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Intent IQ会長が語る「失われた収益機会」とアイデンティティ戦略[インタビュー]

シグナルロスにゼロクリック検索といった諸課題に見舞われながら、パブリッシャーは広告在庫の質と量の両面を維持することに苦心している。この苦境に立ち向かうための武器を提供するのが、米国発のテクノロジー企業であるIntent IQだ。来日した経営幹部にインタビュー取材を実施した。

(Sponsored by Intent IQ)

 

「失われた収益機会」を取り戻す

 

―自己紹介をお願いします。

 

シュケディ氏:次世代のユーザー識別ソリューションを提供するIntent IQ会長のロイ・シュケディと申します。同社の親会社であるAlmondNetグループ社のCEO及びもう一つの子会社であるDatonics社の会長を兼務しています。

 

シュブ氏:Intent IQの事業開発担当上級副社長を務めるタミル・シュブです。オンライン動画のマネタイズ分野で約15年の経験を積み、複数の企業の幹部や顧問職を経て、過去5年間はIntent IQにて事業戦略の開発などを担当しています。

 

―貴社の事業を改めて教えてください。

 

シュケディ氏:生成AIの台頭によって各サイトやアプリに流入するトラフィックが減少し、パブリッシャーはこれまで以上に一つひとつのインプレッションを効率的に収益化する必要に迫られています。その上で避けて通れないのが、IDレス環境への対応です。

 

 

プログラマティック広告在庫のターゲティングは、主に閲覧中のコンテンツの内容ではなく、ユーザーの過去のオンライン行動履歴に基づき行われます。しかしながら、サードパーティCookieやIDFAがなければ、過去のオンライン行動を把握することができません。そこで当社ではIDレス環境にいるユーザーに対して93%以上の精度を誇る当社IDを注入することで過去のオンライン行動に基づくターゲティングを可能にしています。

 

―具体的にはどのような技術を用いるのでしょうか。

 

シュケディ氏:業界では「IDブリッジング」、当社では「Bid Enhancement(入札強化)」と呼ばれる技術を用いて、ChromeとSafariなど異なるブラウザ間をまたいで単一のユーザープロファイルに統合した独自のアイデンティティグラフに基づく識別子を提供しています。この識別子を使えば、DSPがユーザーを識別し、適切にターゲティングすることが可能です。

 

現在は入札リクエストに識別子がないことによる収益機会の損失が発生しています。当社では、識別子の提供を通じて、広告主、広告代理店、DSP、SSPに対してアドレサビリティを確保し、パブリッシャーが一度失ってしまった収益機会を新たに取り戻すための手段を確保しています。

 

―GoogleがサードパーティCookie廃止を撤回したことで、IDソリューションの必要性はやや薄まったのではないですか。

 

シュケディ氏:Googleが引き起こした一連の騒動によって、課題はむしろより顕在化されたと思います。状況を改めて整理しましょう。オンライン広告配信を目的としてユーザーを識別するために、長らくブラウザではサードパーティCookie、スマートフォン端末ではモバイル広告ID(MAID)などが用いられてきました。iPhoneでは、ブラウザ上でも端末上でも既に事実上のIDレスに陥っているため、広告収益はAndroidの3分の1にまで低下しています。

 

ただし、広告主が本当にリーチしたいのはiPhoneユーザーの方です。米国のスマートフォン市場では53%、日本は60%をiPhoneユーザーが占めており(※1)、さらに米国ではiPhone世帯の収入はAndroid世帯と比較して40%、日本では33%(※2)も高いです。

 

(※1)statcounter調べ(2026年4月)/(※2)aso index調べ(2023年5月)

 

さらに近年著しく成長しているCTV広告でもIDレスが課題となっています。Rokuのように専用端末を提供する方式であれば端末ごとの専用IDを付与できる場合がありますが、その他多くのFAST(Free Ad-Supported Streaming TV)と呼ばれる広告付き無料ストリーミング形式では広告配信用のIDが統一されていません。

 

プライバシー保護は「企業DNA」

 

―IDレスが進行した背景には、ユーザーのプライバシー保護意識の高まりがあったかと思います。貴社のユーザー識別ソリューションはユーザーのプライバシーを保護できるのですか。

 

シュケディ氏:プライバシー保護こそ当社技術の核心であり、また当社の企業DNAに刻み込まれています。広告バナーの右上に出てくる「AdChoices」という表示を目にしたことがあるかと思います。これをクリックすると、行動ターゲティング広告の配信を拒否(オプトアウト)する選択肢が示されます。この仕組みを考案し、業界全体に普及させた企業こそ、Intent IQの親会社であるAlmondNetなのです。

 

なお、Intent IQの識別子はユーザーの氏名やメールアドレスの取得を必要としません。またEU一般データ保護規則(GDPR)やカリフォルニア州個人情報保護規則(CCPA)を始めとする各市場の法規制にも準拠しています。

 

―貴社IDソリューションの一般的なユースケースを教えてください。

 

シュケディ氏:当社の顧客には、パブリッシャー全般に加えて、ヘッダービディング事業者やアプリ内広告関連のベンダーや動画配信プラットフォームなどが含まれます。いずれもCPMやフィルレートといったKPIの改善を目的として導入いただくことが多いです。当社IDを付与することで広告在庫の価値が上がるので、単価上昇や入札増を見込むことができます。

 

―いわゆるゼロクリック検索によって各パブリッシャーのトラフィック及び収益は減少しつつあります。CPMやフィルレートの改善によって、減少した収益をどれほど取り戻すことができるのでしょうか。

 

シュケディ氏:例えば、生成AIの台頭によってある特定のサイトが20%のトラフィックを失ったとしましょう。そして、そのサイトのトラフィックの60%をiPhoneが占めると仮定します。また、Intent IQの増収効果は主にPrebid経由での収益となるので、25%がPrebid経由と仮定します。

 

Intent IQを導入することで、Prebid経由の収益は平均で20~40%増加します。全体収益でも3%〜6%は取り戻すことができます。少なく感じるかもしれませんが、実際にはPrebid経由でのオークションプレッシャーが高まることによって、Intent IQでは把握できない他のデマンドソースの収益もアップするため増収効果は更にあると考えられます。

 

常態化したIDレスに対応せよ

 

―日本市場の独自性は何だと思いますか。

 

シュケディ氏:まずiOSの普及率が高いことが挙げられます。加えて、日本では仕事用と家庭用など複数の携帯電話を持つことが一般的なので、IDブリッジング技術を活用する余地が大きいと思います。

 

また日本人は概して正確性を追求し、責任感が強くて忠誠心があり、各機能が実際に作動している証拠を目にしたいとの要望を示すことが多いとの印象を持っています。こうした価値観は、当社の企業文化とも一致します。当社でも各種のソリューションが正確に機能することを実際の作業環境で示すことを重視し、また欧米企業では珍しく、数十年単位で勤務を続けている社員がたくさんいます。

 

―IDレスは今後さらに深刻化すると思いますか。

 

シュケディ氏:オンライン広告業界に長らく従事してきましたが、分かっていることはこの業界は絶えず変化しているということだけであり、市場の未来を予測することなど誰もできません。「サードパーティCookieが使えると思っていたら使えなくなりそうだったが気付いたらまた使えるようになっていた」というような事態は今後も起こり得るでしょう。

 

ただし、確実に言えるのは、IDレスは既に現実と化しているということです。

 

シュブ氏:つまりパブリッシャーは、未来を見通すまでもなく、目の前にある現実に対応する手段としてID戦略を検討することが求められています。

 

 

市場には既に各種のIDソリューションが普及していますが、パブリッシャーの皆様にはそれらのソリューションを一通りテスト導入することをお勧めします。そうすれば、自社のトラフィックとオーディエンスにとってどのようなソリューションが最適であるかを把握できるからです。

 

シュケディ氏:IDレスが常態化したことで、IDソリューションは今や基盤的な設備となりました。ありとあらゆるパブリッシャーが、その事業を営む上では何らかのIDソリューションを導入することが求められる時代になっていると私は思います。

 

ABOUT 長野 雅俊

長野 雅俊

ExchangeWireJAPAN 共同編集長

ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。