Intent IQのIDソリューションはいかに機能するのか――CTOがひも解く独自技術の仕組み[インタビュー]
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「プライバシー保護」と「ユーザー識別」という一見すると相矛盾した概念をいかに両立させるかはデジタル広告市場関係者にとって永遠の課題であろう。CEOへのインタビュー取材に続き、Intent IQがこの課題にいかに対応しているかについて、同社CTOに話を聞いた。
(Sponsored by Intent IQ)
ユーザーを知らずに識別する仕組み
―自己紹介をお願いします。
イシャイ氏:Intent IQの最高技術責任者(CTO)を務めるドロール・ベン・イシャイです。第1号社員として参画して以来、当社の技術開発部門を管掌し、プライバシーを重視した拡張性の高いIDソリューションの開発に取り組んでいます。
シュブ氏:事業開発担当上級副社長のタミル・シュブです。
―貴社が提供するIDソリューションの特徴を教えてください。
イシャイ氏:当社の分散型ID技術は非常に高い精度を持っています。複数のファーストパーティIDをクラスタリングすることによって、単一ユーザーのプロファイルを93%以上の精度で構成することが可能です。
また実装と統合が容易であり、同時に最高水準のプライバシーを維持しています。IDレス環境下で事業を営むパブリッシャーがIDソリューションを必要としていることは明らかですが、現行のインフラに容易に統合でき、また各市場固有のプライバシー関連法規制に則っていなければ実際に利用することができません。
さらに様々なID情報に対応したIDブリッジング製品となっていることも大きな特徴です。他の多くのIDソリューションは自社IDのみを取り扱っているのとは対照的に、当社は現在60種類以上の異なるIDに対応しています。
―いわゆるIDレス環境下において、パブリッシャーはユーザーをどの程度まで識別できているのでしょうか。
イシャイ氏:単一のデバイスに限定したとしても、ユーザーは複数のブラウザをインストールし、各サイトと各アプリがそれぞれ固有のIDを発行し、また市場占有率の高いiOSは究極的なIDレスであるため、パブリッシャーがユーザーを識別することは相当に難しくなっています。
しかもユーザーは勤め先のデスクトップPC、CTV、その他の家庭用機器など複数の端末を使いこなしています。Intent IQのようなソリューションがなければ、広告主は異なる端末、ブラウザ、アプリのユーザーをそれぞれ別人と見なすような一元的なコミュニケーションしかとることができない状況です。
―貴社のユーザー識別技術の仕組みを教えてください。
イシャイ氏:コンサート会場に行って、クロークに上着やカバンを預ける場面を思い浮かべてください。その時にあなたは荷物番号を受け取りますが、名前を名乗る必要はないですよね。当社でも同様にユーザーごとに異なる番号ないし識別子を割り振ることでプライバシーを最大限に尊重しながらユーザーを識別しています。
そして、機械学習やグラフ理論を駆使して、それぞれの識別子をグループ化し、端末、ユーザー、そして世帯ごとに紐づけます。つまり大量の信号をまとめあげることで、異なるID同士を接続し、ユーザーの氏名や素性を知らずとも、各ユーザーのプロファイルを構成することを可能にしています。
推定データを決定論的データで答え合わせ
―ユーザー識別の精度を高めるためにどのような工夫をしているのでしょうか。
イシャイ氏:一定規模のオンライン広告枠を自ら買い付けた上で自社ソリューションの推定結果の審査を日々行いながら、推定データを決定論的に確定させています。
例えばユーザーがアプリ内広告をクリックするとSafariが開きますよね。その際に広告の入札者は、推定データとしてよく使われるIPアドレスやユーザーエージェントなどと一緒に、決定論的デバイスIDを取得します。そしてここからが重要なのですが、取得した決定論的デバイスIDは一旦脇に置いておき、その他の推定データのみを当社のAPIに送信してユーザー識別をした後で、決定論的デバイスIDで答え合わせをするのです。
このような方式で毎日400万サンプルをテストして、そのうち380万サンプルで正答を得ることができれば精度は95%前後になるというわけです。
―貴社ソリューションを実装後、パブリッシャーはどのような変化を期待できますか。
イシャイ氏:多くの場合、フィルレートが大きく向上します。例えば一つのページに8つの広告枠を設けていたとしても、下部枠はほとんど埋まらないという場合に、この空枠が埋まるようになります。
また広告の買い手が求めるオーディエンスとの一致率が高まるのでCPMが増加します。さらに関連性の高い広告が表示されるようになるので、ユーザーのエンゲージメント率が高まり、パブリッシャーに対するDSPのスコアリングが向上するでしょう。
―ユーザーのプライバシーはどのように保護していますか。
イシャイ氏:当社は、ユーザーがウェブサイトを訪れた際に表示されるCookie取得の同意管理ポップアップで選択した内容をコード化したTCFトークンを米国のパブリッシャーからPrebidの入札環境で自動収集する機能を実装しています。またグローバル市場においては、データ取得時に同意管理プラットフォーム(CMP)ベンダーが宣言した個人データの用途を実際にユーザーが送信した情報と照合し、一致した場合のみそのデータを広告配信に活用しています。たとえユーザー本人からの承諾を得たとしても、DSPやSSPの承認が得られなければデータは同期しません。
―「グローバル市場においては」と仰いましたが、日本市場では事情が異なるのでしょうか。
イシャイ氏:GDPRとは異なる法制度を持つ日本市場では、プライバシー対応の実務運用にも違いがあります。欧州ではCMPを通じた明示的な同意管理が重視される一方、日本ではパブリッシャー側がプライバシーポリシーや通知を通じてユーザーへの説明責任を担い、オプトアウト手段を提供する形が一般的です。
そのため、日本市場ではパブリッシャー側が、ユーザーへの通知やプライバシーポリシー上の開示、オプトアウト導線の整備などを行っていただくことを必ずお願いしています。
当社としても、各市場の法規制や業界ガイドラインに準拠しながら、パブリッシャーが適切なプライバシー対応を行えるよう設計しています。また、ユーザーがデータ利用を希望しない場合には、オプトアウトできる仕組みを提供しています。
いずれにせよ、当社は世界中のあらゆる同意取得方式に対応し、同意が得られない場合は広告配信にはユーザー情報を一切使用しません。
―パブリッシャーは貴社ソリューションをどのように実装するのですか。
イシャイ氏:最も簡単なのがPrebidで、Prebidのチェックボックスをオンにし、当社から提供された認証情報を設定するだけで即座に当社ソリューションの利用を開始できます。またパブリッシャーが当社ソリューションをカスタマイズして利用したい場合は独自のJavaScriptやSDKを統合していただくことになります。またSSPのような大規模な事業者向けには、最も堅牢なAPI経由のサーバーサイド統合をご案内しています。
―貴社ソリューションと他のIDソリューションを組み合せて使うこともできますか。
イシャイ氏:パブリッシャーがすでに他のソリューションを持っている場合、当社のIDが追加で配置されることになります。つまり、他のIDを上書きすることはありません。複数の異なるIDをまとめ上げることができるというのが当社技術の特徴となっています。
シュブ氏:オンライン広告の技術標準を策定するInteractive Advertising Bureau(IAB)が定めたルールに則り、パラメータを通じてIntent IQのIDであることを明示しているので、SSPまたはDSPは利用の有無を選択できる環境が整備されています。
イシャイ氏:なお、この機能はOpen RTBのバージョン2.6でサポートされています。
―日本のパブリッシャーとはどのように関係構築を行っていきたいと考えていますか。
イシャイ氏:当社のソリューションはフランス、英国、スペイン、ドイツ、米国、カナダ、そして日本など世界中で導入されており、その配信規模は現時点で1カ月あたり1200億インプレッション、今年末までには2000億インプレッションに達する見込みです。
中には10年以上にわたり当社ソリューションをご利用いただいているパブリッシャーがいます。信頼と安定性が重視される日本市場においても、パブリッシャーの皆様と長期にわたるパートナーシップを構築することができたらと願っています。
シュブ氏:そこで当社は日本市場への投資を本格化することを決定し、半年前には東京にデータセンターを開設したばかりです。
イシャイ氏:東京にデータセンターを開設したことで、日本のユーザーのブラウザがIntent IQのIDをキャッシュしてデータセンターと往復する際にかかる時間を90%削減することができました。広告リクエストという極めて限定的なプロセスの中のさらにごく一部を改善するために当社が大きな投資を行っているという事実が、当社の覚悟を物語っているかと思います。
これからも日本市場への投資を続けながら、パブリッシャーの皆様が抱える課題に取り組んでいきます。
ABOUT 長野 雅俊
ExchangeWireJAPAN 共同編集長
ウェストミンスター大学大学院ジャーナリズム学科修士課程修了。ロンドンを拠点とする在欧邦人向けメディアの編集長を経て、2016年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。ExchangeWire主催の大型イベントであるATS Tokyoのモデレーターも務めている。







