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業界有識者予想:2018年はパブリッシャーのマネタイズ手法が進化

(翻訳:Asia Plus 黒川賢吾)

パブリッシャー業界は2016年から大きく変化を見せ、質の高いコンテンツと新たな収益源の確保にフォーカスするようになった。2017年を振り返り、2018年以降に期待できる事項を先取りするために、ExchangeWireは業界の有識者100名以上から意見を募った。このコラムでは、パブリッシャーが2018年に収益を最大化するための戦略について業界の有識者の予想について紹介している。

プログラマティックはデマンドを中心とした最適化が中心となる

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「2018年には、パブリッシャーはユーザーの利便性を優先させ、読者を第一に考える必要があります。素晴らしいコンテンツを提供することが最優先されるべきです。特にモバイルでのユーザーエクスペリエンスとパーソナライゼーションは、読者の関心を捉え、サイトに長時間滞在してもらうために重要な事項です。パブリッシャーは、外部のディストリビューションプラットフォームへのリソースを削減し、オーディエンスの確保に注力する必要があります。 ロイヤリティを醸成しブランドの評判を向上させることが、これまで以上に重要になります。オペレーションチームとセールスチームは、コンテンツチームと密接な協力関係を築き、ユーザーエクスペリエンスと収益管理を両立させる必要があります。運用チームは、ユーザーエクスペリエンスと収益の両方への脅威に対して、リソースに優先順位を付けて対応する必要があります。最後に、ユニークな需要ソースや、透明性、購買プロセスにおける信頼の獲得のため、プログラマティックによるデマンド・パス最適化(DPO)に集中することも重要です。」

Intermarkets社、ビジネスデベロップメントシニアディレクター、Vipul Mistry氏

パブリッシャーは詐欺性のない、高ビューアビリティ、ブランドセーフなインベントリー提供が必要

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「信頼性と透明性は、2018年のパブリッシャーの成功において不可欠であり、主要な購買指標として考慮されており、業界のあらゆる側面に影響を与えます。 信頼性と透明性は、常にThe Telegraph社にとっての価値であり、2018年には、顧客中心で、データ重視の高品質なジャーナリズムを開拓し、サプライチェーンにおける透明性を確保しています。 すべてのサイト運営者は、詐欺性のない、ビューアビリティの高い、ブランドセーフな広告枠を提供することを目指す必要があります。 私たちはすでに、The Telegraphと他の2社のパブリッシャーとの合弁企業であるVerified Marketplaceを今月初めに立ち上げましたが、これはまだ始まりにしか過ぎず、来年にはもっと多くのパブリッシャーとのコラボレーションが起こっていくと思います」

The Telegraph社、デジタル部門マネージングディレクター、Dora Michail氏

パブリッシャーはヘッダービディングのラッパーソリューションへの管理を強化

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「パブリッシャーは、新たなヘッダー入札のラッパーソリューションを活用してプログラマティックをよりコントロールすることが可能です。パブリッシャーはすべてのデマンド・パートナーからの最初の価格に基づいてセカンドオークションを完了することができます。 このソリューションにより、買い手と売り手の間のより緊密なつながりが生まれるでしょう。 ファーストパーティデータの増加により、GDPRは、(明らかに)業界およびサードパーティデータの利便性に大きな影響を与えるでしょう。 これにより、多くのファーストパーティデータを持つパブリッシャーの価値が高まるでしょう。 来年には、ブランドコンテンツのより優れた利用が見込まれ、広告主はオーディエンスデータに基づいて異なるブランドコンテンツを活用するようになるでしょう」

Shortlist Media社、プログラマティックデータ・テクノロジー部門ディレクター、David Hayter氏

2018年パブリッシャーはAds.txtとGDPRにフォーカス

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「過去12ヶ月間に、RTBの開始以来、パブリッシャーの収益化モデルにおける最大の変化があった年だと思います。ウォーターフォールはよりフラットなものになっており、ヘッダーや広告サーバーのレベルに関しては、ゆっくりとではあるものの、パブリッシャーのユートピアとでもいえる状況に近づき、真のホリスティックな収量管理ソリューションとなりつつあります。統合オークション(ダイレクト、広告ネット、およびプログラマティック競争など)の理論がベストプラクティスとして受け入れられ、現在は決定に至るファースト・セカンドの価格決定オークションメカニクスについての議論が活発になっています。 2018年に入ると、ads.cert、ads.txt、ファーストオークション、レートなど売り手側だけでなく、アクティベーションに焦点が移動してきています。 パブリッシャーは、クライアント側ヘッダー入札に加えて様々な利点を提供する無数のサーバー間ソリューションベンダーと出会う機会が訪れるでしょう。また、パブリッシャーはGDPRに伴う責務に伴った新たな契約形態に従う必要があります。これは現在まで収益化の軸となっていたクッキーの利用が不透明になることを示唆しています。しかしながら、確かな一つのことは、優れたパブリッシャーは2018年の予想に関して非常に強気である点です。多くの企業はプログラマティックの販売向けにダイレクト販売チームを編成している点、ads.txtにより詐欺行為を特定できる点、GDPRによって直接的な営業を通じてビジネスを維持できると考えている点、買い手側からのSPOに関する取り組みによってデマンド側及び、広告税など不透明なプロセス下にあった広告予算の把握が容易になっていることなどが背景として挙げられます。」

独立系アドテクコンサルタント、Paul Gubbins氏

パブリッシャーコンソーシアムはインベントリー管理のためにプログラマティックプラットフォームをより効果的に活用

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「競合他社との差別化は重要なビジネス戦略ですが、その競合がGoogleやFacebookである場合は困難なことです。現在、すべてのデジタル広告費のおよそ85%がこれら2人のプレーヤーに支払われていると推定され、パブリッシャーは、コントロールを取り戻すために協力する必要があります。 CNNのようなプレーヤーは、すでにデジタル・パブリッシング・アライアンスのPangaea社と競合でもあるGuardian社、News UK社、The Telegraph社のビデオ・インベントリをUnruly社が運営する品質保障の市場にて管理する計画を発表しています。他の事業者も同様の動きを見せるでしょう。 コンソーシアムはこれまでパブリッシャーが「残りの」在庫をプログラマティックで販売するために使用されてきました。しかし、来年は、コンソーシアムによりプログラマティックプラットフォームの利用がなされ、多くのデジタルインベントリの管理、最適化、および配信の改善が期待されます。他のメディア所有者と提携することで、パブリッシャーは自分のデータセットを組み合わせて、より正確で強力なオーディエンスターゲティングを自分のサイトで提供できます。甚大なデータとプログラマティックプラットフォームがコンソーシアム上で提供する拡張性によって、パブリッシャーは二強の独占状況から自社のデジタルアセットに関心を抱かせることができます。」

PubMatic社、EMEA地域VP、Bill Swanson氏

パブリッシャーはよりプログラマティックビジネスを管理

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「2018年には数々のテーマが統合されていくことになるでしょう。パブリッシャーとブランド企業は、プログラマティックビジネスによる戦略的な管理手法に大きな関心を示し、アドテクベンダーはより高まる透明性の要求に対応しなければならなくなるでしょう。 この傾向はユーザーの同意を伴うデータ受信の規制によってさらに加速され、消費者の手に価値と信頼の両者を提供する必要が生じます。品質と信頼に投資した企業のみが、明確な価値を確立し強力な立場を築くことができるでしょう」

Guardian News & Media社、プログラマティックディレクター、Daniel Spears氏

品質の高いコンテンツによってパブリッシャーがオーディエンスを収益化

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「次の1年または2年以内に、多くのパブリッシャーが、広告表示をするだけでなく、オーディエンスとの直接の関係を確立することをサイトの優先事項として捉えるようになるでしょう。これは電子メールから始まります。CNN.comを30秒以上閲覧すると将来の姿を見ることができるでしょう。このサイトでの動きは、GoogleとFacebookのデジタル広告ビジネスの拡大による既存のパブリッシャーのビジネスを侵食することを軽減する動きです。パブリッシャーにとって、GoogleとFacebookを最も重要なトラフィック源としながら、最大の競合相手とすることは持続不能です。例えばジャーナリズムのような質の高いコンテンツの制作者は、オーディエンスから直接収益を上げるようなサブスクリプションモデルに移行するでしょう。一方で、サイトに広告が溢れブランド認知も高くないようなが多くの低品質のコンテンツ配信者であっても、品質意識の高い広告無しの定期購読モデルにオーディエンスを遷移させることで生き残ることができるでしょう

PostUp社商品マーケティングVP、Keith Sibson氏

パブリッシャーはユーザのアクセスに伴い報酬オプションの検討余地あり

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「最近のBuzzfeedのレイオフ、Viceの予想を下回る収益、時価総額2億5,000万ドルの20%にしかならないMashableの売上などデジタルメディアの躍動的な一年となっています。 しかし、暗いニュースばかりではありません。NewYorkTimes社は、加入者数の増加、有料メンバーシップサービスの開始といった中長期的な方向転換を行い、そして政治的な環境の変化によってVanity FairとWashington Postのような媒体における収益は上昇しました。 持続可能なビジネスという側面から、パブリッシャーは、広告ベース、直接支払い、サブスクリプションモデルに至るまで収益を確保する手段をより広い視点から考える必要があります。パブリッシャーは、ユーザーにコンテンツを配信する方法だけでなく、アクセスに伴い公平な報酬を提供する方法など、それぞれの収益化戦略を評価するために距離を置いて考える必要があります。」

Sourcepoint社CEO兼共同創業者Ben Barokas氏

ABOUT 野下 智之

野下 智之

ExchangeWire Japan 編集長   慶応義塾大学経済学部卒。 外資系消費財メーカーを経て、2006年に調査・コンサルティング会社シード・プランニングに入社。 国内外のインターネット広告業界をはじめとするデジタル領域の市場・サービスの調査研究を担当し、関連する調査レポートを多数企画・発刊。 2016年4月にデジタル領域を対象とする市場・サービス評価をおこなう調査会社 株式会社デジタルインファクトを設立。 2021年1月に、行政DXをテーマにしたWeb情報媒体「デジタル行政」の立ち上げをリード。