AI検索でカスタマージャーニーはいかに変化するかーRTB Houseが調査結果を発表[インタビュー]
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AI検索が日常化したことで、消費者が探し求める商品に行き着くまでのカスタマージャーニーはどのように変化していくのか。ECマーケターにとって目下最大の関心事となるこのテーマを探るべく、RTB Houseが調査を実施した。その調査結果について、来日した同社幹部に話を聞いた。
(Sponsored by RTB House)
AI検索の実態把握は「至上命題」
―自己紹介をお願いします。
RTB Houseにて、VP, Global Product Commercializationという役職を務めるジェイセン・グレスピーと申します。アドテク及びデータサイエンス関連業務に15年以上にわたり従事してきました。現職においては、広告運用に関連した様々な指標やインサイトを、マーケターの皆様がビジネス上の意思決定に容易に活用できるように支援する役割を務めています。
―貴社がこの度実施したAI検索実態調査の概要を教えてください。
消費者がAIツールを活用して商品の検索や比較検討を行い、最終的な購買決定に至るまでのプロセスを解明することを目的として、米国、欧州、日本に在住する消費者約2000名を対象としたオンラインアンケート調査を実施しました。
本調査は、グローバルな調査パネルを保有するCint社の協力のもとで行い、不正回答や不適切なデータの混入の防止策も設けました。2026年7月から8月にかけてデータを回収・集計しています。
―なぜ本調査を実施したのですか。
RTB HouseのDSP(Demand Side Platform)をご利用いただくお客様の中には、Eコマース事業者が多く含まれています。こうした事業者の皆様にとって、現在の関心事となっているのが「消費者は商品検索において、いかにAIツールを活用しているか」という点です。
ChatGPTやGoogleのAI Overviewなどを使い、おすすめのレストランやホテル、あるいは服や家具を検索した経験を今や誰もが持っているのではないでしょうか。この購買行動の変化は今、世界中で同時に起きています。消費者はAIツールを通じて新しいブランドや商品に出会い、購入すべき商品をAIに相談し、さらには複数の商品を組み合わせる「バンドル購入」の提案まで受けるようになっています。
つまりECマーケターにとって、消費者が購買を目的としてどのようにAIツールを使いこなし、それが買い物体験にどう影響を与えているのかを把握することは、まさに至上命題と言えます。本調査は、こうした課題に直面するECマーケターの皆様の意思決定を支援し、次なる戦略のヒントを提供することを目的に実施いたしました。
AI検索は買い物体験を変革する
―AI検索の台頭によって、利用するプラットフォームだけでなく「検索」という行為そのものが変化しているということでしょうか。
皆様も実感されているかと思いますが、従来のキーワード検索に比べ、AI検索ではユーザーがより詳細な条件やコンテキスト(文脈)を入力するようになっています。これにより、消費者は購買プロセスにおいて、より多様な選択肢を手に入れられるようになりました。従来の検索では、検索結果の上位2〜3件のウェブサイトを確認して終わることが一般的でしたが、生成AIはユーザーのニーズに沿った多数の選択肢やウェブサイトを一度に提示してくれるからです。
また情報収集が容易になったことで、消費者が競合商品を比較検討する機会はむしろ増加しています。つまり、AI検索の普及によって、オンラインにおける購買決定プロセスはかえって長期化しているのです。
実際に今回の調査でも、この傾向が明確に裏付けられました。特に若年層でその傾向が顕著であり、「AIツールによって最終的な購買決定に至るまでの時間が長くなった」と回答した割合は、米国ではZ世代の48%、それ以外の地域ではミレニアル世代の35%に達し、それぞれ世代別で最多を記録しています。
なお、同じ質問に対して、日本を含む米国以外の地域から「AIツールによって最終的な購買決定に至るまでの時間が長くなった」と回答した割合は、ミレニアル世代が35%、ベビーブーマー世代が34%、Z世代が33%、X世代が32%でした。米国のような大きな世代間ギャップは見られず、どの世代も横並びの傾向を示しています。
出典:RTB House調査
―本来は検索を効率化するためのAIツールによって、かえって購買までの時間がかかるようになるというのは興味深い現象ですね。
もちろん、AI検索によって購買プロセスが劇的に短縮される場合も数多く存在します。その代表例が、いわゆる「バンドル購入(まとめ買い)」です。
例えば、日曜大工で自宅の庭にデッキを設置する状況を想像してみてください。AIに対して「手元には丸のこと電動ドリル、ネジが100本ある。50平方メートルのウッドデッキを作るために必要な資材と工具のリストを教えてほしい」といったプロンプトを入力したとします。
するとAIは単一の商品だけでなく、不足している木材や基礎用コンクリート、固定金具、防水塗料などを網羅した「買い物リスト」を一括で提示してくれます。場合によっては合計で数十万〜100万円規模にのぼる購入リストが、一瞬で完成するわけです。今回の調査でも、米国在住者の63%が「AIを活用して買い物リストを作成した経験がある」と回答しています。
従来のキーワード検索では難しかったこうした一括購買のアプローチは、AI検索の普及に伴い、今後急速に一般化していくと考えられます。これに伴い、EC事業者側にもバンドル購入に対応した決済や注文処理の自動化が求められるようになるでしょう。具体的には、ユーザーがAIエージェントに決済権限を与え、一括購入を完結させる仕組みなどが挙げられますが、現時点でここまでの体制を整えられているEC事業者はまだごく一部に留まります。
―ECマーケターには今後、AI検索への最適化が強く求められるようになりますね。
インターネット黎明期の1995年頃を思い出してみてください。当時はまず「人間にとって使いやすいウェブサイトのデザイン」が求められました。それから10年ほど経ち、GoogleやYahoo!などの検索エンジンが普及すると、今度は「検索エンジンに評価されやすいサイト構造(SEO)」が不可欠となりました。
そして今、時代は「AIエンジンへの最適化」へとシフトしています。AI検索最適化の本質とは、自社の全商品において「分かりやすく明確な情報を提供し、他社との差別化を図ること」に他なりません。AIはロングテールつまりニッチな情報を見つけ出すことを非常に得意としていますが、いくら優れた商品を持っていても、その独自性が言語化されていなければ、AIは価値を認識できないからです。
―具体的に、ECマーケターはどのような対策を講じるべきでしょうか。
自社ブランドにおける一貫したポジショニングの確立が、これまで以上に重要になります。AIは矛盾する文脈や曖昧な情報を処理するのが非常に不得意だからです。
ルイ・ヴィトンやシャネルといったラグジュアリーブランドは良い手本と言えます。彼らは店舗空間、プロダクト、接客に至るまで徹底して世界観を統一し、ターゲット層を絞り込むことで独自のポジションを築いています。
今後はラグジュアリーブランドに限らず、例えば500円のたこ焼きを販売する場合であっても、自社がどういうブランドで、誰に向けた商品なのかをAIにも正しく伝わるよう言語化して、明確に提示しなければなりません。「グルテンフリー専門のたこ焼き」のように独自性が尖っていれば、AIは特定ニーズの検索結果として拾い出しやすくなります。逆にコモディティ化された特徴のない商品は、競合の中に埋もれてしまうリスクが一層高まります。
―これまで以上に商品・サービスの差別化が命運を分けるということですね。
おっしゃるとおりです。AIは情報の正誤や物事の特徴を正しく判定しているわけではなく、統計的に次に来る確率が高い単語を繋ぎ合わせて文章を作成しています。
言い換えれば、AI検索は放置すると情報をひたすら平均化してしまう性質を持っているのです。だからこそマーケターは、AIに競合と一緒くたに平均化されるのではなく、平均からはみ出してAIに発見・推奨される存在であり続ける努力が求められるのです。
DSP事業はどう変わるのか
―こうした購買行動の変化を踏まえ、貴社のDSP事業では今後どのような取り組みを強化されていくのでしょうか。
当社はリターゲティング広告の担い手として、今後もリターゲティング機能の精度をさらに強化していきます。AIツールの台頭により、消費者が複数のECサイトを行き来しながら慎重に比較検討する機会が増えている現状において、適切なタイミングで認知・検討を促すリターゲティング施策の必要性と有効性は今まで以上に高まっていくと確信しています。
なお、当社はChatGPTが登場する以前から、一貫してディープラーニング(深層学習)をコア技術として自社エンジンの開発を手掛けてきました。当社が提供するソリューション「Semantic Intelligence」は、LLM(大規模言語モデル)を活用することで、ウェブページ上のテキストや文脈、パブリッシャーが保有するファーストパーティデータ、そしてユーザーの行動履歴を高度に解析・理解し、最適な広告配信に活用しています。
例えば犬用のセーターをECで販売する場合を考えてみてください。愛犬家が集まる情報サイトに広告を掲載するのが王道ですが、仮に「犬に噛まれて負傷した事故」を報じるニュース記事上に広告が表示されてしまっては、成果につながらないばかりかブランドイメージの棄損にもつながりかねません。従来型のキーワードマッチングではこうした文脈の違いを判別することに限界がありましたが、当社のLLM技術を用いれば、記事の文脈まで高精度に識別し、真に価値ある面へ広告を届けることが可能です。
―消費者が個別サイトを訪問せずAIプラットフォーム上で情報収集を完結するようになると、オープンインターネットを中心に広告在庫を保持する貴社事業にも影響が及ぶのではないでしょうか。
ユーザーがウェブサイトを訪れずに情報を取得する「ゼロクリック検索」の台頭は、パブリッシャーにとって深刻なトラフィック減少という課題をもたらしています。一方で、広告主側にとっては、少なくとも現時点において大きな悪影響は生じていません。AIプラットフォーム上で購買まで完結する機能はまだ一般化しておらず、ユーザーは最終的に各ECサイトへ遷移して買い物をしているからです。
実際、AIプラットフォーム経由の送客は非常に高いコンバージョン効果を示しているものの、現状ではEC全体のトラフィックにおける1%未満にとどまっています。
また、広告在庫への影響という観点でも、現段階でAIによるトラフィック減少の打撃を受けているのは主に一部のニュースサイトや汎用的な情報メディアに限られています。天候情報サイト、各種アプリ、メールサービスなどは依然として堅調であり、オープンインターネット全体の広告在庫が失われたわけではありません。
ただし、将来的には状況が一変する可能性が大いにあります。近い将来、ユーザーがAI上でメールやニュースを閲覧し、AIからECサイトへの大規模な送客が行われ、さらにはAIエージェントがAIプラットフォーム上で購買を全自動で代行する時代が訪れる可能性は大いにあります。その段階に達したとき、巨大なプラットフォームとなったAIサービス群は、間違いなく新たな広告在庫を市場に開放するはずです。
かつてニュースサイトやリテールメディアなどのオンラインサービスが、ユーザー数の拡大に伴い広告ビジネスへと参入していった歴史と同じ構造が繰り返されるでしょう。そして、我々のようなDSP事業者は、そうした新たな広告在庫と接続し続けることで、常にユーザーとブランドを結ぶ最適な接点を提供し続けていきます。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 共同編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。







