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重要性を増す、エージェンシーとSSPの緊密な関係

今回の独占記事では、グループMのマネージングパートナーであり、「The Wire Global 2021」の審査員でもあるエズラ・バハー氏が、エージェンシーとSSP(サプライサイドプラットフォーム)の強固な関係がかつてないほど重要になっている理由を説明し、戦略的コラボレーションの促進に必要な中核的要素について解説する。

 

プログラマティック広告業界は、黎明期から、透明性とプライバシーにまつわる課題に直面してきた。原因は、複雑で雑然としたエコシステムのなかに、たいていはバイサイドからは見えない、多くの中間業者が介在することだ。プログラマティック黎明期には、アドエクスチェンジが、インベントリ(広告在庫)に対して権限をもつパブリッシャーと、優先的あるいは独占的な関係を結ぶことが多かった。だが、ヘッダー入札の開始によって、エクスチェンジ間の差別化要因は大幅に減少し、また同じインプレッションが多くの別のソースから購入できるようになったことで、サプライサイドのコモディティ化が進んでいった。

多くのDSP(デマンドサイドプラットフォーム)は、バイヤーのニーズにあわせて機能を調整し、パスの重複、不一致、統合品質、SPO(サプライパス最適化)などを支援するツールを導入した。また一部のDSPは、入札重複を修正する機能を有している。これは、サプライソースから送られた重複する入札リクエストを、入札ストリームのフィルタリングによって検出するもので、ランダム入札メカニズムのテクノロジーを採用している。トレードデスク(The Trade Desk)のようなDSPは、バイヤーがカスタム入札アルゴリズムを構築して、サプライへの最も直接的なルートを選択し、独自の広告フォーマットのオファーができるような機能も実装している。

一方、IAB(インタラクティブ広告協議会)が支援するads.txt、sellers.json、supply chain objectなどのイニシアチブは、より高い透明性を提供する。これによりバイヤ

エズラ・バハー氏、グループMマネージングパートナー

ーは、DSPが記録する最終的な取引結果だけでなく、個々のインプレッションで発生した、すべてのトランザクションを精査することができる。

まだ完璧な方法とは言えないが、バイヤーやエージェンシーは、インプレッションの透明性や品質向上に向けたこれまでの業界のあらゆる取り組みと同様に、こうしたイニシアチブも大いに支持している。現在のトレンドとして、こうした努力に加えエージェンシーは、一部のSSPと緊密に連携することでサプライサイドをコントロールしてサプライ戦略をさらに改善しようとしている。単にインプレッションの最適経路を発見するだけではなく、それによってさまざまなアドバンテージを獲得できるからだ。

エージェンシーの視点から見ると、SPOの主眼は、単一のプラットフォームでプログラマティック広告のサプライ全体を管理することではない。むしろ重要なのは、エクスチェンジとのパートナーシップを合理化、統合し、独自のインベントリアクセスを提供する企業と提携し、アクセスポイントの重複を減らし、リセラーからの購入が持つ意味を理解し、プレミアムインベントリパートナーへの直接的で効率的なパスを発見することだ。SSPはきわめて競争の激しい環境に置かれているが、筆者はこのような統合の取り組みの戦略的価値を強く信じている。このようなパートナーシップは、プラットフォームパートナーが、満たすべき高い基準を常に更新しつづけるからだ。

統合のアプローチは通常、特定のスコアリング手法に基づいており、これはインベントリの規模や質、単価、ダイレクト指標、ブランドセーフティ評価のための情報提供依頼書(RFI)などとセットになっている。また、パブリッシャーと協力することで、インベントリの有効なマネタイズ方法や、セラーにとってもっとも有利なエクスチェンジが何かなどを理解しておくことも重要だ。

このようなエージェンシーとSSPの戦略的コラボレーションは、概ね、3つの主要な柱で構成されている。

 

透明性:マーケットプレイスの進化と成熟に伴い、デジタルメディアにおけるプライバシーと透明性が、セルサイドにとってもバイサイドにとっても、進むべき道を示す指針となっている。メディアに対する地位が確立していないセルサイドプラットフォームの大半は、時とともに透明性を求めるバイサイドのニーズに対応し、すべての取引に関連するコストとインセンティブについて、完全な透明性を提供するようになってきた。また、コンテクストに応じたブランドセーフティ対策や、厳格なサプライ審査のために実施されている業務についても理解しておくことが必要だ。オンボーディングと日々の業務の両方で、すべてのサプライが経るプロセスに関して、一般に公開されている概要資料や詳細なドキュメンテーションに目を通しておくことは、この目標を達成する役に立つだろう。

 

入札における優位性:エクスチェンジパートナーの統合により、バイヤーやエージェンシーは、支出の増加に応じてエクスチェンジから料金の割引を得るという形で、クライアントのために入札時の価格優位性を得る交渉ができるようになった。こうして費用対効果が向上すれば、エージェンシーはオークションでより多くのメディアに再投資することができ、結果的に、成約率の向上にもつながる。さらに、SSPは機械学習アルゴリズムやビッドシェーディングなどの新機能も提供している。オークションで優位に立つためのこうしたダイナミクスは、バイヤーが支出を抑えながら、高い投資回収率(ROAS)を達成するのに役立つ。

 

オペレーションの効率化:3つめの柱は、エージェンシーが、SSPの協力を得て、パブリッシャーとの交渉やアクセス、プログラマティックチームによるアクティベーションをいかに効率化、簡素化できるかだ。グループMでは、プレミアムパブリッシャーとの直接契約を優先し、SSPとの緊密なパートナーシップをベースに、パブリッシャーの垣根を越えたインベントリを、広告フォーマットやプライシングを基に適切にパッケージングし、運用効率を高めている。また、バイサイドツールの共同開発にも取り組んでいる。これまでバイヤーは、パブリッシャーが販売する広告ユニットごとに、個別の取引IDやプログラマティック・ダイレクト・インテグレーションなどを設定する必要があった。そこで、グループMでは戦略的SSPとのパートナーシップに基づいて、複数のパブリッシャーの類似した広告フォーマットを1つの取引IDでパッケージ化することにした。これにより、バイヤーの摩擦を軽減し、運用に要する時間を節約している。

エージェンシーにとっては、Cookieレスの世界で、将来にわたってオーディエンスアクティベーションを提供する能力を維持することも重要だ。SSPパートナーと協力し、ポストCookieのオーディエンスアクティベーション戦略を策定して、進化したオーディエンスアプローチで規制の変化に迅速に対応する。こうした姿勢は、ウォールドガーデンを超えた健全なオープンウェブのなかでも機能するオーディエンスターゲティングの選択肢を、クライアントとパブリッシャーに提供する上で不可欠と言えるだろう。

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本記事は、ExchangeWire.comに掲載された記事の中から日本の読者向けにCARTA HOLDINGSが翻訳・編集し、ご提供しています。

株式会社CARTA HOLDINGS
2019年にCCIとVOYAGE GROUPの経営統合により設立。インターネット広告領域において自社プラットフォームを中心に幅広く事業を展開。電通グループとの協業によりテレビCMのデジタル化など新しい領域にも積極的に事業領域を拡大している。