐藤氏:手前味噌で恐れ入りますが、今の役職と年齢を客観的に見て、活躍している若手として適しているのかなと思っています。今の役職になれているのは、大切にしている「自分自身の仕事へのスタンスとして、社長のつもりで、責任を持って業務に取り組み、意思決定をする」というスタンスを評価してもらえているからかなと考えています。フォーエムとしては、まだまだWEBメディア支援領域の方が事業が大きいので、僕が引っ張っている領域は全体の一部に過ぎませんが、今後は全社を引っ張っていかないといけないと勝手に感じています。

 

 

―社内外で、「この人はすごい!」と思える方を教えてください

松田氏:オープンソースのヘッダー入札ソリューションPrebidの創設者です(元AppNexusのMatt Kendall氏)。業界の大多数にメリットがあるシステムを考案して実現した点が改めて凄いなと感じています。現状の自分とあまりに乖離しているので参考になりませんが。普段は競合優位性のあるプロダクトを作るということにフォーカスしていますが、最終的に目指すべきは業界の大多数にメリットがあるシステムを作って結果的に自社も大きなメリットを享受している状態だと考えています。

 

武村氏:fluctの代表取締役CEOの望月と代表取締役COO藤井です。二人ともに共通している点としては常にメディアファーストであること、業界への理解度や一つ一つの事柄に対しての熟練度がとてつもないと常日頃から身に染みております。

またそれぞれが役割を棲み分け出来ていることもあり、fluctが一つ会社として機能していく上での相乗効果があるように思います。私がfluctという会社に在籍し始めてからも会社としての成長を感じる機会が何回もありました。

私との違いに関しては差がありすぎて比べるのもおこがましいです。これからも努力して少しでも近づければと思います。

 

石澤氏:やはり僕たちの部署の憧れのメンバーは、FLUXの取締役 CBDOである平田と、VP of Publisherである柳田です。何をするにしても、頭の回転と判断力が段違いだなと思っています。更にアドテクへの理解度やそもそもの興味も誰と比べてもかなり深く、現状はまだまだかなわないなと思わされることも多々あり、目標です。

また、自分の元上長に下田という人間がいるのですが、彼の吸収力やコミュニケーション力、推進力は本当に自分にないものですので、見習って吸収しようとしています。

 

佐藤氏:直属の上長であり、AnyMindの執行役員兼フォーエム取締役を務める綿本のことはすごいと思う場面が多いです。私が言うのもおこがましいですが、役職に就くと自分の意見を過信して物事の本質を見られなくなる方もいると思います。しかし綿本は、どの場面においても本質を見て、1次情報に耳を傾けて、判断ができるので、すごいと感じています。自分の場合は、まだまだ立場や状況に惑わされがちなので、綿本のようなブレない視点を持っていきたいと思っています。

 

 

―感じておられる業界の課題について、お聞かせください。また、5年後にこの業界はどうなっていると思われますか?業界をどのようにしていきたいとお考えですか?

松田氏:先ほどの質問への回答と重複する部分があるのですが、業界のデファクトスタンダードがほとんど海外によって作られている点に課題を感じています。業界の標準となるようなルールを作ることができる集団とそうでない集団ではビジネスをやっていく上で大きな差ができることは明白なので、できる限りルールを作る側に回り業界を盛り上げていければと考えています。

 

武村氏:業界としては一つのターニングポイントを迎えている状況なのかなと思います。3rd party cookieが使えなくなったり、AIの発展によりChat GPTを始めとするAIテクノロジーが出たり、景気もいいとは言えない状況で円安も進んでいます。会社としてだけでなく業界が生き残れるように試行錯誤していく必要があります。

私の意見としては海外へのグロースという軸を持ちつつ、現在まで守ってきた日本の市場を引き続き守っていく必要があると感じています。日本の市場自体が他国からは文化・言語等の要因で攻められにくいという事もあります。またその中で私はfluctという会社がしっかり存続しつつより成長することに貢献したいと考えています。

 

石澤氏:アグレッシブな姿勢を中々取れない点が課題だと感じています。iOSの普及率について、日本は高い方だと思いますが、Cookielessソリューションは日本から海外に向けて展開しているプロダクトはそこまで多くない印象です。国内でもまだまだ盛り上がっているなという実感は無く、海外が盛り上がるChrome規制後に何か動きだしそうな感じがあります。今後は日本初のソリューションをどんどん海外に展開できるよう攻めていきたいですし、そういった挑戦をサポートして、どんどん盛り上げていきたいと考えています。

 

佐藤氏:アプリ業界の話になりますが、海外パブリッシャーが続々と日本進出してきている中、日本のパブリッシャーが海外のシェアを取りに行けていないことや、それをサポートできる会社がまだ生まれていないことに危機感を持っています。言わずもがなですが、中国を中心に、海外パブリッシャーの日本における存在感は増しており、今では日本国内のインプレッションの50%以上が海外パブリッシャーのものだとも言われています。その一方で、日本のパブリッシャーは海外へシェアを広げるためのトライができておらず、いわば「ファーストペンギン」がいない状態なのかなと思います。このままでは、海外における成功の機会を逃してしまうだけになるので、そこを我々のようなマーケティング領域が得意な会社がサポートしていかなければならないと思っています。そのため、その成功例を作った会社がヒーローになると思いますし、最初に成功例を出せた会社が進出する領域でのシェアを獲得していくと考えています。その結果、日本のパブリッシャーが海外においてシェアを広げていくような未来を実現できたら嬉しいと思っています。

 

<編集後記&総括>

激動のアドテク業界の中で「人」にフォーカスすることにも注力しているExchangeWireJAPANが、今の業界を実務面で担っている若手に注目した。

まずは、パブリッシャービジネスを支える、各社の注目の若手4人へのインタビューをしてみたが、履歴書とオーバーラップするフレッシュなコメントの節々に、各々が抱えている課題感や、自己実現の想いを垣間見ることができた。

インタビューでは「とはいえ、大手プラットフォーマーからスカウトがあったら行きますよね?」や、「もう辞めたい!って思ったことはありますよね?」など、少々意地の悪い質問もしてみたが、これに対してはとてもスマートなコメントでかわされた感がある。

想像するに、「日本発で世界を変えてみせる!」という彼らに共通する強い野心を実現するために、まずは偉くなるために直属の上司を絶賛することが近道であるというサラリーマンとしての合理的な判断なのであろう。

大変心強い限りである。

ExchangeWireJAPANでは、次世代を担う若手を応援していくとともに、彼らの今後にも注目していきたい。

また今回のサプライサイドに続き、今後は媒体社や広告事業者、マーケターなど、この業界の次世代を担う若手にも注目していく予定である。

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。