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メディアの内側から、業界を支える側へ ― Taboola安藤氏が語る、AI時代のパブリッシャー再成長戦略[インタビュー]

パブリッシャーを取り巻く環境は近年大きく変化し、これまでの成功モデルが通用しにくくなる中で、メディア企業には新たな戦略が求められている。2026年Taboolaへ入社し、パブリッシャー戦略推進部長に就任した安藤 雄二氏は、約20年にわたりメディア業界の変化を最前線で見続けてきた。パブリッシャー、出版社、デジタルメディアなどで培った多様な経験をもとに、業界の現状と展望について聞いた。

(Sponsored by Taboola)

 

―自己紹介をお願いします。

 

Taboola Japan パブリッシャー戦略推進部長の安藤 雄二と申します。

AOL Japan日本法人のカントリー・マネージャー、Verizon Mediaの日本法人メディア事業の統括、朝日新聞出版でDXIP戦略本部長と社長補佐役の兼任など、これまで約20年、メディア業界で仕事をしてきました。今回縁があって入社したTaboola Japanでは、メディア側に携わってきた経験を活かして、クライアントとなるパブリッシャー企業との連携を推進していく役割を担います。

もともと私はデジタル業界の第一世代ではありませんが、インターネット広告が発展していく過程や、メディア企業が変化していく様子を現場で経験してきました。新しい技術が登場すると、既存のビジネスモデルも変わり、新たなチャンスも生まれます。そうした変化そのものに面白さを感じながら仕事を続けてきました。

 
 

―長く携わってきた「メディア側」から「メディアを支援する側」に場を移されました。

 

Taboolaに入社を決めた理由の一つは、これまで培ってきた経験をより広い範囲で活かしたいと思ったこと、そしてそれを推進するためのテクノロジーを持っている会社であると思ったからです。
前職ではメディア企業の「内側」で事業改革やデジタル活用を進めてきました。その中で、自分がメディア側で培ってきた知見を、パブリッシャーの「外側」から活かすことで、業界全体と向き合うことができるのでは、と考えるようになりました。パブリッシャー側がテクノロジーやプロダクトを活用する手助けをし、メディア業界の発展に貢献したいと思っています。

 

 

Taboolaは広告収益の最適化だけではなく、コンテンツレコメンデーションやユーザーエンゲージメントの向上など、パブリッシャーが抱えるさまざまな課題に向き合うためのテクノロジーを持っています。長年メディア側で仕事をしてきたからこそ、パブリッシャーが求める理想やこだわり、一方でビジネスサイドでの葛藤などは大いに理解できます。自分なりの切り口で支援していきたいですね。

 
 

広告依存ではなく、メディアブランドの価値が収益を作る

 

―約20年、オンライン広告販売の成長とともにパブリッシャーの変化を見てこられました。その歴史をどのように振り返りますか。

 

私はアメリカの専門メディアから業界に入りました。雑誌や新聞といった紙媒体の勢いがあった時代に比べると、私が入った頃はバナー広告が売れていて、記事タイアップといったものがでてきていました。その後、アドネットワークが登場し、さらにプログラマティック広告へと進化していったことで、広告の売り方も大きく変わりました。

 

ただ、パブリッシャーの視点から見ると、プログラマティック広告だけで十分な収益を確保することは簡単ではなく、デジタル広告プラットフォーム側は景気がよくなっていく一方で、その進化に対応できるメディアは多くありません。特に専門メディアはコンテンツ制作コストが高く、広告収益だけでは事業が成立しにくい構造があります。

その結果、多くのメディアが広告以外の収益源を模索するようになりました。サブスクリプション、イベント、コミュニティ運営、リサーチ事業など、多角的な収益モデルへの挑戦が進んでいます。

 

私自身、イベント事業に長く携わってきましたが、そこで実感したのは「メディアブランドの価値」です。広告だけでは差別化が難しくなっても、長年積み上げた信頼やブランドがあれば、人を集めたり、新たな事業を立ち上げたりすることができます。かつて携わったイベントでは、チケットを購入してくれる参加者が集まり、スポンサー企業や登壇者からも高い評価をいただきました。それを実現できたのは、イベント単体ではなく、その背景にあるメディアブランドへの信頼があったからだと思います。

メディアが積み上げてきた歴史や信頼があることで、取材対象者が取材を受けてくれるか、ということにもつながってきます。

 

メディア企業にとって本当に重要なのは、ブランドそのものなのではないかと思います。長い時間をかけて築き上げてきた信頼や専門性こそが、これからの事業成長の源泉になるのではないでしょうか。

 
 

AI時代に問われる、パブリッシャーの変革力

 

―収益源が多様化する中で、パブリッシャーの現状と課題を教えてください。

 

収益環境の厳しさはもちろんですが、それ以上に重要なのはマインドセットの変革だと思っています。

もちろん現状に対して多くの方が危機感は持っています。ただ、その危機感が組織全体で共有され、本当の意味で「自分事」になっているかというと、そうではないケースも少なくありません。

歴史の長いメディア企業では、従来の成功体験があるからこそ変化が難しくなることがあり、「これまでうまくいっていたやり方」が強いほど、新しいことへの挑戦には抵抗が生まれます。だからこそ、経営層だけではなく現場も含めて、変化を前提とした組織づくりが必要になっているのではないでしょうか。

 

デジタルメディアでは、AIオーバービューの登場により検索流入からトラフィックが取れなくなっており、メディアは新しいマネタイズの方法を考えなければなりません。トラフィックの流入量が大きく変わる中で、Taboolaではほかの流通経路の確保やユーザーのエンゲージメントを上げるための取組を進めています。「内側」の変革とともに、「外側」にある最新テクノロジーを取り入れてテコ入れをするというように、構造そのものを横断的に変えようとする人材も必要だと思います。

 
 

―これまで外資と日本企業の両方でメディアに携わってこられました。海外と比較して日本のパブリッシャー特有の特徴はありますか。

 

外資と日本企業の大きな違いの一つは、新しい取り組みに対する意思決定のスピードです。外資系企業の場合、まず試してみて、うまくいかなければ修正・撤退するという考え方が比較的浸透しています。

一方、日本企業は関係者との調整を重視する傾向があります。そのため意思決定に時間がかかることもありますが、その分、組織としての一体感や再現性のある運営は得意です。

 

また、日本のパブリッシャーにはチームとして成果を出す文化があります。編集、営業、制作などが協力しながら一つの価値をつくる力は、日本企業の強みだと思います。

どちらが良い悪いではなく、それぞれに強みがあります。自社の強みを活かしつつ、どうやって収益を上げるか、記事作り以外でもビジネス開発していくマインドを育てることが大切だと感じます。

 

 
 

―AI時代にパブリッシャーが事業を発展させるには、何が必要だと考えますか。

 

検索流入中心の時代は大きな転換点を迎える中で、素早く他社・他国の情報を察知できるか、ということが必要だと思います。

例えばアメリカのTaboolaでは、メディア自身に生成AIエンジンを組み込む仕組み(Deeper Dive)を展開しており、日本でも今後展開される予定です。こういった最新情報やテクノロジーをうまく使い、どうやって自分たちの強みを活かしてビジネスを展開していくかがキーになってくるのではないでしょうか。

 

もちろんSEOやAI最適化への取り組みは重要ですが、それだけで十分とは言えません。今後は「訪問者をいかにファン化するか」が非常に重要になります。

高品質なコンテンツ作りは前提として、そのうえでユーザーが何度も訪れたくなる仕組みや、エンゲージメントを高める体験設計が必要になります。コミュニティ、イベント、サブスクリプション、オンラインサロンなどが考えられます。リソースを使って試すためにも、経営層が先陣を切って行うか、そういった役回りの人を社内に配置するか、社外に頼るか、やり方はあると思います。

 
 

―最後に今後の展望を教えてください。

 

テクノロジーを通じてパブリッシャーの課題を「外側」から解決していきたいと考えています。「内側」だけでは解決しきれない課題に、Taboolaのプロダクトを使って向き合うことはもちろん、ネットワーク作りなどあらゆる方面から向き合っていきたいです。

 

多くのパブリッシャーは共通の課題を抱えていますが、実践的な知見が共有される場は決して多くありません。Taboolaは数百社のパートナー企業と接点があるので、そのネットワークを活かし、情報交換や交流の機会を作り、業界のハブ的な存在になることができればよいなと思います。

メディア側で培った経験と、Taboolaが持つテクノロジーや知見を掛け合わせながら、業界の発展に貢献していきたいです。

ABOUT 角田 知香

角田 知香

ExchangeWireJAPAN 編集担当。イギリス・キングストン大学院にて音楽学の分野で修士号を取得。学校・自治体文化講座等にてアート講座講師として活動後、2024年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。