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第4回 トレーディングデスクが実践する、配信戦略のチューニングによるパフォーマンス向上 |WireColumn

(コラムニスト:株式会社コスモロジー 石塚 拓郎)

今注目を浴びているDSPのトレーディングデスクについて解説していく本シリーズ。4回目は、パフォーマンスを向上させるためのDSP運用について、具体例を交えてお伝えいたします。

 

第3回までの内容はこちら

http://www.exchangewire.jp/2013/04/11/wirecolumn-masunaga-1/

http://www.exchangewire.jp/2014/01/28/wirecolumn-cosmology-2/

http://www.exchangewire.jp/2014/02/12/wirecolumn-cosmology-3/

 

 

 

 

配信戦略とアカウントチューニングのポイント

 

 パフォーマンスを向上させるためには、配信戦略と、その戦略に基づいたチューニングをどのように行うかが重要です。

 まず配信戦略ですが、こちらはクライアントのマーケティング戦略の中におけるDSPの位置づけのヒアリングから始まります。一口にDSPの配信といっても、その目標はさまざまです。とにかくCPAを追及し、リターゲティングに絞った刈り取りが目的の場合もあれば、新規ユーザーに特化したコンバージョンが目的の場合もあります。また、コンバージョンをKPIとせず、リーチが主な目的となる「ブランディング」が目的の配信もあります。

 配信目的の共有がなければ、運用をどう工夫してもクライアントの満足にはつながりません。まずはしっかりとDSP配信への投資を行う背景をヒアリングし、そのゴールを達成するための配信戦略を立てます。

 目的が明確であれば、配信の上で重視すべきKPIも明確化され、配信効率の最適化のための判断も的確に行えるようになります。例えばDSPの担うべき役割が、「新商品の認知拡大のためのブランディング」であれば、リーチ最大化を指標の一つと定め、最適なフリークエンシーを導き出す事やエンゲージメントの高い配信セグメントを構築すると言った戦略が考えられます。一方、「とにかく低CPAを実現すること」が目的なら、CPM、CTR、CVRをいかに最適化するかという効率だけを追求する配信戦略になるでしょう。

 

 配信戦略が明確になると、次はその戦略をアカウントのチューニングというアクションに落とし込むことが重要です。ここにはさまざまな方法論が存在しますが、今回はメディアのホワイトリストとブラックリストを用いた運用について紹介します。

 

 

配信先の選定に有用なホワイトリストとブラックリスト

 

 DSPと聞くと、ユーザー単位での配信に目が向けられがちですが、同じく大事になってくるのが、配信先メディアの選定です。プラットフォーム側でユーザーのコントロールを行うため、配信先のコントロールについては自動最適化だけでなく、人の手による運用が非常に重要な要素となってきます。以前のコラムでも触れたように、メディアによってユーザーの属性が違うのはもちろんのこと、同じメディアでも、接続元のSSPが違えば配信位置が変わってくる事もありますので、インビュー率等も変わってきます。また、SSPにより枠の買い付け単価も変わってくるため、例えばAというDSPだとCPM100円でインプレッションされるところが、別のBというDSPだと配信されない事も有り得ます。

 配信先メディアをコントロールする手法としては、ホワイトリストとブラックリストを使い分けた配信を行うことが効果的です。ホワイトリストはその案件において成果が出るということがフラグづけされた媒体のリストです。ブラックリストは逆に、インビュー率が低かったりCTRが低かったり、その案件において成果が期待できないというフラグが付けられたリストです。また、これらのリストは運用者によって案件毎に作られます。

 最初は配信先を絞らず広く配信し、運用していく中で最適化に必要な様々な要素を指標としてメディアの精査を行い、配信先を絞っていきます。こういった選別を通じて、クライアント毎の最適な配信リストを作成することで、最終的には高い成果が出せるようになります。

 この最適化のPDCAは、大規模予算で多くのインプレッションが出せる場合は短期間で最適運用まで収束しますし、逆に予算規模が小さく、インプレッションボリュームが小さい場合などは、最適化までに時間がかかってしまうこともあります。

 また、ホワイトリストとブラックリストは基本的には案件単位で作成しますが、たくさんのアカウントを運用する中においてトレーディングデスクとして新たな知見も蓄積されてきます。こうして蓄積された知見は、一般的なメディア属性と必ずしも一致しないところが面白いところです。例えば、男性向けと考えられているスポーツニュースメディアが、F1層に対しても意外と高い成果を出せるメディアだ、ということがわかったりもします。

 

 

複数のDSP運用で溜めた知見から、最適な運用方法を見つけ出す

 

 トレーディングデスクの一番の強みは、DSPに縛られない運用です。DSPによって機能や配信ロジック、接続先SSPなどが違うため、どのDSPが最適かは案件によって違います。ですから、まずは複数のDSPを走らせ、運用していく中で最適なDSPへと絞り込んでいく運用が勝ちパターンの一つです。

 また、複数のDSPを運用する中で、安く配信できるDSPで撒いて精度の高いDSPで刈り取る、というような複数のDSPをまたいだ配信戦略が最適だという結論に至るケースもあります。

こういった最適化に決まったパターンはなく、運用の効率化のためには、配信をしていく中で案件ごとの特性を見つけチューニングを行っていくことが不可欠です。

 

 

以上のような配信戦略に基づいた運用のチューニングはほんの一部の例ですが、これらを行うことにより、トレーディングデスクはクライアントの意向に沿った成果を出す運用を実現しています。現在日本のディスプレイ広告市場でも運用型広告の成長が著しく伸びているのは、この様な運用のパフォーマンスが徐々に良くなってきているからだと考えられるかもしれません。

 

 

ABOUT 石塚 拓郎

石塚 拓郎

株式会社コスモロジー 執行役員 広告事業会社のマーケティング事業部でオンライン広告全般に携わり、スタートアップベンチャーの創業やコンサルティングを経て2013年11月にコスモロジーにジョイン。DSP、リスティング、Web解析ツール等を研究し運用型オンライン広告のマネージメントを担う。